フォルクスワーゲン ID.BUZZ AD のプロトタイプ(IAAモビリティ2021)《photo by VW》

フォルクスワーゲンは9月6日、ドイツで開幕したIAAモビリティ2021において、『ID.BUZZ AD』(Volkswagen BUZZ AD)のプロトタイプを初公開した。

ID.BUZZ ADの「AD」とは、「Autonomous Driving(自動運転)」を意味する。フォルクスワーゲンは2022年、新世代EVの「ID.」ファミリーのミニバン、『ID.BUZZ』を発表する予定だ。このID.BUZZをベースにした自動運転車が、ID.BUZZ ADのプロトタイプとして、IAAモビリティ2021で先行公開された。

◆2017年のコンセプトカーは航続550km以上

フォルクスワーゲンは2017年1月、デトロイトモーターショー2017において、EVコンセプトカーの『I.D. BUZZ』を初公開した。I.D. BUZZは、多人数が乗車できるEVマイクロバスを提案していた。

ID. BUZZのデザインは、伝説になっている『タイプ2バス』、愛称「ブリー」(米国の愛称は「マイクロバス」)のDNAを継承している。I.D. BUZZの車台には、フォルクスワーゲンの新開発の電動車向けモジュラープラットフォーム「MEB」を採用した。ボディサイズは、全長5048mm、全幅1976mm、全高1963mm、ホイールベース3300mmだ。

EVパワートレインは、前後に搭載するモーターが最大出力204hpを発生し、最高速160km/h(リミッター作動)の性能を発揮する。バッテリーはリチウムイオンで、蓄電容量は48kWhだ。大容量の111kWh仕様の搭載も可能。1回の充電での111kWh仕様の航続は、WLTP計測モードで550km以上の性能を備える。I.D. BUZZは、出力150kWの急速チャージャーが利用できる。バッテリーの80%の容量なら、蓄電容量48kWh仕様なら15分、111kWh仕様なら30分で充電が完了する。

◆ID.BUZZ ADはVWグループとARGO AIが共同開発する自動運転シャトル

ID.BUZZ ADは、フォルクスワーゲングループと戦略的パートナーのARGO AIが、共同開発している自動運転シャトルだ。フォルクスワーゲングループは2030年までに、自動運転シャトルフリートのシステム機能を開発し、 それらの一部を所有し、モビリティサービスとファイナンス関連商品を提供する範囲を拡大する。完全な自動運転車により運営される「サービスとしてのモビリティ(MaaS)」と「サービスとしてのトランスポート (TaaS)」は、フォルクスワーゲングループの新戦略「NEW AUTO」の不可欠な部分になるという。

フォルクスワーゲングループは、ドイツ・ミュンヘンでパイロットプロジェクトを実施しており、最初の自動運転バスをテストしている。ドイツ、中国、米国の都市でも、同様のプロジェクトを展開する予定だ。フォルクスワーゲングループは2025年、欧州で最初の自動運転モビリティサービスを提供する計画で、その後、米国が続く。2030年までに、ヨーロッパの5大市場だけで、サービスとしてのモビリティ(MaaS)の総市場規模は、700億ドルに達する見込みという。

ID.BUZZ ADは2025年、フォルクスワーゲングループのモビリティサービスプロバイダーの「MOIA」が最初に導入し、欧州で最初の自動運転モビリティサービスを開始する予定だ。2025年にドイツ・ハンブルクで開始されるライドプールサービスにおいて、ID.BUZZ ADは、乗客を目的地まで運ぶことになる。

◆将来登場するID.BUZZをベースにカメラやLIDARセンサーを搭載

ID.BUZZ ADは、将来登場するID.BUZZをベースに、カメラ、LIDARセンサー、レーダーセンサーを搭載する。車体に黒と白のカモフラージュが施されているプロトタイプ車両は、5台製作された。ハイルーフ構造となっており、地図、ハードウェア、ソフトウェア、クラウドサポートインフラストラクチャを含む自動運転システムを開発していく。

ID.BUZZ ADのプロトタイプには、ARGO AIの自動運転システムとして、複数のセンサー、ソフトウェア、コンピューターが搭載されており、車両の周囲を360度認識し、歩行者、自転車、他の車両の動きを予測し、エンジン、ブレーキ、ステアリングを操作する。経験豊富なドライバーのように、車両が安全かつ自然に動くようなシステムを目指すという。

ARGO AI独自のセンサーの「Argo Lidar」は、ID.BUZZ ADのルーフにレイアウトされ、400m先の物体を検出できる性能を持つ。特許取得済みのガイガーモード技術は、最小の光粒子を検出できるため、ブラックカラーの車両など、反射率の低い物体でも検出できるという。車両全体に搭載された6台のLiDAR、11台のレーダー、14台のカメラで構成されたシステムは、ドライバーよりもはるかに多くの物体を識別できる、と自負する。

フォルクスワーゲン ID.BUZZ AD のプロトタイプ《photo by VW》 フォルクスワーゲン ID.BUZZ AD のプロトタイプ《photo by VW》 フォルクスワーゲン ID.BUZZ AD のプロトタイプ《photo by VW》 フォルクスワーゲン ID.BUZZ AD のプロトタイプ《photo by VW》 フォルクスワーゲン I.D. BUZZ(コンセプトカー)《photo by VW》 フォルクスワーゲン I.D. BUZZ(コンセプトカー)《photo by VW》 フォルクスワーゲン I.D. BUZZ(コンセプトカー)《photo by VW》 フォルクスワーゲン I.D. BUZZ(コンセプトカー)《photo by VW》 フォルクスワーゲン I.D. BUZZ(コンセプトカー)《photo by VW》 フォルクスワーゲン I.D. BUZZ(コンセプトカー)《photo by VW》 フォルクスワーゲン(IAAモビリティ2021)《Photo by Peng Dawei/China News Service via Getty Images/ゲッティイメージズ》