これまでレース用パーツの開発などを行ってきたTRDだが、実はラリーをはじめ、幅広い競技用パーツの提供をしている。その一部であるBAJA用オフロードマシンとタイの国内ラリーを戦うトヨタ『C-HR』をレポート。(2022ワークスチューニンググループ試乗会。11月10日、モビリティリゾートもてぎ)
◆競技用エンジンやECUでダート競技も支えている
TRDはトヨタ・レーシング・ディベロップメントの略。その名の通りトヨタのレース部門的な役割で、レースを戦のと同時にレース用のパーツ供給や、チューニングパーツの供給などを行ってきた。現在はトヨタカスタマイジング&ディベロップメントのTRD部門として活動している。そこではSUPER GTやスーパーフォーミュラのマシン開発なども行っているが、競技用のエンジンの開発と供給なども行っている。
今回の2台はいずれもTRD-8ARエンジンが搭載されている。レクサス用2.0L+ターボエンジンである8AR-FTSをベースにTRDで競技用に進化させたもので、C-HRに搭載されているエンジンはベースとなる仕様のもの。ノーマルでは235ps/35.7kgmの出力が、純正タービンのまま272ps/48.9kgmまで高められている。制御は専用LINK ECUでTRDでマッピングを行い、最適なスタートダッシュができるローンチ制御、ターボラグを解消するアンチラグ制御、アクセルを踏んだままシフトアップが可能になるフラットシフト制御などが行われている。
このエンジンが使われているC-HRはタイの国内ラリー選手権で2022にチャンピオンを獲得したマシン。ミッションは5速シーケンシャル。もちろん4WDで強烈なトラクションを発揮する。今回特設ダートコースで助手席のへの試乗となったが、C-HRとは思えない強烈なトラクションとコーナリング性能を発揮。エンジンは幅広くパワーを発揮して、どの速度域からも強い加速を生んでいる。
もう1台は「TRD Hilux DESERT RACE SPEC」と名付けられたマシンで、BAJA1000を戦うレーシングカーだ。BAJA1000とはメキシコのバハ・カリフォルニア半島で行われるデザートレース(ダート路面)で、約1000マイル(1600km)をピットストップしながら一気に走り切るレース。デザートレースの元祖として格式の高いレースで、日本人初のクラス優勝を果たしたことのある塙郁夫選手のレースカーそのものであり、ドライビングも塙選手が行い、その助手席に乗る機会に恵まれた。
こちらのマシンもエンジンは8ARだが、TRDによってよりハイチューニングが行われ、タービンサイズをアップ。407ps/51.0kgmを発生。ミッションはトルコン式オートマチックで、ATでなければこのハイトルクに耐えられないのだという。ATの制御はTRDのオリジナルECUで行われている。
オートマだが走り出すと完全ロックアップ仕様なので、まるでシーケンシャルドグミッションのようなソリッド感が伝わってくる。強大なトルクとパワーは大型なボディをあっという間に強烈なトラクションで加速させていく。ストロークがたっぷりとあるサスペンションは大きなギャップでも緩やかに吸収し、タイヤのグリップに変えていってしまう。
TRDではこういった競技向けにエンジンやミッション、ECUの提供などのサポート行っている。今後はそれらに加えて、さらにラリー向けのサスペンションキットの開発なども行っていく。TRDはこれからも幅広くモータースポーツを支えていく、メーカー直系サプライヤーなのだ。
【TRD】ラリーレイド競技を支えるメーカーの底力…ワークスチューニング試乗
2022年11月27日(日) 10時00分
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