三菱 アウトランダーPHEV《写真撮影 諸星陽一》

2021年に日本市場に投入された三菱の現行『アウトランダーPHEV』が、2024年10月にマイナーチェンジを受けた。今回の改良では、特にEV関連の機能が強化されており、その詳細を試乗を交えながらお伝えする。

◆ボックス型バッテリーの恩恵
アウトランダーPHEVは、月間販売台数1000台を目標としているが、2024年10月末時点で3400台のバックオーダーを抱える人気ぶりだ。さらに、ヨーロッパ市場への展開も予定されており、PHEVに対する関心が高まる欧州市場での活躍が期待されている。

アウトランダーはPHEVの可能性を日本市場で最初に示したクルマで、その姿勢が間違ってなかったことを今実感するオーナーも多いだろう。現行アウトランダーPHEVのバッテリーは、当初採用していた日産『リーフ』と同様のパウチ型からボックス型へと変更された。これにより、バッテリー容量は従来の20.0kWhから22.7kWhに約10%増加。さらに、冷却効率が50%向上している点が特徴だ。

この変更による恩恵は容量アップだけにとどまらない。パウチ型はバッテリーEVに適した特性を持つ一方で、PHEVのように充電しながら使用する用途には適していない側面があった。ボックス型への変更は、この特性のマッチングを改善する狙いがある。また、EV航続距離はMグレードで87kmから106km、GグレードおよびPグレードでは83kmから102kmへと、約20%向上した。

単位時間当たりの出力も約60%アップし、トータルシステム出力は約20%の向上を実現。急速充電時間も短縮され、80%までの充電にかかる時間は38分から32分と約20%削減された。

アウトランダーPHEVは、前後にモーターを備えたデュアルモーター方式を採用。さらに、三菱独自の「S-AWC」駆動力配分機構を搭載している。今回のマイナーチェンジでは、このシステムの制御速度が0.001秒単位に高速化され、より緻密な制御が可能となった。

加えて、電動パワーステアリングのセッティングやサスペンションのバネレート変更、減衰力発生バルブの改良が施されている。さらに、タイヤが従来のオールシーズンタイヤからブリヂストン・アレンザのサマータイヤに変更されたことで、走行性能が向上している。

◆アクセル操作時のフラット感の増加
試乗で感じたのは、アクセル操作時のフラット感の増加だ。駐車場内で走り始めた際、アクセル操作が少し雑でもピッチングが強くなることはなく、水平を保ったまま滑るように走行できた。段差乗り越え時のショックも少なく、非常にスッキリとした印象を受けた。

試乗では、まず西湘バイパスを走行。粗い路面が特徴のこの道路で、新型アウトランダーPHEVは快適な乗り心地と高い静粛性を実現していた。試乗車は最上級グレード「Pエグゼクティブパッケージ」で、ヤマハと共同開発した「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」を搭載。このオーディオシステムが、静粛性の向上に一役買っている。

オーディオがなぜ? という疑問を持つ方もいるだろう。じつはオーディオの性能を向上させるため、ドアまわりのデットニングなど遮音性や防音性を高める処理が行われている。これが上級オーディオの装着が静粛性向上に役立っている要因である。

箱根ターンパイクでは、アウトランダーPHEVの優れたハンドリング性能を体感した。アクセルを緩めるだけで回生ブレーキによる荷重移動がスムーズに行え、高速ワインディングでも安定した走行が可能だった。もちろんS-AWCの効果も見逃せない点。しかもモーターを制御するためS-AWCの制御スピードも高く、正確に機能する。登り勾配では、バッテリーが切れても十分な加速感を維持しており、PHEVならではのエンジンの恩恵を十分に感じることができた。

箱根での撮影と試乗を終えた後、帰路では回生による充電を心がけた。走行モードを「チャージ」に設定し、回生量をコーナーごとに調整。5kmの下り勾配で11km分のEV走行可能距離を稼ぐことができた。勾配の条件を考慮しても、この回生性能の高さは特筆に値する。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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