日産 エクストレイル 新型《写真撮影 中野英幸》

2022年7月20日、日産自動車はミドルクラスSUV『エクストレイル』の新型(T33型)を発表、同日より販売を開始した。北米では2020年から、中国でも2021年からガソリンモデルが発売されていたT33型だが、日本市場向けには、全車VCターボe-POWERで発電するe-POWERを搭載したハイブリッドSUVとしてデビューする。4WDには、EVの『アリア』と同じく4輪の駆動力制御を行うe-4ORCE(イーフォース)を採用。この新型エクストレイルに先行試乗した。

タフギアに磨きのかかった四角いボディ!! インテリアも圧巻の上質感
新型エクストレイルのコンセプトは、歴代モデルが引き継いできたDNAである「タフギア」と、先代T32で目指した「最先端技術」の継承、そして新たに「上質感」を加えた姿だ。悪路や雪道もこなす本格SUVとするため、新技術であるVCターボe-POWERと最新のCMF C/Dプラットフォーム、そしてe-4ORCEを採用してきた。日産がいま持てる技術をフル活用したこの構成は、海外市場に先駆けて、日本での登場となった。

T33型のデビューから2年近く経っての日本登場の理由は、新型パワートレイン開発が難航したことが理由とのこと。それでも、この構成をなんとしても日本市場でデビューさせたかったという日産の意気込みは、日本のファンにとって非常に嬉しいことだ。

ボディサイズは全長4660(-30)×全幅1840(+20)×全高1720(-20)、ホイールベースが2705mm(±0)(カッコ内は先代比)。先代に対して、ボディシェイプが四角くなったことで少し大きくなった印象を受けるが、数字の上ではさほど変化はなく、むしろ全長は短くなっている。しかしながら、車室内のパッケージングの工夫で、後席スペースはより広くなり、またラゲッジも荷室長を増やして、開口部も拡大したため、積載量はむしろ増加したという。

特筆すべきはインテリアの進化ぶりだ。アリアや『ノート』『ノートオーラ』のモノリス(2枚の液晶を繋げたように見せたディスプレイ)とは違うオーソドックスなタイプだが、12.3インチの液晶メーターと、同じく12.3インチのナビゲーションモニター、そして、10.8インチの大型ヘッドアップディスプレイ(以下HUD)は、トヨタ『RAV4』などと比べてもサイズが大きく、見やすい。センターコンソール周りや、ダッシュボード周りなど、つくこみの良さを感じる。

上級Gグレードのシートには、「テイラーフィット」という新素材の人口皮革が使われており、もっちりとした触感で実にいいシートに感じる。通常のファブリックシートも、簡素な見た目の割には、形状がよいためか座り心地も悪くはない。海へ山へとタフに扱うならば、あえて革素材に拘らず、ファブリックを選ぶというのも大いにアリだろう。

VCターボ発電は静粛性のため
試乗したのは、中間の「X」グレード、エンジンは1.5リットルのVCターボe-POWER、もちろんe-4ORCE(4WD)だ。タイヤは235/60R18のFALKEN製(ZIEX ZE310A ECORUN)を装着している。

手触りの良い本革巻きステアリングを握って、日産追浜工場に隣接するGRANDRIVEで試乗。低速でゆっくりと走りだしてまず気づくのは、車内の静粛性の高さだ。18インチタイヤの恩恵もあるが、路面の凹凸を感じさせないソフトな乗り出しの印象で、「いいクルマ感」がヒシヒシと伝わってくる。この静粛性はアリアに次ぐレベルの高さだ。

そこから60km/hまで加速しても、(メーター内の表示によればエンジンは回転しているのだが)エンジン音は聞こえず、さらに踏み増して100km/hまで加速すると、ようやくVCターボエンジンの高鳴る音が聞こえる。先代E12ノート時代のe-POWERでは、エンジンが始動すると、盛大なノイズでエンジン音が入って辟易したが、そうしたガサツな印象は一切ない。

パワートレインEV技術開発本部エキスパートリーダー(兼)企画・先行技術開発本部 技術企画部 担当部長の平工良三氏によると、通常のエンジンは回転数を上げることで出力を発揮するため、パワーとノイズは比例関係となってしまう。だがVCターボだと、回転数を変えずに圧縮比をコントロールして出力を稼げるので、発電時の静粛性が向上する。これが今回、VCターボを発電用エンジンに採用した狙いだったそうだ。ちなみに、100km/h近くまで2000rpm以下を維持するように設定しているそうだ。

走行性能にまで上質感が与えられた
ロードノイズや風切音もとても静か。e-POWER制御の改良によって、エンジンの作動頻度を下げたことだけでなく、高遮音ボディや吸・遮音材追加、前席遮音ガラス採用など、走行音を徹底的に抑え込んだことで、走行中の室内音は、-3dB(およそ-30%)も静かになったという。圧巻の静粛性の高さのおかげで、エクストレイルの動性能にも上質感が与えられた、といった印象だ。

高速直進性も高く、コーナーでもライントレースがしやすくて、安心感が高い。e-4ORCEの効果もあるそうだが、車体剛性40%アップ、フロントサスペンション横剛性55%アップ、また、従来のコラムEPSからラックEPSへと変更したことで、ステアリング剛性も50%アップさせ、遅れの少ないヨー応答を与えるなど、コンベンショナルで可能な対策もやり切っているという。

e-POWERのレスポンスも期待通りだった。減速から再加速をしたり、コーナーで踏み増しをしても、e-POWERが素早く反応してくれるので、テンポよい運転ができる。ちなみに、e-Pedalは完全停止まではおこなわないが、滑らかに15km/h程度の徐行速度まで減速してくれるので、最後のブレーキ操作だけ行えばいい。

e-4ORCEに関しては、残念ながら、舗装された綺麗な路面であったために、効果を堪能するほどには至らなかった。e-4ORCEは、オン・オフされるような制御ではなく、絶えず介入しているとのことで、ライントレース性が高かったのは、e-4ORCEの恩恵も大きいそう。しかし、せっかくなら効果を実感したい。雪道を含めて、様々な路面で乗りたいと感じた。

RAV4やハリアーよりもお買い得?
新型エクストレイルの車両価格(税込)は、2WDが319万円〜429万円、4WD(全車e-4ORCE)は347万円〜449万円となる。前後バンパーやグリル、ルーフレール、リアLEDフォグ、専用デザインの18インチホイールで武装した「エクストリーマーX」は412万円から、20インチタイヤと専用エクステリア、インテリアを装着した上級仕様の「AUTECH(オーテック)」は、2WDが420万円から、4WDが446万円から。

他メーカーのエントリーグレード、例えば、「RAV4 ハイブリッドX」(362万円)や、「ハリアーハイブリッド」(380万円)と、比べれば、新型エクストレイル(S e-4ORCE 347万円)の方が若干割安といえる。

おそらく売れ筋は、ミドルグレードの「X e-4ORCE」(379万円〜)になると予測される。先代エクストレイルHYBRID(20Xiハイブリッドが362万円)と比べると若干の価格アップとなるが、装備の面でワンランクは上級移行しており、コストパフォーマンスは高い。日産の国内市場を支える一台だけに、今後の受注動向には注目だ。

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