日産 セレナ《写真撮影 青山尚暉》

愛犬とドライブに出かけるのに最適なクルマのジャンルのひとつが、多人数乗車、多頭、大型犬の乗車をマルチにこなしてくれるミニバンだ。3列シートを備え、人、犬、荷物の乗車、積載のフォーメーションは自由自在。

さらに今、人気の中心のボックス型ミニバンの場合、2/3列目席頭上に後席エアコン吹き出し口、愛犬の特等席となる2列目席スライドドア部分の窓にロールサンシェードが備わり、1年中毛皮を着ていて、足の裏からしか発汗できない、基本的に暑がりの犬にとっての移動手段として最適というわけだ。

それだけではない。ボックス型ミニバンの中には、1-2列目席、2-3列目席スルーが可能な車種もあり、例えば雨の日、1列目席に乗った飼い主が、車外に出ることなく、愛犬が乗車している後席に移動して、リードを付けるなどのケアもできるのである(センターコンソールボックスを乗り越えていくケースもあるが)。

そんな国産Mクラスボックス型ミニバンは、2023年4月に6代目となった日産『セレナ』の登場で、2022年に発売された4代目トヨタ『ノア/ヴォクシー』、6代目ホンダ『ステップワゴン』とともに最新モデルが出揃ったことになる。

そこで、セレナ、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンのドッグフレンドリー度を比較してみよう…というのが、今回の企画の趣旨。取り上げるグレードは売れ筋のハイブリッドモデルで統一している。

◆新型セレナは文句なしにドッグフレンドリー
3車の中でもっとも新しいセレナは、全方位のドッグフレンドリーポイントを備えた1台と言える。ハイブリッド=e-POWERモデルは全グレード8人乗り。つまり2列目席が3人掛けのシートレイアウト。が、それは新型セレナでe-POWERにも付くようになったスマートマルチセンターシートを、2列目キャプテンシートの間にスライドさせ、固定した時に可能になる。つまり、購入時に、ノア/ヴォクシーやステップワゴンのように、2列目席をキャプテンシートにするか、ベンチシートにするかで悩む必要はない。ズバリ言えば、多頭、大型犬を、特等席の2列目席に乗せるのであればベンチシートが理想であることは間違いないところ。その点で、セレナの2列目席は文句なしにドッグフレンドリーと言えるのだ。

さらに、新型セレナは先代から継承された、テールゲートのガラス部分だけ開閉できるデュアルバックドアを採用。車体後方にスペースのない場所でも荷物を出し入れしやすいメリットがあるほか、車内の換気、また、シートアレンジによっては、愛犬が外の景色を比較的安全に楽しむのにも有効なのである。

また、車内外で1500Wまでの家電品が使える、AC100V/1500Wコンセント(前席部分とラゲッジルームの2か所)を、セレナとしてはオプションながら初採用。アウトドアではもちろん、ドライブ先で愛犬を同伴できる飲食店が見つからなくても、コーヒーメーカーや簡易電子レンジが使って車内を“どこでもドッグカフェ”に大変身させられ、災害時に避難所に愛犬同伴で入れず、やむなく車内で一時避難する際にも、電源付きマイ避難所として使える絶大なメリットがある。これも、セレナの新型ならではの大きなドッグフレンドリーポイントと断言できる。(※現行型の4代目ノア/ヴォクシーにも用意されているが、6代目ステップワゴンは未設定)

新型セレナは走ってもドッグフレンドリー。とにかく静かで、ボックス型ミニバンのウィークポイントとなる「箱鳴り=こもり音」も最小限。聴覚に優れた犬にとって、快適にドライブを楽しめる広大な室内空間が実現、約束されているのだ。

◆ノア/ヴォクシーの魅力は快適性と安心・安全性
ノア/ヴォクシーはどうか。愛犬の特等席となる2列目席は、先代ならキャプテンシートを選択しても、ロングスライドとともに中寄スライドが可能で、ベンチシート化することができた。が、4代目となる現行型では、中寄スライドなしにストレート超ロングスライド機構を実現したため、中寄スライドは廃止。購入時に7人乗りのキャプテンシートか、8人乗りになるベンチシートかの選択に迫られる。

トヨタのハイブリッドモデルのお約束装備と言えるAC100V/1500Wコンセントは、ハイブリッドのS-Zグレードに標準、ハイブリッドのS-Gグレードに4万4000円のオプションとして用意されている。

走行性能面では、エンジンを回すシーンでエンジンノイズが騒々しいのと、3列目席に限り、ロードノイズが目立つことを除けば、粘り強くEV走行を行ってくれるトヨタのストロングハイブリッドならではの快適で安心安全な愛犬とのドライブが楽しめる。全車標準のトヨタセーフティセンスに含まれるプロアクティブドライビングアシストは、ACC(アダプティブクルーズコントロール)を使っていない場面、一般道でも前車との距離が近づきすぎた場合や、カーブの手前で自動的に減速してくれるなど、運転中、後席に乗った愛犬に一瞬、気をとられるようなシーンでも安心である。

◆ステップワゴンの魅力は純正アクセサリー
ステップワゴンは最新の6代目で、始めて2列目キャプテンシートの中寄スライドを採用し、2列目席キャプテンシートを選択してもベンチシート化は可能。ただし2列席キャプテンシートのベンチシート化した際のシート幅はセレナの1230mmに対して、セレナにあるスマートマルチセンターシートを持たないため、1030mmにとどまる。2列目キャプテンシートでの多頭、大型犬の乗車では、ややセレナが有利になるはずだ。

新型セレナのe-POWERモデルやノア/ヴォクシーのハイブリッドモデルに用意されるAC100V/1500Wコンセントは、残念ながら、用意されていない。先代ステップワゴンのハイブリッドモデルにはオプションで用意されていたのだが、オプション注文数が少なかったのがその理由らしい。が、現在の空前のアウトドアブーム、愛犬とのドライブ旅行ブームからすれば、ぜひとも復活させてほしいオプションである。

走行性能は、車内の静かさを徹底したクルマ造りで、ボックス型ミニバンのウィークポイントととなるこもり音の発生を徹底低減。FFモデルに限れば、走行中、エンジンが始動したときでも愛犬の耳にも優しい車内の静かさが保たれる。

しかし、ステップワゴン、というか全ホンダ車には、ライバルにない絶大なるドッグフレンドリーポイントがある。それは、ホンダ純正アクセサリーとして愛犬用のHonda Dogシリーズのアイテムが多数用意されていること。この点では、ライバルメーカーの追随を許さず、多くの愛犬家と愛犬からホンダ車が支持されている大きな要因ともなっている。

◆最もドッグフレンドリーなミニバンは…
こうして、出揃った国産Mクラスボックス型ミニバンのドッグフレンドリーポイントを比較してみると、車両本体としては新型セレナの2列目席シートアレンジ性、車内の静かさ、デュアルバックドアの使い勝手、初採用のAC100V/1500Wコンセントの用意など、全方位にわたるドッグフレンドリー度の高さが際立っているように感じられる(スライドドアからの乗降はフロアがやや高めだが)。

また、車両本体以外の部分まで視点を広げれば、愛犬をより快適・安全に乗せられる愛犬用純正アクセサリーの充実度でステップワゴンが優位に立つ。ノア/ヴォクシーは非パワーの手動テールゲートでも、任意の位置でテールゲートを止められ、車体後方にスペースのない場所でもバックドアが開けやすく、また3万3000円のオプションでスライドドアからの乗降性を一段と高めてくれるユニバーサルステップ(超小型犬、短足犬にも有効)が用意されているなどの点を評価することができる。

もちろん、デザイン的な好み、愛犬のサイズ、犬種、1頭か多頭かによって、ベストなドッグフレンドリーミニバンは変わってくるわけだが、静かな走行性能、AC100V/1500Wコンセントの用意、愛犬の特等席になりうる2列目席のキャプテン&ベンチシート化の自在度、ベンチシート化した際のシート幅のゆとりを含め、新型セレナがドッグフレンドリーミニバンとして一歩リードしているように思える愛犬家も少なくないだろう。

日産 セレナ《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ ノア《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ ノア《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ ステップワゴン《写真撮影 青山尚暉》 後席エアコンコントローラーの一例《写真撮影 青山尚暉》 後席エアコン吹き出し口の一例《写真撮影 青山尚暉》 ロールサンシェードの一例《写真撮影 青山尚暉》 日産 セレナ《写真撮影 青山尚暉》 日産 セレナ《写真撮影 青山尚暉》 日産 セレナ 2列目《写真撮影 青山尚暉》 日産 セレナ デュアルバックドア《写真撮影 青山尚暉》 先代セレナのデュアルバックドア《写真撮影 青山尚暉》 日産 セレナ AC100V/1500Wコンセント《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ ヴォクシー(左)とノア(右)《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ ノア 2列目《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ ステップワゴン《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ ステップワゴン《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ ステップワゴン《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ ステップワゴン《写真撮影 青山尚暉》 Honda Dogシリーズのペットシートプラスわん2《写真撮影 青山尚暉》 Honda Dogシリーズのペットシートサークル《写真撮影 青山尚暉》 日産 セレナ《写真撮影 青山尚暉》 青山尚暉のわんダフルカーライフ《写真撮影 青山尚暉》 ヴォクシーのユニバーサルステップ《写真撮影 青山尚暉》