フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》

シトロエン『ベルランゴ』、プジョー『リフター』の兄弟車となるフィアットのルドスペース(レジャービークル)『ドブロ』の日本導入が決まり、試乗の機会を得た。

◆ベルランゴとリフターの兄弟車が日本上陸
フィアット ドブロはステランティスのフィアットブランドで販売されるミニバン&コマーシャルビークル(日本仕様はミニバンのみ)。初代は2000年に登場、2010年に2代目となり、2022年に3代目となった。この3代目からはシトロエン ベルランゴとプジョー リフターとの兄弟関係となる。

シトロエンブランドのベルランゴは1996年の発売で、2013年に2代目、2018年に行われた2度目のフルモデルチェンジで現行となる3代目に移行している。プジョーリフターはこの2018年のタイミングで派生したモデルである。2018年はまだ会社組織がPSAであり、シトロエンとプジョーは同一社内の別ブランドであったので、この時点でのフィアット ドブロはまだ2代目のままだ。2019年にFCAとPSAが合併しステランティスとなり、2022年にシトロエン ベルランゴ、プジョー リフターとの兄弟モデルとなったという経緯である。

日本への導入は3代目からで、シトロエン ベルランゴ、プジョー リフターの2019年10月から。当初は2列シートのみの設定で、2023年1月18日にシトロエン ベルランゴの、2023年1月20日にプジョー リフターのそれぞれロングモデルを追加。フィアット ドブロは2023年5月の導入で、2列シート5名定員となるドブロと、3列シート7名定員となるドブロ マキシの2タイプが同時に発表された。

◆大きく感じるが『アルファード』と変わらない
試乗車は2列シートのドブロである。エンジンは130馬力、300Nmの1.5リットルディーゼルターボ。ミッションは8速のATで、フロントタイヤを駆動するFF方式を採用する。クルマが大きく見えるので駐車場から道路に出る際にちょっと緊張したが、結構すんなりと動かすことができる。

ドブロの全幅は1850mm、全長は4405mmで、全幅はトヨタ『アルファード』と同じ、全長はアルファードが4650mm程度なので、アルファードよりもずっと短い。最小回転半径はアルファードと同じ5.6mだ。日本で普通にアルファードに乗れるのだから、ドブロが大きく感じるのはちょっと先入観が強すぎるのかもしれない。

◆走りはスムーズ、ブレーキは改善要望あり
1.5ディーゼルターボエンジンは低回転からしっかりとトルクを発生。発進もスムーズだ。最大トルク発生回転数は1750回転と低い。ドブロの車両重量は1560kgと意外と軽く、これも走りをスムーズにしている大きな要因だと言える。

もともとがコマーシャルビークルで荷物を積むことを前提にしているモデルだけに、素の状態での車両重量は抑える必要がある。そして荷物を積んでそれなりに車重が増しても走ることができるトルクが必要となるわけだが、必要なのはエンジンのトルクだけではない。同時に重量の増した状態のドブロの速度を落とすブレーキも必要となるのだ。このブレーキがちょっとくせもの。空荷の状態では初期制動力が強めで、いわゆるカックンブレーキ気味(あくまでも気味レベルである)で、センシティブな操作が必要。ここはちょっと改善してもらいたい部分だ。

乗り心地やノイズにはとくに問題は感じない。空荷のコマーシャルビークルだと、乗り心地がピョコピョコと跳ね気味になるものだが、そうした動きもなくしっかりセッティングされている印象。シンプルな内装で、そしてディーゼルエンジンではあるが、ノイジーという感じは受けなかった。

ラゲッジルームはさすが元コマーシャルビークルという印象。フラットなフロアと切り立ったサイドパネルは圧巻。セカンドシートは3人分のスペースで、それぞれが独立して前倒しでき、フラットにラゲッジルームを拡大できる。2列シートのドブロは定員乗車状態で597リットルのラゲッジルームを確保。セカンドシートを前倒しした際のルーフぎりぎりまでのラゲッジルーム容量は2126リットルとなる。

◆7人乗り、ロングボディのドブロ マキシ
7名定員のドブロ マキシはホイールベースが190mm、全長が365mm長い。フロントセクションは同一なので、リヤオーバーハングを175mm延長していることになる。乗用車のパッケージングではリヤオーバーハングは悪であり、伸ばすような設計は滅多に行わないが、そこはさすがコマーシャルビークル。思い切って伸ばしているというわけだ。

今回は試乗できていないが、ホイールベースが伸ばされているということは直進安定性が向上、乗り心地もしなやかになっていると思って間違いないだろう。ロング化による車重のアップは100kg。もちろん動力性能に影響はあるだろうが、男性2名増えるほどの車重増加ではなく、元々の車重が約1500kgなので割合的にはそれほどでもない。

7名定員のサードシートはリヤアクスル上に配置される。シートは前倒しが可能なだけでなく、脱着も可能。1脚分の重量は14kgで、ちょっと重いがどうにかひとりでクルマからおろすことができるレベルだ。外したシートはそのままの状態で安定していて、リビングに置いて座ることもできそう。ただし、シートバックに身体をあずけると倒れてしまう。

7名定員のサードシートを取り外した際のラゲッジルーム容量は850リットル。さらにセカンドシートを前倒しした際のルーフぎりぎりまでのラゲッジルーム容量は2693リットルとなる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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