ヤマハ XSR125《写真撮影 中野英幸》

◆125クラスにネオレトロで人気爆発
いま、乗る人が増えている“原付2種”クラスに、ヤマハのラインナップの中でも人気の高い“ネオレトロ”なXSRシリーズの新型が投入される。『XSR125』(税込み50万6000円)だ。

需要の高いセグメントに、トレンドとなっているモダンでクラシックなスタイルなのだから、バイクファンから注目を浴びないわけがない。今春(2023年3月/大阪&東京)のモーターサイクルショーで市販予定車として展示されると大きな反響を呼び、国内デビューをバイクファンらは待ち望んだ。

10月に『YZF-R125』が発売されるまで、ヤマハの125ccクラスにはスクーターしかなく、ミッション付きのスポーツモデルが渇望されてきた。11月10日に『MT-125』を、12月8日に『XSR125』を立て続けにリリースし、バイクファンらの熱き要望にヤマハは応える。

それぞれに個性際立つが、受注状況で特に勢いのあるのは『XSR125』だ。国内年間販売計画台数も3000台で、3機種の中でもっとも多い。

◆「125ccとは思えない」ワンクラス上の車格と装備
前後17インチの足まわりを持つフルサイズボディで登場し、『XSR700』や『XSR900』に通じるオーセンティックなスタイルを持つ。またがると、ライディングポジションにゆとりがあり、125ccクラスとは思えない本格派のムードを感じる。

まず、車体が細すぎない。樹脂製カバーをまとった容量10リットルの燃料タンクは、ニーグリップがしやすいようエグリの入った形状ながら、安心感や優れるフィット性が得られるよう最低限のボリュームを持たせているし、シートの座面も狭すぎて窮屈なんてことがない。

幅広なバーハンドルはアップライトな乗車姿勢をつくりつつも、上半身が緩やかに前傾し、ステップも若干ながらリヤ寄りに設定されている。タックロール調のダブルシートが硬めのクッションを採用していることも含め、ヤマハらしいスポーツマインドをくすぐるライポジと言える。

シート高は810mmと、数値的には少し高めの印象を持つかもしれないが、サイドカバーの張り出しがなく、地面におろす足をステップが邪魔しないことから、身長175cmの筆者だと靴底がしっかりと着地し、足つき性に不安はない。装備重量は137kgでしかなく、押し引きも軽い。見た目は立派だが、取り回しすると125ccクラスの優位性が際立つ。

シンプルな丸型メーターは日中も見やすい反転LCDで、ギヤポジションや燃料計のほか燃費も表示されるなど機能も申し分ない。

◆走りも上質で落ち着いている
跨った途端に感じた「125ccクラスとは思えない」という印象は、走ってもそのまま引き継いだ。大柄なライポジで車体を操ると、その反応もしっかりと落ち着いていて安心できるのだ。

こう言うと、もたついていたりダルいのでは? と思われそうだが、そうではない。デルタボックスフレームのシャシーは程よい剛性があり、サスペンションもしっかりと踏ん張りがきく。

フロントフォークはインナーチューブ径37mmの倒立式で、130mmのストローク量を確保。アルミ鋳造のハンドルクランプとスチール製のアンダーブラケットを組み合わせ、ハンドリングはクイックでダイレクトだが、ヒラヒラと軽快性を強く主張したものではなく安定志向。

タイヤが『YZF-R125』や『MT-125』よりフロントがワンサイズ太く(110/70-17)、セミブロック調ながらしっとりとした接地感があって上級クラスのスポーツバイクに乗っているかのよう。限界が高く、コンフォート性にも優れている。

◆全域で扱いやすく力強いエンジン
放熱性に優れるアルミ製ダイアジルシリンダーやアルミ鍛造ピストンを採用した水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンも、ワンクラス上を感じさせる。

発進加速からトルクを引き出し、常用回転域のピックアップも元気がいい。全回転域で扱いやすい特性を引き出すため、VVA(可変バルブ機構)を搭載。低速向けと中高速向けのカム(吸気側)が7000〜7400rpmで切り替わり、メーターの「VVA」表示で知らせてくれる。

最高出力15ps/10,000rpm、最大トルク12Nm/8000rpmという数値以上に余裕を感じるパワーユニットになっていて、街乗りやツーリングで不満はないだろう。

◆若者向け、だが昭和世代にも突き刺さる
ターゲットを若者に開発されたが、丸いヘッドライトやメーター、トラディショナルでレトロムードなスタイルは昭和のバイクブームを知る世代にも突き刺さる。

そして、Z世代にはこれが新しく見えるというから、購買層はものすごく広い。冒頭にも書いたが、需要高まる125ccクラスで、このスタイルの良さ。そして、走りや機能面でも申し分なしとなれば、もはやヒットの予感しかない。

先行して発売され、これまで売れ行き好調だった同クラスの人気モデルたちは、いずれも小ぶりな車格。前後17インチのフルサイズボディで勝負に出たヤマハに、賛同するライダーは多くいるはずだ!

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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