ジープ グランドチェロキーL サミットリザーブ《写真撮影 中村孝仁》

このところ日本の社会が富裕層と貧困層に大きく2分されて、昔でいう中間層という部分が少なくなっている気がしてならない。

このことは自動車の価格にかなり顕著に表れている。特に輸入車。というのも日本と違ってヨーロッパにしてもアメリカにしても、所得はじわじわかもしれないが向上して、それに伴ってモノの値段が上がっている。つまり自動車の値段は確実に向上していて、その価格が日本市場でも反映されているわけなのだが、日本はというとここ何年かはもうわからないが、少なくとも所得の向上はなく、むしろマイナス方向に向かっているといっても過言ではない。一方で輸入される商品は本国の価格がそのまま反映されてしまうから、例えば10年前よりも所得が下がっているような人(私です)にとって、今売られている輸入車の値段はとてつもなく高いものと感じてしまうのである。

例えばハイエンドのモデルなど、今となっては軒並み1000万円を超えるモデルがざら。これが超が付くハイエンドになるとほとんどマンションの価格と変わらない。まさに走る不動産と化している。

グランドチェロキーについに登場したハイエンド仕様
ジープというブランドはこれまで間違ってもハイエンドのモデルを作るようなブランドではなかったのだが、ついにアメリカでいうところのハイエンド、即ちキャデラックやリンカーンの牙城を揺るがすモデルを投入するようになった。それに伴ってか、ブランドの認知度と訴求力の高さは世界的にも非常に高くなってきて、販売も絶好調だ。

中でも『グランドチェロキー』は先代モデルでは数多あるライバルを押しのけて、いわゆるミッドサイズのSUVの中ではダントツの販売を誇っていた(日本市場)。因みにライバルとは、BMW『X5』であり、ポルシェ『カイエン』あるいはボルボ『XC90』などで、これらのモデルはこのジャンルでは完全なハイエンドのモデルだった。したがってどれをとっても1000万円級のプライスタグをつけている。

そのグランドチェロキーが新しくなり、元々は決してハイエンドのモデルではなかったのだが、ついにハイエンドの仕様を投入してきた。それが今回の「サミットリザーブ」と呼ばれるグレードのモデルである。すでに日本市場ではベースモデルとなる「リミテッド」については紹介した。新しいグランドチェロキーは「グランドチェロキーL」の名前が示すように、いわゆるロングホイールベースのモデルで、ライバルと比べても特に全長でかなり大柄なボディを持っている。それによって構築される室内空間は確実にライバルを凌駕し、使い勝手においてもやはり申し分ないのだが、物理的にこのサイズはダメ…というユーザーは少し待てば旧型と同じ2列仕様のモデルも登場する。

ジープの域を超えた高級感
さて、その最上級の3列仕様6人乗りのグランドチェロキーLは、過去のジープでは想像もつかないほど高級感にあふれた内容を見せる。リミテッドでもとりあえず十分な高級感を味わえたのだが、サミットリザーブはその域を超えた。つまりジープというブランドの高級感ではないということである。アメリカの高級車と言えばこれまではキャデラックとリンカーンと相場は決まっていたのだが、新たにジープを入れる必要が出てきたと感じる。とりわけ内装に使われている素材はかなり入念に吟味されて、単に本革とウッドというほど単純なものではない。オーディオにしても老舗ブランドのマッキントッシュを採用するあたりに力の入れ具合を見て取ることができる。

ドライブトレーンに関してはベースグレードのリミテッドと何も変わらない。エンジンは3.6リットルのペンタスターV6が採用されて、ここだけは残念ながら時間の止まった状態と言わざるを得ないが、それとて性能的に特段不満が出るものではない。サミットリザーブの最大の特徴はコイルサスペンションのリミテッドに対してエアサスを採用している点である。

オートに入れておく限り、快適なことこの上なくこの点でもジープの域を超えたといってよい。そしてスポーツをチョイスすると車高が下がり、ステアリングも手ごたえのある重さに変化するが、この乗り味がリミテッドに近いものである。勿論、リミテッドの場合乗り味はそうであっても、高回転まで引っ張り上げるようなエンジン/トランスミッションのセッティングではない。要は足の感触がサミットリザーブのスポーツに近いということである。

999万円もバーゲンプライス
このサミットリザーブ、これだけうまい具合に高級感を演出しているにもかかわらず、価格はギリギリ1000万に届かない999万円にとどまる。もちろん今となってはとんでもなく高い価格帯のモデルになってしまったのだが、ライバルのハイエンドのプライスタグと比べた場合はまさにバーゲンプライスであり、これを本気で購入検討する人々にとってはちょうどよい高級感なのかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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