バリエーション豊富なCセグメントハッチバック×ディーゼル。個性的な4台を大谷達也氏が解説する

経済性に優れるだけでなくパワフル。そんな特徴をもつディーゼルエンジンを搭載したハッチバックモデルがにぎわいを見せている。コンパクトなボディは取り回しに優れるだけでなく、最先端のクリーンディーゼルエンジンを積むことで、ガソリンモデルに負けないスポーツ性能を発揮する。

そんな「ハッチバック×ディーゼル」に注目し、昨年7月に最新クリーンディーゼル「BlueHDi」が搭載したプジョー『308』、北欧生まれで安全装備が充実したボルボ『V40』、個性派モデルのMINI『5ドアハッチバック』、そして国産車のマツダ『アクセラスポーツ』と4台のCセグメント・ハッチバックを集めた。その特徴、走りをモータージャーナリストの大谷達也氏と南陽一浩氏がレポートする。前編は大谷氏によるインプレッションをお届けする。

◆スポーツカーに匹敵する俊敏さ…プジョー 308 GT BlueHDi

ディーゼルエンジンといえば、回転の上がり下がりが遅いため、スポーツドライビングには向かないというのがこれまでの定説。しかし、「308 GT BlueHDi」はこの常識を大きく覆すモデルだ。

私が308 GT BlueHDiをタイトなワインディングロードで試乗しているときに出会ったのは、軽量かつ俊敏なハンドリングで知られるイギリス製スポーツカー。しかし、308 GT BlueHDiはエンジンの回転数を一定以上に保っていれば即座にトルクが立ち上がるうえ、ディーゼルにしては回転のピックアップもいいので、前述したスポーツカーに大きく劣らない勢いで加速できた。

しかも、ノーズの動きが俊敏で、軽くロールしたコーナー出口でアクセルペダルを踏み込んでもしっかりとしたトラクションがかかるから、後輪駆動にも劣らない勢いでコーナーから立ち上がっていける。こんなとき、アンダーステアがほとんど強まらないことも308 GT BlueHDiの美点といえる。

ちなみに、しばらく件のスポーツカーを追いかけていると、そのドライバーが気を効かせて進路を譲ってくれた。こんなことができる前輪駆動のディーゼルモデルは滅多にないだろう。

◆群を抜くコストパフォーマンス…マツダ アクセラスポーツ 15XD プロアクティブ

日本におけるディーゼルブームの火付け役といって差し支えのないマツダが作ったCセグメントハッチバックがマツダアクセラスポーツ。独自のテクノロジー“スカイアクティブD”は排ガスがそもそもクリーンなことが特徴で、高価で複雑な排ガス後処理装置を不要にしている。

車両価格の203万円は4台のなかで圧倒的に安いが、それは日本車だからというだけでなく、マツダの独自技術があったからこそ実現できたともいえる。

アクセラスポーツの走りはなかなか軽快。これには車重1300kg台の軽量ボディが大きく貢献しているはず。しかもこのボディは剛性が高く、サスペンションの作動をしっかり支える上でも大きな役割を果たしている。足回りの動きはスムーズで乗り心地は快適。ハンドリングも正確で、シャシー性能はヨーロッパ車に匹敵するほどレベルが高い。

排気量1.5リットルのエンジンはディーゼルらしい力強さを備えているが、シングルターボゆえ、過給圧が高まるまでにやや時間がかかり、これが微妙なもどかしさに繋がっている。ただし、価格を考えれば十分に合格点が与えられるだろう。

◆スタビリティにこだわった味付け…ボルボ V40 D4 R-Design ポールスターエディション

ボルボの最新ディーゼルエンジンも優れたパフォーマンスを誇る。最大トルクは308と同じ400Nmだが、最高出力は190psで308を10psしのぐ。その差は明確に体感できるほどではないものの、プジョー同様、エンジンのピックアップが良好で、アクセルを踏み込めばまるで花火が弾けたかのような勢いで加速していく。

V40はシャシーの完成度も高い。ボディ剛性が高いためにサスペンションが的確にストロークし、快適な乗り心地と正確なステアリング特性を実現している。ただし、ハンドリングはあくまでも安定方向で、308ほど軽快なコーナリングを楽しめるレベルには達していない。もっとも、これはどちらがいい悪いではなく、思想の問題。安全性を常に優先するボルボであれば、V40のようにスタビリティにこだわったハンドリングにするのは当然だろう。

先進の運転支援システムを豊富に装備しているのもV40の特徴。安全意識の高さはクラス随一といえる。

◆大人な味付けになったミニ…MINI クーパーD 5ドアハッチバック

ミニは個性のかたまりだ。他ブランドのプレミアムコンパクトが百貨店で売っているビジネススーツだとしたら、ミニはポールスミスのようなデザイナーズブランドが手がけるスーツに似ている。それだけスタイリッシュだし、個性が明確に表れているともいえる。

BMW傘下に入って3代目となる現行ミニはサイズが大きくなっただけでなく、走りの部分でもずいぶんオトナになった。先代までに比べればサスペンションはずいぶんストロークするようになったし、ロールをほとんどしないまま水平移動のようにノーズの向きを変える“ゴーカートフィール”もいくぶん影を潜め、まずまず自然なフォームでコーナリングする。

2リットル直4ディーゼルはスムーズで滑らかなフィーリングが魅力的。パワーもドン! と立ち上がらず、リニアに速度を増していく。静粛性も高い。こうしたエンジンの進化も、ミニが「オトナになった」と感じる所以である。

大谷達也|モータージャーナリスト/AJAJ会員/日本モータースポーツ記者会会員
1961年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に、二玄社に入社し、CAR GRAPHIC編集部に配属。2002年、副編集長に就任。2010年よりフリーランスのライターとして活動を開始。現在は自動車雑誌、ウェブサイト、新聞、一般誌などに記事を寄稿。

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