「リアシートがすごい」クルマ 7台を比較!センチュリーにロールス、あの軽自動車も!?

クルマのリアシートといえば、家族を乗せるためのもの、VIPのための空間、あるいは趣味の道具を満載に……など様々な用途がある。そして裏を返せば、リアシート=後席空間がどのように仕立てられているかによって、そのクルマの個性が見えてくる。今回は、最新のリアシート事情にフォーカスして、写真とともに紹介してみたい。

◆トヨタ センチュリー


言わずと知れた日本を代表するVIP御用達の「ショーファーカー」がトヨタ『センチュリー』だ。リアシートの快適さを極限まで追求するために生まれたと言っても過言ではないだろう。2018年に21年ぶりの新型となったセンチュリーは、レクサス『LS』とプラットフォームを共有し、65mm延長したホイールベースはすべてリアシートの空間に費やされているといっていい。

電動オットマンは当然のごとく装備、左後席にはリフレッシュ機能付の電動リアシートを採用。その座り心地は高級ソファのような柔らかさで、とにかく快適さに全振りしたような印象だ。そして大人の男性が膝をまっすぐ伸ばしてもフロントシートに足先が届かないほどの広さ。さらにアームレストの大型タッチパネルでオーディオ、エアコン、カーテンも操作できるなど、まさに至れり尽くせりの空間に仕上がっている。

◆ロールスロイス ファントム


ショーファーカーの日本代表がセンチュリーなら、世界代表はやはりロールスロイス『ファントム』だろう。こちらも現行モデルは2018年に登場した。「荘厳」という言葉が似つかわしいエクステリアだが、驚くべきはそのサイズ。全長はベースモデルで5770mm、ホイールベースの長い「エクステンデッド・ホイールベース」は5990mmにも達する。これはもちろん、リアシートの居住性を究極的に拡大するためのものだ。

その広さ、ラグジュアリーっぷりは写真を見てもらえればおわかりだろう。そしてファントムといえば(?)アームレストに備えられたワインクーラーだ。グラスも収納できるこのワインクーラーを見れば、このクルマがどのような顧客に向けて作られたのかが一目でわかるというもの。「世界で最も静かなクルマ」をうたうファントムのマジックカーペットライドを体験できるのは、かなりの幸運と富の持ち主であることは間違いない。

◆レクサス LM300h


2019年の上海モーターショーで公開されるや、日本でも大いに話題となったのがレクサス初のミニバン『LM300h』だ。トヨタ『アルファード』をベースとしながらも、4名乗り2列シート「ロイヤルエディション」を設定。まさにリアシートのために生み出されたミニバンといっていい。

アルファードでも十分にショーファー需要に耐える快適性を持つが、LM300hはさらにラグジュアリーなリアシートを追求。大きな特徴が、フロントシートとリアシートの間をフルパーテーションで仕切ることで、プライベートな空間を実現している点だ。このパーテーションには26インチの大型ディスプレイが装備され、防音ガラスにハイエンドサウンドシステムも搭載。さらに、ワインまたはシャンパンを2本入れることができるクーラーも完備する。

乗り心地ではファントムに譲るかもしれないが、ミニバンならではの広大な空間、そして日本由来の「おもてなし度」ではLM300hも負けていない。日本未導入なのが残念だ。

◆ボルボ XC90 エクセレンス


近年、ドイツ御三家に次ぐラグジュアリーブランドとしてその存在価値を高めているのがボルボ。そのボルボの最上級モデルであるSUV『XC90』に設定された極上のショーファー仕様が、『XC90 エクセレンス』だ。通常3列シートのところ、こちらも2列シートのみとし、独立2名がけに変更。広大なリアシート空間を生み出した。

リアシートには、マッサージや空調機能を追加。格納式タッチパネルモニター、格納式テーブルのほか、またもやボトル&グラスホルダー付きのクーラー、そしてスウェーデン・オレフォス製のクリスタルグラスなどが装備されている。仕立ての良いシート生地やウッドパネルの質感から連想するのは、航空機のビジネスクラス以上の空間だ。

◆ポルシェ VRエンターテインメント


なぜポルシェ?と思う方も少なくないと思う。ここで紹介するのはポルシェが提案する、新たなリアシートの「楽しみかた」だ。ポルシェは2019年7月、ドイツのスタートアップ「ホロライド」と共同開発したVR(仮想現実)エンターテインメントを発表し、2022年までに市場投入することを明らかにした。

センサー付きのVRヘッドセットをリアシートの乗員が装着することにより、VRエンターテインメントをリアルタイムで、車両の動きに合わせて楽しむことができるというものだ。VRヘッドセットに映し出されるゲームの中ではスペースシャトルが自車(自機)となり、実際に走行中の車両の動きに合わせて向きを変えたりすることで、没入感あるゲーム体験ができるという。さらに乗り物酔いの症状を緩和させる効果も期待できるというから驚きだ。

VRの世界に宇宙空間が広がっているのだとしたら、その広さはロールスロイスの比ではない。

◆三菱 eKクロス スペース/eKスペース


さらに趣を変えて、日本を代表する規格の軽自動車から、リアシートに個性のある2台を紹介しよう。まずは三菱自動車の最新車種『eKクロス スペース/eKスペース』だ。今や国民車と呼べるほど売れている軽スーパーハイトワゴンだが、その中でもeKクロス スペース/eKスペースの特筆すべき点は、リアシートの「スライド量」だ。

約320mmものスライドを可能としたリアシート空間は、最後端にスライドすればまさにリムジン並み。さらに最前端にスライドさせれば、広大なラゲッジスペースも確保できる。また左右独立でのスライドが可能なため、子どもを乗せたシートだけを最前端にスライドしておけば、すぐに手を伸ばすこともできる。

さすがにワインクーラーはないが、天井に取り付けられたリヤサーキュレーターによってエアコンの風を効率よく車内に循環させることができるのも魅力。軽自動車ながらリアシートの快適性を追求した、代表的な一台だ。

◆ダイハツ タフト


リアシートのスライド量がトップクラスのeKクロス スペース/eKスペースに対して、前後スライド機能が「ついていない」のが大きな特徴となっているのがダイハツ『タフト』だ。空間としては、スクエアなボディによって十分な快適性が実現されているが、想定の範囲内。ではタフトのリアシートの何が魅力かといえば、フロントシートとは全く異なるコンセプトによって成り立っている点だ。

タフトはフロントシートを「クルー(乗員)スペース」、リアシートを「フレキシブルスペース」と割り切っていて、ドアパネル、シートの色まで前後で変えている。フロントシートは大開口のガラスルーフ「スカイフィールトップ」によって開放感ある快適な空間を実現。これに対しリアシートは趣味の道具を乗せたりする遊びの空間としているのだ。シートを倒せば完全にフラットになる荷室は汚れにくい加工もされていて使い勝手は抜群。

リアシートの居住性が求められがちな軽自動車の中にあって、あえて居住性・快適性とは異なる提案をしてきたタフトもまた、リアシートにこだわった一台と言って良いだろう。

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