日産 ノートオーラ 4WDの安定性の高さは感動的。加速減速、ターンイン、コーナリング中の切り増し、コーナー中のブレーキなど、挙動がブレて不安定になる気配がない。《写真撮影 中野英幸》

2021年6月15日に発表された、日産の新型コンパクトカー『NOTE AURA(ノート オーラ)』。ノートをベースに、こだわりのアイテムを満載し、e-POWERもさらにパワーアップ。「プレミアムコンパクトカー」として仕立て上げられたクルマだ。

今回、このノートオーラに試乗することができた。その模様をお伝えしていく。

◆「一見ノート」だがその中身は「別物」


ノートオーラは、ベースのノートと同じく、Bセグメントの2列シート5人乗りのコンパクトハッチバックだ。ただし、標準のノートに対して、全幅を片側20mm広げて3ナンバーサイズとしている。また、17インチタイヤを装着(樹脂加飾付き)し、専用のエクステリアパーツで加飾もされている。

正直なところ、ぱっと見はノートの新グレードのようにも見えるが、内装のクオリティがノートとは別格で(詳細は後述する)、ノートとは「別物」と考えた方がよさそうだ。先代ノートの上級グレードだったメダリストも、標準車よりも音振性能の向上が施されていたが、ノートオーラは、それよりもずっと上級アイテムを織り込んでいる印象だ。

◆「高級車」の装備が施されたインテリア


運転席目の前にある、12.3インチのフルTFTメーターは、サイズも十分に大きくて視認性が良く、また、表示モードも好みに応じて選択できる。本革ステアリングも標準装備だ。ダッシュボードやセンターコンソールを覆う木目調パネルは、木目の凹凸を表現した微細加工を施し、艶を抑えた表面となっており、モダンリビングの元祖、初代『ティアナ』にあった木目ダッシュボードのようだ。標準ノートでは樹脂パネルだったので、ノートオーラの方が圧倒的に上質に見える。

シートの形状自体は、標準ノートと同様、スパイナルシート(あえて猫背にして疲れにくい形状)ではあるが、シートの表皮や、ウレタン素材を3層構造(30ミリのソフト層を追加)にするなど、触感と座り心地が改善されている。フーガやシーマといった上級車のウレタン積層構造を採用したそうで、コストがかかっているだけあって、座り心地もソフトでよい。


インテリアで最も注目のアイテム(コストも最もかかっている)は、BOSE製のパーソナルプラスサウンドシステムだろう。ツイーターが2基(Aピラー)、165ミリのワイドレンジスピーカーが2基(前席足元)、ヘッドレストの左右に2基の60ミリスピーカー(運転席助手席それぞれで計4基)、合計で8つのスピーカーを駆使し、前席で最も良い音質になるよう、音場が作り込まれている。「バーチャルオーディオテクノロジー」と呼ぶらしい。

体感させていただいたが、運転席で聞く音の臨場感が半端なく、しかも、ヘッドレストからの音がちょうどよい塩梅で届くため、音楽を聴いていて、実に心地がよい。


BOSE担当者によると、「低音は低い位置からでも届きますが、中高音は、耳の高さで鳴らす方が、最も良い音が聞こえる。ノートオーラでは、ヘッドレストという、これ以上ないベストな位置にスピーカーを設置することができた」という。このBOSEシステムは、ぜひもっと採用車種を広げてほしい、と思った。

◆4WDの安定性の高さは「お見事」


走り始めて気がつくのが、運転席付近の静粛性の高さだ。ノートも十分に静かだったが、ノートオーラはそれをはるかに凌ぐ静粛性だ。具体的には、フロントおよびサイドガラスを透過する音が、ノートと比べて圧倒的に静かであり、これは、フロントガラスの中間膜に遮音性能の高いものが織り込まれていることによるものだ。後席も「無音」とは言えないが、静かになっており、走行中でも前後席の間で、後席の人が身を乗り出さずとも問題なく会話ができる。

パワートレインは、e-POWERの最大出力を18%アップ(85kW→100kW)、最大トルクを7%アップ(280Nm→300Nm)させてきた。制御ロジックの改良によって実現したそうで、その気になればノートもすぐにできるそうだ(もったいぶらずにやっていただいたい)。しかしフィーリング上は、ノートとの加速性能の違いを感じられなかった。むしろノートオーラは音振が良い分、穏やかにも感じたほどだ。


ちょっと感動したのは、4WDの安定性の高さだ。加速減速、ターンイン、コーナリング中の切り増し、コーナー中のブレーキなど、挙動がブレて不安定になる気配が一切ない。常に安定しているので、とにかく運転がしやすい。かといって、2WDが「ダメ」なのではなく、コーナーでの軽快感は2WDの方があり、一人ドライブならば2WDの方が好ましくも思える。ちなみに、2WDは車重1260kg、4WDは1370kgと、110kgもの差がある。

WLTCモード燃費は、2WDが27.2km/リットル(市街地26.9、郊外29.6、高速25.9)、4WDが22.7km/リットル(市街地21.8、郊外24.9、高速21.8)を達成する。ベースのノートの燃費数値に対しては1.0km/リットルほど落ちはするが、トップクラスで良い燃費性能だ。

パワートレインだけでなく、17インチタイヤによるヨレの少ないしっかりした走りや、4WD制御による挙動安定性に関しても、もったいぶらずに、ベースのノートにもそのまま流用して欲しい、と感じた。



◆「ノート」と冠するのがもったいない!?

ノートオーラの車両本体価格は、2WDが261万300円〜269万9400円。4WDは286万8800円〜295万7900円。標準ノートに対しては、40万〜50万円ほど価格がアップしている。今回試乗させていただいた車にはさらに、メーカーオプションであるナビゲーションシステムやSOSコール、ETCユニット、BOSEパーソナルプラスサウンドシステム、プロパイロット1.0、プロパイロット緊急停止支援システムなど、およそ50万円相当のオプションが備わっていた。

これらは、セットパッケージとなるので、若干割安にはなるが、ひと通りオプションを揃えると総額350万円以上にもなる。Bセグコンパクトカーであることを考えれば、もはや輸入車の価格だ。


マーケット担当者によると、ノートオーラが狙うユーザーは、CセグメントやDセグメントの国産車に乗っていたダウンサイザーだという。これらのユーザーの多くは、トヨタ『プリウス』や、小さめの輸入車といったコンパクトプレミアムカーへと流れるそうで、これらのユーザーにあわせ、装備や内装のつくり、走りなどは上級車の満足感を得ながらボディはコンパクトとしたノートオーラで、ダウンサイザーシェアの奪取を狙っていくそうだ。

ノートオーラは、ノートに毛が生えた程度のクルマでは全くない。いっそのこと、冠に付いたノートを切り取り、「オーラ」という名称にして売り出す方が、ノートのイメージを引きずらず、すっきりするようにも思えるが、ここには「コンパクトカーナンバー1を奪取したい」というメーカー側の事情もあるのだろう。

「ちょっといいクルマに乗りたい、でも大きなクルマはもう嫌」という方には、ノートオーラはベストチョイスな一台だ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

吉川賢一|自動車ジャーナリスト
元自動車メーカーの開発エンジニアの経歴を持つ。カーライフの楽しさを広げる発信を心掛けています。

日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 静粛性も高く、なおかつ乗り心地も良い。BOSE製オーディオで、ゆっくりとお気に入りの音楽を聴きたいと感じられる《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ の2WD。4WDよりも110kgも軽いため、軽快なハンドリングだ。《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 12.3インチのフルTFTメーターは、サイズも十分に大きくて視認性が良く、また、表示モードも好みに応じて選択できる《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 BOSE製のパーソナルプラスサウンドシステム。ヘッドレストからの音がちょうどよい塩梅で届くため、音楽を聴いていて、実に心地がよい。デザインもクールだ。《写真撮影 中野英幸》 シートの表皮や、ウレタン素材を3層構造にするなど、触感と座り心地が改善されている。写真は、本革3層構造シート。《写真撮影 中野英幸》 後列シートは、足元スペースも十分あり、広くて快適だ。《写真撮影 中野英幸》 12.3インチのフルTFTメーターは、表示を切り替えることができる。ナビモニターを出すことも可能だ。《写真撮影 中野英幸》 第2世代e-POWERを搭載。ノートに対して、最大出力を18%UP(85kW→100kW)、最大トルクを7%UP(280Nm→300Nm)している。《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 205/50R17のタイヤホイール。試乗車は、ブリヂストンのトランザT005Aを装着していた《写真撮影 中野英幸》 薄型LEDヘッドランプ、LEDシーケンシャルターンランプ(兼デイタイムライト)、LEDフォグランプなどはノートオーラ専用。フロントグリルの意匠もメッシュからひし形模様へと変更されている。《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 リア周りには、LEDリアコンビランプを採用した。リアスタイリングはアリアに似ている。《写真撮影 中野英幸》 サイドビューの変更は、タイヤホイールが17インチ化(205/50R17)されたことだ。その分、最小回転半径は5.2メートルになり、ノート(4.9メートル)よりも0.3メートルほどほど大きくなった《写真撮影 中野英幸》 4045×1735×1525(全長×全幅×全高)mmと、全幅が40mmも広がって3ナンバー化した《写真撮影 中野英幸》 ノートオーラに搭載されているe-POWER 4WD。前輪には、最大出力110kW/最大トルク300NmのEM47モーター、後輪には、最大出力50kW/最大トルク100NmのMM48モーターを搭載する。《写真撮影 中野英幸》 日産 ノートオーラ(NOTE AURA)《写真撮影 中野英幸》 吉川賢一氏《写真撮影 中野英幸》