日野自動車の経営情報共有会の様子(11月)《画像提供 日野自動車》

円安の恩恵を受けた自動車各社だったが、この1年、世間を騒がせたまさかの出来事も相次いだ。

日本電産では日産出身の関潤社長がCEO職を突如降格、解任されるという不可解なトップ交代を断行、永守重信会長の超ワンマン経営ぶりには唖然とした。また、ホンダでは、現地現物主義の三部敏宏社長の鶴の一声でテレワークを撤廃し、5月の大型連休明けから全社員に “強制出社”を命じたことで在宅勤務に慣れた若手社員らが大慌てした。

◆日野自動車の不正
この1年、そんなことも、あんなこともあった“お騒がせ事件”を取り上げれば切りがないが、今年の自動車業界のワーストニュースランキングの筆頭は、エンジンの排ガスや燃費の試験で数値を偽装するなどの不正が発覚した日野自動車だろう。不正行為が20年以上の長きにわたり、第三者で構成する特別調査委員会の報告書ではパワハラ体質や縦割りが強い「組織風土」が諸悪の根源と指摘。不正を見て見ぬふりで「止めよう」としなかった歴代の経営陣もその一端を担っていたとは呆れ返る。

しかも、日野の親会社のトヨタやスズキなど自動車メーカー5社が共同出資する「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」が、そのメンバーから日野を除名した。それだけ悪質な不正を続けていたとみられるが、同業他社が集まって結成された組織で、不祥事が発覚した企業側から進退を申し出る前に、いきなり“勘当”とも受け取れるレッドカードの厳しい処分を下すという例は珍しい。トヨタの子会社に対する信賞必罰の在り方を巡っても波紋が広がった。

そのトヨタも初の本格量産の電気自動車(EV)『bZ4X』を、共同開発したスバルの『ソルテラ』とともに、5月に鳴り物入りで発売したが、その直後、走行中にタイヤが脱輪する恐れがあるとして生産と出荷を停止するハプニングが起きた。しかも不具合の原因が判明するまで3か月以上も費やすなどEV量産化への品質管理の課題も浮き彫りになった。脱炭素社会に向けて相変わらずハイブリッド車(HV)が主軸のトヨタも、bZ4Xの投入を皮切りにEV戦略の遅れを取り戻すつもりが、出鼻をくじかれた格好だ。

◆日産サクラと三菱eKクロスEVはイヤーカー三冠
国内のEV市場は、韓国・ヒョンデが12年振りに新型EVで日本市場に参入したほか、中国BYDも23年1月に日本向けにEVを発売すると発表。さらにベンツやフォルクスワーゲン、ボルボなどの欧州勢も攻勢を強めている。それでも国内勢では、日産と三菱が共同開発し、6月に発売した軽自動車の新型EVの日産『サクラ』と三菱『eKクロスEV』に熱い視線が注がれた。値上げ前の希望小売価格は、政府の補助金を活用すると180万円前後で購入できるのも魅力的だ。

トヨタの『クラウン』やスズキの『アルト』、マツダの『CX-60』など話題の新車が数多く発売された中で、日産サクラと三菱eKクロスEVは、自動車ジャーナリストらが選ぶ「日本カー・オブ・ザ・イヤー」や「RJCカーオブザイヤー」、それに「日本自動車殿堂カーオブザイヤー」を受賞するなど、今年の大賞を総なめにして “三冠王”に輝いたのはあっぱれだった。

日野自動車:新しい組織体制の概略図(12月)《画像提供 日野自動車》 日産サクラ《写真撮影 雪岡直樹》 三菱eKクロスEV《写真撮影 雪岡直樹》 トヨタbZ4X《写真撮影 中野英幸》 トヨタbZ4X《写真撮影 中野英幸》 トヨタbZ4X《写真撮影 中野英幸》 トヨタbZ4X《写真撮影 中野英幸》 スバル・ソルテラ《写真撮影 中野英幸》