フィアット ドブロとルノー カングー《写真撮影 諸星陽一、中野英幸》

日本での販売を開始したフィアット『ドブロ』の真っ向ライバルとなるのが、ルノー『カングー』だ。その違いはどのようなところにあるのだろうか。この欧州ミニバン2車種を項目ごとに比較していく。

◆ボディサイズ、リアハッチ比較
まずはサイズだ。ドブロには3列シートのドブロ・マキシが存在するが、比較は2列シートのドブロとルノー・カングーで行う。

全長はドブロが4405mm、カングーが4490mmでカングーのほうが85mmほど長い。一方でホイールベースはドブロが2785mm、カングーは2715mmでドブロが70mmほど長い。つまり、カングーのほうがオーバーハングが155mm長いことになる。

全幅はドブロが1850mm、カングーが1860mmでカングーが10mm広い。全高はドブロが1800mm、カングーが1810mmで10mm高い。全幅、全高の差は10mmなのであまり感じないだろうから、カングーのほうがちょっと長いボディという印象となる。

ドアは両車ともにフロントがヒンジドア、リヤサイドが左右スライドドアで変わらないが、背面部はまるで異なる。ドブロはルーフ側にヒンジのあるリアハッチ形状だが、カングーはダブルバックドアと呼ばれる左右が非対称の観音開きドアを採用する。

カングーは本国ではハッチバックモデルも存在し、かつてはハッチバックの日本仕様も存在したが、日本のユーザーにはダブルバックドアが人気とのことで、現在はダブルバックドアのみが輸入されている。ドブロはダブルバックドアのように片側だけを開けて荷物の出し入れを行うというようなことができないが、ガラスハッチのみを開閉することが可能となっている。

◆足回り、動力性能比較
両車ともにフロントサスペンションはストラット、リヤはトーションビームで同一。タイヤサイズも205/60R16で同一。両車ともにフロントブレーキはベンチレーテッドディスクだが、リヤブレーキはドブロがソリッドディスク、カングーはベンチレーテッドディスクとなる。

ドブロのパワーユニットは1.5リットルのディーゼルターボのみ。一方カングーは1.5リットルのディーゼルターボと、2リットルのガソリンターボがある。ディーゼルターボのスペックは、ドブロが130馬力/300Nm、カングーが116馬力/270Nmとドブロのほうが力強い。ガソリンターボは131馬力/240Nmとなっている。

組み合わされるミッションはドブロが8速AT、カングーが7速AT。ドブロはエコとノーマルの2モード、カングーはエコ、ノーマルに加えてペルフォ(パフォーマンス)のモードを持つ。ペルフォモードは積載量の多いときなどに使用するものだ。両車ともにマニュアルモードも備える。

WLTCモード燃費はドブロが18.1km/リットル、カングーが17.3km/リットル(ディーゼル)。カングーのガソリンモデルの燃費は15.3km/Lである。

◆シートレイアウト、荷室容量比較
シートレイアウトは両車ともにフロント2席、リヤ3席の5名定員だが、リヤシートのタイプが異なる。ドブロは3席すべてが独立したタイプだが、カングーのリヤシートは左2席と右1席の6対4分割タイプ。どちらも収納時にはクッションが下がるダイブダウンタイプでラゲッジルームの拡大が可能だ。

定員乗車時のラゲッジルーム容量はドブロが597リットル、カングーが775リットル。リヤシート全席をダイブダウンさせた2名乗車時の容量(ルーフまで)はドブロが2126リットル、カングーが2800リットル。ちなみにロングボディのドブロ・マキシの2名乗車時の容量は2693リットルなので、カングーの容量が大きいのがわかる。

◆ドライバビリティ比較
ドライバビリティについては両車に大きな開きはない。どちらのディーゼルユニットも十分に低い回転数からトルクを発生し、力強い走りを手に入れている。大量の荷物を積んで、かなりクルマが重くなっても問題なく走れるように1〜3速のギヤ比は低めに設定されているが、上のギヤは高めで燃費も稼げ、低いエンジン回転で走ることができる。

ドブロはブレーキのタッチがちょっとセンシティブでいわゆるカックンブレーキ気味(あくまでも気味レベル)。20年前から日本で販売し、日本の道路事情も知り、それらをフィードバックしているカングーに分がある部分だ。また、ACCの操作系もカングーがステアリングスポークに付いているのに対し、ドブロはステアリングコラム左側に取り付けられたレバーにあり、操作性が今一歩である。

◆グレード展開と価格比較
ドブロはグレード設定がないモノグレード展開。カングーは黒の樹脂バンパーやハーフホイールキャップを採用し商用車イメージを残したクレアティフと、ボディ同色バンパーやフルホイールキャップを装着したインテンスの2グレードを標準設定。さらに装備を簡略化したゼンを受注生産車として設定している。

ドブロの価格は399万円。カングーのクレアティフとインテンスは同価格で、ディーゼルモデルは419万円でドブロのほうが20万円安い。ガソリンモデルは395万円。ゼンはガソリンモデルのみの設定で384万円となる。

ドブロはジェラートホワイトというボディ色が標準で、オプションとしてマエストログレーとメディテラネオブルーの2色を6万500円のオプションで用意。カングーはクレアティフにジョンアグリュム(イエロー)、ブランミネラル(ホワイト)の2色、インテンスにブラウンテラコッタM、グリハイランドM、ブルーソーダライトM、ブランミネラルの4色を用意。ゼンはブランミネラルのみで、ずれも追加料金は不要だ。

◆ロングボディはドブロのみ、ガソリン仕様はカングーのみ
装備面、ボディカラー面などでドブロがシンプルなイメージを受けるが、ロングボディで7人定員が用意されるのはドブロ。また、同じステランティスのなかで、シトロエンブランドの『ベルランゴ』、プジョーブランドの『リフター』もあり、必ずしもドブロの選択肢が少ないとも言い切れない。ただし、カングーはガソリンエンジンが選べるが、ステランティス系はディーゼルエンジンのみで、この部分の選択は限られている。

フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ。全長1850mm《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロのディーゼルエンジン《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ。3席独立シート《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ。ラゲッジ容量は2126リットル《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 フィアット ドブロ《写真撮影 諸星陽一》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)。全長1860mm《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)の ダブルバックドア《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)。ラゲッジ容量は2800リットル《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)。ACC操作系をステアリングスポーク左側に搭載《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン。左2席右1席の分割タイプ《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ガソリン)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ディーゼル)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ディーゼル)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ディーゼル)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ディーゼル)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ディーゼル)《写真撮影 中野英幸》 ルノー カングー(ディーゼル)《写真撮影 中野英幸》