トヨタ クラウンスポーツ Z《写真撮影 中村孝仁》

◆スポーツの名にふさわしいのか?
その名をトヨタ『クラウンスポーツ』(正確には「クラウン(スポーツ)」)という。既にクラウンは2022年の発表時に4種のモデルが存在することが明らかになっていて、すでに「クロスオーバー」と「セダン」が市場に投入されている。

スポーツは第2弾としてデビューしたモデルだが、悩ましいのはそのスタイルや使い勝手等々がスポーツの名に相応しいのか? という問題に突き当たったからだ。何故かというとクロスオーバーの「RS」というグレードに乗った時に、そのクルマがとてつもなくスポーティーに感じたからである。当然ながらスポーツを標榜するならばそれを超える運動性能をはじめとした動的性能を期待してしまうのだが、今回試乗した「Z」というグレードで、それを感じ取ることはできなかった。

このグレードに搭載されるメカニカルコンポーネンツは、2.5リットルの直4エンジンとTHSの組み合わせである。つまりこれまでトヨタが熟成に熟成を重ねてきたハイブリッドシステムということである。それはクロスオーバーの「G アドバンスト」に搭載されているものや、セダンのHEVに搭載されているものと同じである。ただし、セダンはクロスオーバーや今回のスポーツと違ってFRの駆動方式を持つから、そもそもそこで違いがある。

しかし、ともにFWDのクロスオーバーとスポーツでは多少の違いはあっても、基本的にメカニカルコンポーネンツが同じで、発生するパワー/トルクも同じなのだから、少しタイヤの太さが異なっていても、頑張らずに普通に走っている限り、その違いを見出すのはかなり困難である。

◆「今風」のスポーツカー的デザイン
それにしてもスポーツを名乗るクルマのデザインが、かなりというか相当にクロスオーバーと呼ばれるグレードに近似している。もちろん子細に眺めてみれば違いは明白なのだが、私のような「違いの判らない男」にしてみれば、ほぼ一緒。どちらもSUVとしてひとくくりに出来る。しかし、それが今風。つまり今を生きる人にとってこのスポーツはスポーツカー的デザインということになるのかもしれない。

かつて私の若いころ、スポーツカーと言えば低く身構えたデザインで、地を這うような走りを見せてくれた。そんなクルマが今だってないわけではない。エンジンをコックピット背後に積んだ車高の低いスポーツカーは今もある。エンジンが前だって後だって、地を這うような走りが堪能できるスポーツカーだってもちろんある。そうではなくて誰もが手軽に楽しめるスポーツカーの醍醐味というのは、これから先もしかするとこの手のSUV風で少し全体をコンパクトにまとめたデザインのクルマが主流になっていくのかもしれない。まさにSUV風が世の中を席巻している状況を見れば、それは理解できる。

「SUV風で少し全体をコンパクトにまとめたデザイン」と書いたが、これはクロスオーバーと比較した時に感じること。事実ホイールベースはスポーツの方がクロスオーバーに対して切り詰められているし、全長だって20cm以上スポーツの方が短い。前後オーバーハングは正確な数値は解らないが、写真で見比べてみればスポーツの方がこれも切り詰められて、運動性能が良さそうである。というわけだから、少しワインディングなどを攻めてみると回答性の良さや俊敏さを体感できる。だから、こうした走りを比較的好んでするようなドライバーにとっては、スポーツというチョイスが有りだと思う。

クロスオーバーと同じ「RS」という名を持つスポーツも存在するが、こちらはPHEVで、どちらかと言えばモーターにより多くの仕事をさせる仕様になっている(カタログを見る限り)。ただ、実際にはまだ試乗していないので何とも言えないが。

◆普通に使うならクロスオーバーと一緒?
今回はどちらかと言えば日常的な使い勝手と走り(即ち一般道路を普通に走った状況が多い)を主眼に置いてインプレッションしてみたので、正直言って普通に使うならクロスオーバーと一緒じゃない? というか、う〜ん、違いが判らん、ということになってしまったのである。もちろん全長が20cm以上短いことと、車幅が4cm広いことでどちらが日常使いに不利に働くかというと、個人的には4cmの車幅拡大の方が都内や私の住む横浜あたりでも不利に働く印象を受けた。理由は偏に駐車スペースの問題だが。

というわけで個人的な印象としては、スポーツとクロスオーバーの走りの印象の違いが希薄だったということである。RSに乗ってみるとまた印象が変わるのかもしれない。値段は同じメカニズム同士の比較だとスポーツは590万円。一方のクロスオーバーはバリエーションが多く、475万円〜570万円と幅広い。因みにスポーツとはいえ、トヨタのジャンル分けではクロスオーバーもスポーツもともに「SUV」というカテゴリーで括られている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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