トヨタ ヤリスクロス vs スズキ ジムニーシエラ1《写真撮影 中野英幸、雪岡直樹》

昨今人気のボディタイプといえばSUV。中でも今回はコンパクトサイズで人気の高いトヨタ『ヤリス クロス』とスズキ『ジムニーシエラ』を比較する。

◆比較する車種のプロフィール
ヤリスクロスは、車名が示すようにヤリスと基本部分を共通化したSUVだ。売れ筋グレードの全長は4180mm、全幅は1765mmとされ、3ナンバー車ながらボディはコンパクトだ。日本の道路条件に合ったサイズで、パワーユニットは直列3気筒1.5リットルのノーマルエンジンと、ハイブリッドを用意する。

スズキジムニーシエラは、軽自動車のジムニーをベースに開発され、ボディがさらに小さい。全長は3550mm、全幅は1645mmの5ナンバー車だ。エンジンは直列4気筒1.5リットルのみを搭載する。

この2車種は、駆動メカニズムが根本的に異なる。ヤリスクロスは、前述の通りヤリスと共通だ。エンジンを横向きに搭載する前輪駆動の2WDと、これをベースに開発した4WDがある。ジムニーシエラは、エンジンを縦向きに搭載する後輪駆動ベースの4WDで、2WDは用意されない。4輪駆動時の駆動力を高める副変速機も備わり、悪路走破力を本格的に向上させた。

そしてヤリスクロスは、舗装路でも4輪を駆動して走行できるが、ジムニーシエラには、カーブを曲がる時に前後輪の回転数を調節する機能が採用されない。従って舗装路は後輪駆動の2WDで走り、悪路でのみ4WDに切り替える。

つまりヤリスクロスはシティ派SUVで、舗装路でも4WDを使える。これに対してジムニーシエラは、走破力を高めた悪路向けのSUVだから、舗装路は2WDで走り、4WDは悪路走行に特化して造り込んでいる。

◆外観デザイン&ボディサイズ比較
ジムニーシエラは軽自動車がベースだから、小型/普通車のSUVでは最小サイズだ。全長もヤリスクロスに比べて630mm短い。外観も大きく異なり、ヤリスクロスは5ドアボディだが、ジムニーシエラは3ドアだ。角張ったボディを備えたSUVのクーペともいえるだろう。

◆インテリア&居住性比較
インパネのデザインも外観の印象と一致している。ヤリスクロスはインパネの上側に丸みを持たせ、立体的に仕上げた。ジムニーシエラは明確な直線基調だ。オーソドックスだが、樹脂の表面には細かなデコボコが付いている。屋外で使うツールの滑りにくいグリップのような仕上がりだ。

居住性は後席で差が付く。ヤリスクロスは、コンパクトSUVでも5ドアボディだから、4名乗車も想定している。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ1つ少々の余裕がある。狭めだが、コンパクトカーのヤリスに比べると床から座面までの高さが20mm増しているから、腰が落ち込みにくい。ヤリスよりも快適だ。

ジムニーシエラは後席のドアが装着されない3ドアボディで、車内の広さは軽自動車のジムニーと同じだ。後席は狭く乗降性も悪い。ヤリスと同じ測り方で、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシの半分だ。それでも前席の下側に足が収まり、大人の着座も不可能ではない。

◆荷室などの使い勝手比較
ジムニーシエラはエンジンを縦向きに搭載する後輪駆動ベースの4WDだから、エンジンを横向きに搭載する前輪駆動ベースの4WDに比べてボンネットが長い。しかも全長は3550mmと短いから、室内空間がますます狭くなった。

従って後席を使っている時の荷室長は、最小限度の240mmとされ、ヤリスクロスの820mmに比べて大幅に短い。ジムニーシエラに荷物を積む時は、後席の背もたれを前側に倒す。そうすれば荷室長は980mmに拡大される。ジムニーシエラに比べると、ヤリスクロスの荷室は、一般的な形状で使いやすい。

◆運転のしやすさ比較
ヤリスクロスは全長が4180mmで、全幅は1765mmと若干広く、最小回転半径は5.3mだ。対するジムニーシエラは全長が3550mmと短く、全幅も1645mmに収まり、最小回転半径も4.9mだから小回りの利きがさらに優れている。

またジムニーシエラはボディが直線基調だから、ボンネットの四隅が分かりやすい。後方視界も優れ、軽自動車のジムニーに近い感覚で運転できる。

◆走行性能&乗り心地比較
ヤリスクロスのエンジンは、直列3気筒の1.5リットルと1.5リットルハイブリッドだ。両方とも動力性能に余裕がある。ノーマルエンジンは登り坂で3気筒特有の粗いノイズを感じるが、ハイブリッドはモーター駆動の併用で静かだ。加速も滑らかに感じる。

ジムニーシエラは直列4気筒1.5リットルを搭載する。4WD専用車だが、車両重量は4速ATが1090kgと軽い。実用回転域の駆動力が高く、軽自動車のジムニーに比べると大幅にパワフルだ。ヤリスクロスよりも運転しやすい。

4WDのWLTCモード燃費を買い得グレードで見ると、ヤリスクロスのノーマルエンジンは18.2km/リットル、ハイブリッドは28.1km/リットル、ジムニーシエラは14.3km/リットルだ。ジムニーシエラはATが4速の有段式だから、燃料消費量が増えた事情もある。

足まわりやステアリングは、ジムニーシエラが悪路向けだ。操舵に対する反応を鈍く抑えた。従って峠道では曲がりにくいが、コーナーへ進入する時に若干早いタイミングでステアリングホイールを内側へ回すと、違和感が薄れる。鈍さを見越して操作すると良い。

またジムニーシエラはホイールベース(前輪と後輪の間隔)が軽自動車のジムニーと同じで2250mmと短い。そのために舗装路では前後方向の揺れが大きめに感じる。その代わり悪路では、操舵感、走行安定性、乗り心地などが大幅に向上する。つまりジムニーシエラにとって、本来走るべきは悪路だ。舗装路は、悪路と悪路を繋ぐルートに過ぎず、いわば仮の姿だから不満も生じる。

その点でヤリスクロスは舗装路に重点を置くから、乗り心地は少し硬めながら違和感はなく、安定性や操舵感も満足できる。

◆おすすめユーザー&買い得グレード
ヤリスクロスは幅広いユーザーに適する。後席は狭めだが、ファミリーユーザーにも対応できる。推奨グレードは、ノーマルエンジンのG(202万円/2WD)、あるいはハイブリッドG(239万4000円/2WD)だ。

ハイブリッドGの価格は、ノーマルエンジンのGよりも37万4000円高いが、購入時に納める税額は8万6400円安い。従って実質差額は約29万円に縮まる。走行距離が1年間に1万km以上で、長距離を移動する機会も多いなら、快適性も高まるハイブリッドGを検討したい。走る距離が短いならノーマルエンジンのGでも良い。

ジムニーシエラは生粋の悪路向けSUVだから、雪道や悪路を走る機会のあるユーザーに適する。舗装路だけを走ると、優れた走破力が宝の持ち腐れになってしまう。推奨グレードは、一般的には充実装備のJC(208万4500円/4速AT)だが、ホイールがスチール製になるシンプルなJL(196万2400円/4速AT)にも独特のカッコ良さがある。

トヨタ ヤリスクロス vs スズキ ジムニーシエラ2《写真撮影 中野英幸、雪岡直樹》 トヨタ ヤリスクロス vs スズキ ジムニーシエラ3《写真提供 トヨタ自動車、スズキ》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真提供 トヨタ自動車》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ヤリスクロス《写真提供 トヨタ自動車》 トヨタ ヤリスクロス《写真撮影 中野英幸》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真提供 スズキ》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》 スズキ ジムニーシエラ《写真提供 スズキ》 スズキ ジムニーシエラ《写真撮影 雪岡直樹》