ルノー カングー 新型《写真撮影 中野英幸》

今回のワンポイント確認は、「パン屋さんみたいなカングーは、ふつうに使っても使いやすいの?」である。

カングーのイメージは商用車っぽい、である。全高が1800mm超えということで荷物が積めるため、フランスの街をパンやお菓子や、ちょっとしたかわいいものを積んで走り、どこかに止まって売っている感じ。走りよりも荷物を運ぶことが主軸のクルマだ(個人の感想です)。そして、日本国内では、キャンプを始めとするアウトドア派にも愛されている。

新型は、きりっとした顔立ちになってこれまでの愛らしさは半減したものの(残念)、それでも全高の高さが作り出すボリューム感からあふれ出る独特の存在感は変わらない。キャンプに行かなくても、ちょっと所有したいという欲望がふつふつと沸き起こってくるのである。

◆荷物が積めるだけじゃなく、走りもいい
今回は、1.5リットルのディーゼルターボでの試乗である。意外だったのは、エンジンをスタートさせてもガラガラ音が気にならないことだ。信号待ちではアイドリングストップするのでなおさらガラガラ音が気にならないのだが、ブレーキの踏みが弱くてエンジンが止まらないときは、「もっと強く踏め」とか「そんな弱い踏み方ではエンジンは止まらない」とインパネに表示されて(実際はもっと簡潔な言葉)語りかけてくるのも親近感がわく。

また、ターボはアイドリング状態からちょっとアクセルを踏んだあたりから効くため(1750回転)、ぴゅんぴゅん丸的な加速で気持ちよく走れる。これだけの背の高さがあっても、運転中の姿勢が左右にふられることがないのも好印象だ。荷物が積めることだけじゃなく、走りもいいのである。

ドラポジは、それほど高いというわけではなく乗り降りはしやすい。ただ、昨今の日本車はやたら気にして高さをなくしてくる(技術的には難しい)サイドシル(乗り込むときの敷居)は高く、腸腰筋の衰えた高齢者を乗せるときはつまずきそうなので気を付けたい。後部座席は、3人分の座席がきちんと用意してあり、中央席に座る人が居心地悪く感じることもなさそうだ。6:4で分割できるため、載せる荷物の大きさや量での調整も可能という基本は外していない。

◆高さがあるって、広くていい
荷物スペースのドアは、おなじみの両サイドに開く観音開きタイプで開けたときの雨除けにはならないものの、背の低い人でも手は届くし、ドアは重くないしでとても扱いやすいタイプである。この観音開きは当然ながら、リアウィンドウの中央付近にドアの枠がくる。リアウィンドウ自体が大きいので、後方の情報はとりやすいのだが、慣れないと気になるかもしれない。覆面○○を確認することもさることながら、最近は、あおり運転で猛追してくる人もいるので、ルームミラーでの後方確認はまめにしたいものだ。

天井が高いので、運転席の天井付近にある、フロントオーバーヘッドコンソールなる小物入れは、A4サイズの雑誌などもわさわさ入れておけるほどのサイズでこれはかなり便利。高さがあるって、広くていい。日本の狭小住宅を思い出し、しみじみそう思う。

◆立体駐車場は厳しいけれど
今回のワンポイント確認である「パン屋さんみたいなカングーは、ふつうに使っても使いやすいの?」は、立体駐車場は厳しいけれど乗っていてうきうきするし使いやすい、である。荷物を積まなくても、ふつうの街中での買い物にも便利だし、スライドドアなので小さい子のいる家族連れにもぜひ使ってもらいたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

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