2022-2023日本自動車殿堂イヤー賞《写真撮影  内田俊一》

2022-2023日本自動車殿堂イヤー賞は日産『サクラ』と三菱『eKクロスEV』が受賞。その表彰式が開催された。

日本自動車殿堂イヤー賞は、2021年10月16日から2022年10月15日の選考対象期間に、国内で販売された新型乗用車を評価することにより、国産乗用車、輸入乗用車、カーデザイン、カーテクノロジーの4賞を表彰。さらにその開発グループを讃え、歴史に残し、後世に伝承することがこの賞の位置づけである。学識経験者、自動車メーカーなどで開発に携わり、技術やデザイン等に詳しい選考委員が各賞を決定した。

◆日本自動車殿堂カーオブザイヤー:日産サクラ・三菱eKクロスEV(2000点満点で1686点)
国内EV市場の拡大に貢献する軽企画適合の本格的EVとして、クラスを超えた、力強いEVの走りと、高い質感の内装。軽自動車ながら、優れた総合安全アシストシステムを装備。数々の優れた特徴を備えたクルマとして評価された。

日産自動車セグメントCVEの坂幸真氏は、「日産として、昨年に引き続き2年連続の受賞で嬉しい。この両車の受賞で忘れてはいけないのが、10年以上も前に日産、三菱双方が世界に先駆けて電気自動車の量産開発を始めたということだ。そういった長年の先人の努力があって今回ここに結実した」とコメント。

三菱チーフプロダクトスペシャリストの藤井康輔氏もそこは同意し、そのうえで、「両社ともEV作りを諦めなかった。また長年培ってきたEV作りやサービスのノウハウ。そして両社の強みをいかした商品がこの受賞に繋がった。非常に多くのお客様から良い評価をいただいており、今後も脱炭素社会に向かっての取り組みとして、EVをさらに良い商品にすべく開発に取り組んでいく」と語った。

◆日本自動車殿堂インポートカーオブザイヤー:メルセデスベンツ『EQS』(1900点満点で1509点)
高い空力特性とEVの未来を感じさせるエクステリア。完成度の高いEV専用プラットフォーム。先進かつ独自のテクノロジーに裏打ちされたユーザーインターフェースなどが評価されての受賞だ。

メルセベスベンツ営業企画部部長の上野麻美氏は、「様々な情勢の中、9月29日にやっとという思いで発表することができた。このEQSはメルセデスベンツの中で初めて、電気自動車専用のプラットフォームで開発したクルマ。その結果、CD値0.20を実現したほか、航続可能距離700kmを達成できた。我々が今後EVオンリーに向けて進んでいく中で、かなりの自信を持って出した1台だ」と製品の特長を説明。

さらに、「EQS自体は全世界では既に発表されているが、メルセデスベンツ日本として、V2H、V2L機能を装備したいというこだわりがあった。この機能を装備したEQSは日本仕様が初めて」と日本側からドイツ本社への強い要望の結果達成できたことを明かす。

そして、「メルセデスベンツは2039年に向けて、アンビション2039という形でカーボンニュートラルを目指していく企業だ。2030年には、市場が許すところでは、EVオンリーを掲げて電気自動車を促進していきたい。日本市場の今年の1月から10月期(徐軽)でのEV比率は1.3%と、EV化が進んでいない。その中で、これからもチャレンジして、より多くのEVや電動車を日本のお客様に乗っていただき、体感していただきたい」と述べた。

◆日本自動車殿堂カーデザインオブザイヤー:トヨタ『クラウンクロスオーバー』(1700点満点で1378点)
トヨタのフラッグシップ初のクロスオーバーデザインであり、また環境と安全技術を融合させたスマートなエクステリア。そして使いやすさと楽しさを組み込んだ新鮮なインテリアが選考理由とされた。

トヨタMSデザイン部室長の宮崎満則氏は、今回のクラウンは16代目。これだけの老舗であるが故に守りに入り始めていたが、今回はしっかり攻めていきたいと、若いメンバー中心に今回のデザインをより革新と想像に向けて攻めていった」と話し、それが今回高く評価されたことを喜んでいた。

◆日本自動車殿堂カーテクノロジーオブザイヤー:ドライバーサポートと緊急時対応技術、マツダCX-60(1700点満点で1219点)
ドライバーモニタリング、ドライバー異常時対応システム(EDA)、ドライバーパーソナライゼーションシステムなど、数々の優れた特徴を備えたシステムが評価された。

マツダ商品戦略本部技術企画部高度運転支援技術担当主査の栃岡孝宏氏は、「この技術は2014年にコンセプトを公表。自動運転技術に対して私たちがどのように向かい合っていくかを突きつけられた時期でもあった」と振り返る。

マツダとしては、「クルマは運転して楽しいもの。つまり、日本の自動車の歴史を運転の楽しさで文化に変えてきた。この価値をずっと残していき、なおかつそれを継続的に楽しむためには、安全で、そして安心な技術で支えることが必要だと考えた」と栃岡氏。そこで、「私たちがお客様の状態を常に見守りながら、そして様子に合わせて運転支援を行い、もし万が一運転が継続できない時にはクルマを自動で止めて、なおかつ緊急通報して救命にも繋げる技術。つまり、ドライバーの認証技術から、ドライバー状態推定、そして高度運転支援技術による安全なクルマの停止、そしてポリテック技術による緊急通報をシームレスにつないで価値を出していくことこそ、お客様の楽しい運転、そして心と体が活性化していく、元気になるっていう人生生活を支えられる」と考えたのだ。

この開発には、当然CX-60の開発チーム以外にも、「協力いただいたメーカー、病気を持たれている患者さん、そして多くの被験者の皆様、日本だけではなく、グローバルにも協力してもらった。また、大学や研究機関、病院など様々なところの知見をいただいた。その結晶が、まさにここで結実した」とコメント。最後に栃岡氏は、「私たちが投入したCX-60の技術は、お客様の生活の安心を守る。これはドライバーだけではなく、同乗者、家族、そして交通環境における周囲のひとたちの安心を同時に満たすものだ。今後この技術も発展させていきたい」と抱負を語った。

日産自動車セグメントCVEの坂幸真氏《写真撮影  内田俊一》 三菱チーフプロダクトスペシャリストの藤井康輔氏《写真撮影  内田俊一》 メルセベスベンツ営業企画部部長の上野麻美氏《写真撮影  内田俊一》 トヨタMSデザイン部室長の宮崎満則氏《写真撮影  内田俊一》 マツダ商品戦略本部技術企画部高度運転支援技術担当主査の栃岡孝宏氏《写真撮影  内田俊一》 左から順に日産自動車セグメントCVEの坂幸真氏、三菱チーフプロダクトスペシャリストの藤井康輔氏、メルセベスベンツ営業企画部部長の上野麻美氏、トヨタMSデザイン部室長の宮崎満則氏、マツダ商品戦略本部技術企画部高度運転支援技術担当主査の栃岡孝宏氏《写真撮影  内田俊一》 日産 サクラ《写真提供 日本自動車研究者ジャーナリスト会議》 三菱 ekクロスEV《写真提供 日本自動車研究者ジャーナリスト会議》 メルセデスベンツ EQS《photo by Mercedes-Benz》 トヨタ クラウン クロスオーバー G アドバンスド《写真撮影 雪岡直樹》 マツダ CX-60 プレミアムスポーツ(手前)とマツダ CX-60 プレミアムモダン(奥)《写真撮影 中野英幸》