トヨタ アクア 新型《写真撮影 小林岳夫》

『ヤリス』と『アクア』が目指す方向性の違い
『ヤリス』があるのになぜ『アクア』を売り続けるのか。そう思う人がいるかもしれないが、ハイブリッドのキャリアではヤリスの前任車『ヴィッツ』を含めてもアクアのほうが長い。コンパクトハイブリッドの定番として浸透しているという判断なのだろう。

それにヤリスとアクアでは目指す方向性が異なる。欧州Bセグメントをメインマーケットとして小気味良いデザインと走りを与えたヤリスに対し、アクアのライバルは『ノート』や『フィット』などスペース効率に長けた国産コンパクトだと思っている。

それが証拠に2台は同じGA-Bプラットフォームを使いつつ、ホイールベースはアクアのほうが50mm長く、全長に至っては110mmの差があり、逆に全高は15mm低い。おかげで先代同様、小柄ながら伸びやかなフォルムを実現している。

キープコンセプトのエクステリアに対し、インテリアは先代に比べると造形も色調もぐっと落ち着いた。これもヤリスとの差別化が理由のひとつなのだろう。

癒し系コンパクトの一員
そして走りもデザインから受ける印象どおり。1.5リットル3気筒エンジンに2モーターを組み合わせたハイブリッドシステムは共通ながら、キビキビしたヤリス、ゆったりしたアクアという違いがある。

ペースを上げた走りではサスペンションの動きにやや不満が残るものの、移動手段としてクルマを使う人にとっては、穏やかな乗り心地やハンドリングはむしろ好感を持たれるはず。

独断と偏見でカテゴライズしてしまうと、国産車で言えばフィット、輸入車で言えばシトロエン『C3』に代表される癒し系コンパクトの一員と言えるのだ。

この違い、ひとクラス上の『カローラスポーツ』と『カローラクロス』の違いにも通じるものがある。国内マーケットの同一セグメントに複数のラインナップを用意できるのはトヨタならではだが、それだけにユーザーの選ぶ目も大事になりそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

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