『エクストレイル』《日産試乗会事務局》

北海道苫小牧の一般道とアイスサーキットにおいて、日産自動車によるメディア向け氷上試乗会イベント『NISSAN WINTER 試乗会2025』が開催された。雪道や氷上で日産の電動モデルやスポーツモデルへの試乗を通し、アルバイト大学生が日産の最新技術を体験した。例年長野県女神湖で行われていた氷上試乗会だが、さらに冷え込む北海道へと場所を変えた。


◆2025年の日産試乗会は、北海道日帰り弾丸試乗会!?
毎年、『レスポンス』編集部からはアルバイト大学生が参加し試乗記を書いているが、今回はなんと北海道弾丸日帰り試乗会となった。

普段は、自動車部に所属しており、ガソリンの旧車に乗ることが多いアルバイト大学生。雪道での走行やEVに乗ったことはほとんどなく、試乗記に対して不安がある一方、氷上で『GT-R』や『フェアレディZ』でアグレッシブな走りができると聞き心躍らせていた。不安と期待に胸を膨らませ、いざ試乗へ。雪の一般道や氷上で様々な車両を体験したが、日産の電動車や電子制御など予想をはるかに上回る日産の最新技術に度肝を抜かれることとなった。

新千歳空港からバスで30分、試乗会の行われる苫小牧に到着した。今回の試乗会は、雪道や氷上走行を通して日産の技術を体感してもらうことが趣旨のもの。電動パワートレインの『エクストレイル』や『セレナ』、『オーラ』や『アリア』からスポーツモデルの『GT-R』や『フェアレディZ』などが試乗できる。

会場ではまず説明会が行われた。今回の試乗会では日産の電動モデルの性能を知ってもらうことや、特に電動4WDの制御を体感してもらうことが大きな目的であることが説明された。『セレナ e-4ORCE』は最新のモデルであり、のちに詳しく触れるが、開発担当者からコンセプトやこだわりの制御などの説明があった。

◆いざ試乗! 電動モデルの公道・雪道性能は?
試乗会はまずは雪の一般道からスタートした。コースは雪に覆われたワインディングや幅広の舗装路などを通り一周するコースとなっていた。まず初めに乗車したのは、『オーラ G FOUR』だ。日産のハイブリッドシステム「e-POWER」の採用された4WDのグレード。ノートのハイグレード車種で今回の市場の中ではコンパクトな一台だった。

普段ガソリン車しか乗らないため、エンジン音がしない静かさと、アクセルを踏むともたつきなく滑らかに発進することに驚いた。雪道のカーブでは、滑ってもすぐに制御が介入し、姿勢を保ってくれ怖さがなかった。特に驚いたのは、回生ブレーキの効きの良さで、エンジン車ならローギアにしてエンジンブレーキを使うような、ブレーキを踏みたくない下り坂の場面で、アクセルを離すだけで安全に減速してくれることだった。べた踏みで滑る感覚はあるものの、全体的に安心感があり、乗りやすかった。

次に試乗したのは、『セレナ e-4ORCE ハイウェイスターV』で、2024年10月に受注生産を開始した最新モデル。パワートレインであるモーターとシャシーの統合制御を行う「e-4ORCE」が採用されており、駆動輪一つ一つにブレーキやトルクの制御をかけることで、走行性能を向上させている。説明会では、荷重配分の調整やコーナー中のブレーキ制御により乗り心地を良くしていると聞いた。

いざ試乗してまず直線で踏み込んでみると、前後の強力なモーターのおかげか、オーラより強力な加速感で蹴り出し車両重量を感じさせない軽快な走りをみせた。FFのミニバンしか乗ったことのない筆者にとってこの感覚は新鮮だった。

コーナーでもリアがもたついた感じはなく、安定感がすごい。ミニバンの車高やホイールベースであるにもかかわらず、外に広がって曲がっていくような感じがなく、荷重変化も少ない印象を受けた。強力なモーターと後輪の制御が効いているのか、坂道で全く滑らずグングン加速していくことには驚いた。また、回生ブレーキによるワンペダルドライブで疲れにくかった。

また、フロントガラスが借り大きくAピラーが細く分割されていて左右の視野も広く、視界が開けて運転しやすかった、そのため男性に比べ身長の低い女性でもミニバンを乗りこなせるような工夫が垣間見えた。コンセプトである“BIG×EASY×FUN”を体現し、家族で安心して快適に乗れる車に仕上がっていたと思う。

また、意図的に、15cmはあるだろう深雪にわざと入り発進してみたが、一切滑ることなく難なく脱出できたので、スタックの心配が少ないだろう。

次に、一般道で試乗したのは『エクストレイル G e-4ORCE』。SUVでストロークがあるためか、試乗会の中では最も振動が少なく滑らかで快適な乗り心地であった。挙動はe-4ORCEらしく雪道でも安定感と余裕がることが印象的で、加減速ともに全く不自由がなかった。

特に驚かされたのは、静かすぎて今モーターで走っているのかエンジンで走っているのか、その切り替えが分からないことだった。開発を担当している方にお話を伺うと、e-POWERでかなりこだわっている部分のようで、ロードノーズが大きくなる高速域や少しでこぼこした道、坂道や下り坂を機械が自ら判断して切り替えているそうで、静粛性を生み出す努力があることを知った。

最後に一般道で試乗したのは、『アリア NISMO B9 e-4ORCE』。クロスオーバーEVのアリアをスポーツ仕様でNISMOブランドに仕上げた一台。

大きな道路への合流でNISMOモードで踏んでみると、とんでもない加速感で一瞬にして法定速度へ到達した。2トンを超える車体重量だが加速性は言わずもがな電子制御によってブレーキやコーナーリングでその重量を感じさせないようになっており、驚いた。路面もさることながら雪道特有の凹凸感も全く感じさせず、乗り心地滑らかでどこまでもシームレスな車であった。

氷上走行では、ラリーなどの練習でも使われているというエビスサーキットを訪れた。見渡す限りの氷の路面にパイロンが並べられており、設定されたコースに従って走行した。

◆氷上でこの安定感。驚くべき電子制御の実力
まず初めに氷上で走行したのは『エクストレイル AUTECH e-4ORCE』。氷上にもかかわらずハンドルを切った方向へと従順に進んでいき、フロントが逃げたりリアが滑り出したりしても正しく曲がっていこうとする感触があった。四駆のコントロールがかなり積極的に曲げてくれ、深いアングルでもハンドルのみの操作で活きたい方向に進んでくれた。SNOWモードでは、やや動きがマイルドになり、ハンドルに対してさらに従順になることで、氷上での運転でも破綻しない安心感があった。

次に試乗したのは『オーラ NISMO tuned e-POWER 4WD』。車格もあって全体的に軽い走りで、アクセル、ブレーキともに少し鋭くスポーツ性能を感じさせた。開発担当者から、NISMOモードを試してほしいとのことだったので、試してみると、電子制御の介入が減り、駆動がリア寄りになることでまるでスポーツカーのような動きになった。当然オンロード向きに開発したもののようだが、キビキビした動きで氷上でも心躍る走りを体験できた。

最後に、自動車部員であるレスポンス部員が楽しみにしていた、『GT-R Premium edition T-spec』と『フェアレディZ Version ST』へ試乗した。シートポジションの低さやアクセルをあおったときのふけ上がりの良さに興奮が収まらなかったが、いざコースに出てみると進まない。特に、MTでリア駆動のフェアレディZはほとんど空転しており、4輪駆動でかつモーター駆動の先ほどまで乗っていた車たちの制御や安定性に感動を覚えた。気持ちよく滑らせてスポーツカーとしての体験を楽しんだが、公道や雪道での走行では圧倒的に電動モデルに軍配が上がる。

◆電動モデルはこの時代アリ。進歩する技術
外はすでに暗くなり新千歳空港で待機しているときにふと考えた。電動モデルになる機会は今回が初めてで、その技術を体感し、何よりその完成度の高さに驚かされることが多かった。ガソリン車がいいというのは食わず嫌い的な思想ではなかったか? ストレスフリーな乗り味で安全な電動モデルの良さに気づかされ、今後のカーライフの選択肢が増える非常に貴重な機会となった。

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