デリカミニとジムニーの外観イメージ《写真撮影 雪岡直樹》

今は軽自動車の人気が高く、新車として売られるクルマの40%近くを占める。その一方で小型/普通車ではSUVの人気が高く、ミニバンの登録台数を超えた。そこで人気を得たのが、両方の性格を併せ持つ軽自動車サイズのSUVだ。


◆比較する2車種のプロフィール
このタイプのパイオニアといえば、スズキ『ジムニー』になる。本格的な悪路向けのSUVで、ラダー(梯状の)フレームに、耐久性の優れた足まわりを装着する。駆動方式は4WDのみで、悪路で駆動力を高める副変速機も備わる。

一方、三菱『デリカミニ』は、全高が1700mmを超える背の高いボディを備えた軽自動車サイズのSUVだ。ジムニーのような悪路向けではなく、広い室内を備える。eKクロススペースの改良版だが、フロントマスクを大幅に変えて車名もデリカミニに改めたから、新型車と認知されて売れ行きも好調だ。そこでこの2車を比較する。

◆外観デザイン&ボディサイズ比較
デリカミニの基本的な外観デザインは、全高を1700mm以上に設定してスライドドアを装着するスーパーハイトワゴンだ。駆動方式も、エンジンを横向きに搭載する前輪駆動がベースで、空間効率を重視している。

ジムニーは、純粋な悪路向けのSUVだから、エンジンは縦向きに搭載され、駆動方式も後輪駆動をベースにした4WDだ。デリカミニに比べると、ボンネットが長く、居住空間は短い。後席側のドアは装着されず、3ドアボディになった。

この2車は、軽自動車のSUVという共通点はあるが、外観や車両のレイアウト、機能や性格は大きく異なる。

◆インテリア&居住性比較
デリカミニは空間効率を重視したスーパーハイトワゴンだから、N-BOXやタントと同様に車内は広い。後席を後端までスライドさせると、身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先には握り拳4つ分の余裕ができる。前後方向の足元空間は、トヨタ『センチュリー』の握り拳3つ半を上まわる。

ジムニーは前述の通りボンネットが長いため、室内長は短く、前席を優先させている。後席に座る乗員の膝先空間は、デリカミニと同じ測り方で、握りコブシ半分程度だ。デリカミニに比べて大幅に狭いが、後席に座る乗員の足が前席の下に収まるから、大人4名の乗車も無理ではない。クルマの性格を考えると、3ドアクーペに準じたSUVだが、その割には後席も実用性を備える。

◆荷室などの使い勝手比較
デリカミニでは、後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、大容量の荷室になる。荷室高に十分な余裕があり、自転車のような大きな荷物も積みやすい。子育て世代のユーザーであれば、チャイルドシートを装着した後席を前側にスライドさせると、親子の間隔が縮まって信号待ちの時などに子供のケアをしやすい。この状態であれば、後席の後ろ側の荷室も広がるから、ベビーカーなどを積みやすい。

その点でジムニーの荷室は最小限度だ。後席を使っている状態では、荷室長も乏しい。それでも2人乗りのクーペと考えて、後席の背もたれを倒せば、実用的には十分な積載容量を確保できる。

デリカミニは後席側にスライドドアを装着するが、ジムニーのドアは前席側のみだから、後席の乗降性にも違いが見られる。

◆運転のしやすさ比較
両車ともに軽自動車だから、全長は3395mm、全幅は1475mmで等しい。最小回転半径は、デリカミニの2WDは14インチタイヤ装着車が4.5m、15インチは4.8mになる。4WDはすべて15インチタイヤを装着して4.9mだ。

ジムニーは全車が4WDで、16インチタイヤを装着するが、最小回転半径は4.8mに収まる。後輪駆動をベースにした4WDで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2250mmと短いから、小回りの利きが優れている。またジムニーは水平基調のボディスタイルにより、デリカミニに比べるとボンネットがよく見える。混雑した街中でも運転しやすい。

◆走行性能/燃費/乗り心地比較
デリカミニの動力性能は、ノーマルエンジンでは物足りないが、ターボなら余裕がある。ジムニーは4WDのみで車両重量も1トンを超えるが、エンジンはターボのみだから、パワー不足を感じない。

走行安定性は、舗装路では両車ともに同程度だ。ジムニーは操舵に対する反応が鈍いが、後輪の接地性は高く、不安定な挙動に陥りにくい。ジムニーで曲がりくねった峠道などを走る時は、ステアリングの反応の鈍さを見越して、ステアリングホイールを少し早いタイミングで内側へ切り込むと良い。そうすれば操舵感の鈍さを解消できる。

悪路の走破力は、4WD同士で比較してジムニーの圧勝だ。デリカミニも専用の足まわりによって悪路のデコボコを乗り越えやすく、スーパーハイトワゴンの4WDでは走破力を高めたが、ジムニーはクルマ造りが本質的に異なる。副変速機を備えた4WD、耐久性の優れたラダーフレームと車軸式の足まわりなどにより、ジムニーと小型車版のジムニーシエラは、日本で購入可能なSUVでは最高峰の悪路走破力を備える。

WLTCモード燃費は、デリカミニにターボエンジンを搭載した4WDは17.5km/Lだ。ジムニーの4速ATは14.3km/Lとされる。

乗り心地は、デリカミニの4WDが快適だ。16インチタイヤは扁平率が60%だから空気充填量も多く、足まわりのセッティングもあって、スーパーハイトワゴンの中でも乗り心地が柔軟かつ快適に感じられる。ジムニーはホイールベースが短いこともあって前後方向の揺れが大きめだが、この硬さが悪路に入るとちょうど良い。

◆おすすめのユーザー&買い得グレード
デリカミニは、子育て世代のファミリーからキャンプを楽しむ人まで、幅広いユーザーに適する。またデリカミニの場合、上級グレードほど価格が割安だ。4WDのTプレミアムは、4WDのTに運転支援機能のマイパイロットや右側スライドドアの電動機能など、28万円相当の装備を加えながら、価格の上乗せは半額の14万6300円に抑えた。従って買い得グレードはTプレミアム4WD(223万8500円)だ。

ただし全グレードにわたって実用装備を充実させているため、予算が足りない場合は、G・2WD(180万4000円)も検討したい。

ジムニーは悪路走破に全力を注いだSUVだ。現行型はファッション性も感じさせるが、機能的には悪路を走らないとメリットを生かせない。少なくとも雪道を走るなど、4輪を駆動する機会のあるユーザーに推奨したい。買い得グレードは、一般的にはLEDヘッドランプやアルミホイールを標準装着するXC(190万3000円/4速AT)だが、内外装をシンプルに仕上げたツール感覚のXG(165万4400円/4速AT)も魅力的なグレードだ。

デリカミニとジムニーの内観イメージ《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニとジムニーの内観イメージ《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 ジムニーのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのエクステリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》 デリカミニのインテリア《写真撮影 雪岡直樹》