フィアット ドブロ・マキシ、日産 セレナ、トヨタ アルファード、三菱 デリカ《写真撮影 中野英幸、宮崎壮人、平原克彦》

フィアット『ドブロ』にはロングボディのドブロ・マキシが存在する。ドブロ・マキシはボディ長が長いだけでなく、シートも3列配置となり乗車定員が7名となる。つまり国産のミニバンとの競合性も高い。

◆国産ミニバンのライバル「ドブロ・マキシ」
ドブロ・マキシの全長×全幅×全高は4770×1850×1870mm。国産Lクラスミニバンの代表とも言えるトヨタ『アルファード』の最上級エグゼクティブラウンジは4945×1850×1935mmで、全長が175mm、全高が65mm高いというディメンションだ。その下のクラスとなるMクラスミニバンのトヨタ『ノア』は4695×1760×1895mmで明らかにひとまわり小さなサイズであることがわかる。また、よく聞く話なのだが欧州では全幅よりも全長を抑える設計が主流だという。これは欧州においては路上での駐停車が一般的であり、少しでも全長が短いほうが駐車しやすいということが影響している。

ドアの設定はフロントがヒンジ式、リヤサイドがスライド式という基本部分はドブロ、そして国産ミニバンもほぼ同一。背面部分はドブロも国産ミニバンもルーフ側にヒンジをもつ跳ね上げ式ハッチが主流。ホンダの『ステップワゴン』は、先代モデルで横開きと上開きの両方が可能な「わくわくゲート」というものを採用したが、人気は今一歩で現行モデルでは廃止となった。ドブロはリアハッチのガラスのみを開閉できるが、国産車ではこの方式を採用するクルマは非常に少なく、現行ミニバンだと『セレナ』ぐらいである。セレナはガラスハッチのみが開閉できるというよりは、リヤハッチが上下二分割になっているようなかなりしっかりした構造で、いかにも日本車らしいかゆいところに手が届く設計となっている。

◆サードシートに大きな違い
ドブロ・マキシのシート配列はフロントが2名のセパレート、セカンドがセパレート3席、サードが左右離れて配置される2席。こうした配列の国産ミニバンは存在せず、独自の配列となっている。さらに独自性があるのがサードシートがそれぞれ独立して取り外せるという点である。取り外したシートは案外バランスがよく、シートバックを寝かさなければそのまま自立している。その状態で座っても座椅子のように使えるが、シートバックに体重を掛ければ当然後ろにひっくり返ってしまう。欧米では屋根付きのガレージも多く、また靴のまま入室する習慣なのでシートが外せるのは便利だが、集合住宅が多く、靴を脱いで、しかも一段上がって入室する日本では脱着シートは向かない。

国産車の場合、サードシートをいかに収納するかが大きなポイントで、その方法によってラゲッジルームの使い勝手が変わってくる。最近は左右に跳ね上げて、リヤクォーターウインドウをカバーするように収納するのが主流である。サードシートの乗り心地も重視する国産ミニバンは、それなりのボリュームがあり跳ね上げ式収納時にラゲッジルームを圧迫するのは言うまでもない。現行のノアやセレナなどはかなり工夫されているが、シートが消滅するわけではないので、それなりの圧迫はある。一方でステップワゴンは床下に収納するタイプなので、ラゲッジルームを圧迫することはない。とはいえ、床下収納を可能にするためには床下収納は犠牲にするほかはない。以前のノアにはサードシートレスモデルが存在したが現在はラインアップから外れている。セレナには日産モータースポーツ&カスタマイズ扱いの車中泊仕様のマルチベッドというモデルがあり、こちらは最初から2列シート5名定員となっている。

ドブロ・マキシのサードシート取り外し時のラゲッジルーム容量は850リットル(ベルトラインまで)。アルファードのサードシート収納時(ベルトラインまで)は940〜1240リットル(セカンドシートの位置によって異なる)。ノアのサードシート収納時セカンドシートバック上端までは1120(6対4分割シート)〜1243(キャプテンシート)リットル。

ドブロ・マキシはセカンドシートをダイブダウンして収納することが可能なため、若干の傾斜は残るものの2名乗車時はルーフまでの使う際の容量で2693リットルと、広大なラゲッジルームを確保している。アルファードにはセカンドシートをチップアップできるモデルがあり、このモデルの場合はルーフまでの容量が2691リットルとなる。

◆装備は省略? それとも必要?
ドアまわりでは電動スライドドアやイージークローザーの有無が気になるところだが、ドブロ・マキシにもドブロにも電動スライドドアやイージークローザーは装備されない。国産車だと軽自動車でも装備されることが多いが、コマーシャルビークルベースのドブロだけにそこは省略されている。日本の場合は住宅が密集しているため、深夜帰宅でのスライドドア操作の騒音などが気になることが多く、また周囲に気づかう国民性ということもあり電動スライドドアやイージークローザーの装備が重視されるのだが、欧州車にはそうしたことをあまり気にしないのである。

もっとも異なる部分がパワーユニット。ドブロ・マキシは1.5リットル直4のディーゼルターボエンジンのみの設定だ。国産のミニバンはほとんどがガソリンエンジンでアルファードやエルグランドの上級モデルが3.5リットルのV6、ベーシックグレードが2.5リットルの直4。アルファードの場合は2.5リットル直4+モーターのハイブリッドも用意される。Mクラスミニバンは1.4リットルハイブリッド、1.5リットルターボ、1.8リットルハイブリッド、2リットル、2リットルハイブリッドと多彩。唯一のディーゼルユニットとなるのが、三菱の『デリカD:5』。ボディサイズはMよりは少し大きくLまではいかないM-Lクラスといった大きさで、搭載されるエンジンは2.3リットルのディーゼルターボである。

総合的に見るとドブロ・マキシは国産車とはちょっと違った雰囲気を持ちつつ、しっかりと荷物も積めて多人数も乗れるクルマが欲しい人にマッチするモデルであると言える。ただし多くの荷物を積むためにはサードシートの取り外しが必要なので、取り外したサードシートを手軽に保管できる環境が必要である。また、デザイン的に国産ミニバンのように、いかつい顔付きではないところも大きな魅力。ユーティリティ性の高いミニバンが欲しいが、国産のあの大きなグリルは…という人にはぴったりだろう。

フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 中野英幸》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 中野英幸》 ガラスのみを開閉できるリヤハッチ(フィアット ドブロ・マキシ)《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 独自のシート配列(フィアット ドブロ・マキシ)《写真撮影 諸星陽一》 フィアット・ドブロ・マキシ《写真撮影 中野英幸》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 取り外しが可能となるサードシート(フィアット ドブロ・マキシ)《写真撮影 諸星陽一》 サードシート取り外し時のラゲッジルーム(フィアット ドブロ・マキシ)《写真撮影 諸星陽一》 セカンドシートはダイブダウンして収納(フィアット ドブロ・マキシ)《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ・マキシ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット・ドブロ・マキシ(7人乗り/メディテラネオブルー)《写真撮影 中野英幸》 トヨタ アルファード ハイブリッド エグゼクティブラウンジ《写真撮影 宮崎壮人》 トヨタ・アルファード・エグゼクティブラウンジ《写真撮影 諸星陽一》 トヨタ アルファード《写真提供 トヨタ自動車》 トヨタ アルファード《写真提供 トヨタ自動車》 トヨタ ノア《写真撮影 中野英幸》 トヨタ ノア《写真撮影 中野英幸》 ホンダ ステップワゴン AIR《写真撮影 山本圭吾》 ホンダ ステップワゴン《写真撮影 山本圭吾》 ホンダ ステップワゴン SPADA《写真撮影 諸星陽一》 日産 セレナ《写真撮影 雪岡直樹》 日産 セレナ《写真撮影 雪岡直樹》 日産 セレナ マルチベッド《写真提供 日産自動車》 日産 エルグランド《写真提供 日産自動車》 日産 エルグランド《写真提供 日産自動車》 三菱 デリカD:5《写真撮影 平原克彦》 三菱 デリカD:5《写真撮影 平原克彦》