シトロエン ベルランゴ ロング《写真撮影 中村孝仁》

デビューエディションと呼ばれれる『ベルランゴ』最初のモデルが日本にやってきて3年、今や日本におけるシトロエンのベストセラーの座を確かなものにしている。

そのベルランゴに3列シートを装備したロングバーションがラインナップに追加された。というわけで、標準バーションとあれやこれや比較しながらレポートしようと思う。まず始めに我が家の普段の足車がそのシトロエン・ベルランゴのデビューエディションであることをお伝えしたうえで、具体的にどこがどう進化し、どこがどう異なっているかをお話ししようと思う。

◆3列になって変わったのは、全長とルーフ
端的に異なるのは、当たり前だが室内にシートが2列か3列かという点と、それによって全長が365mm延長されているということで、変更点としてはそれ以外でも以下でもないのだが、それによって微妙な変化があった。大きな違いはルーフで「モジュトップ」と名付けられているいわゆるパノラミックガラスルーフが標準バーションの持ち味だったがロングバーションにはそれがない。「フィール」という受注生産のモデルもモジュトップは付かないが、ロングになるとはじめからそれがない。

理由はモジュトップの場合、最後尾の頭上に比較的大きめの収納スペースがあって結構重宝する(我が家の場合はこの中にドラレコの配線を収納している)。しかし、それがあると3列目のヘッドスペースが稼げないから取り外されたということだろう。フロントの収納は健在だ。

次に大きなセンターコンソールが付いて、そこを通ってエアコンのダクトがリアシートに伸びる。デビューエディションとフィールにはこのセンターコンソールはなく、その代わりシートの間に荷物を置けたり、無理をすればリアシートへの移動もここを通って可能になる。

ただ、リアの空調環境ははっきり言ってよくない。ダクトが通ることで大いに改善されるのだが、ロングの場合やはり3列目はエアコンダクトがないからその点は問題だと思う。そもそも、ベルランゴのエアコンは少々車体の容積に対して力不足だから、ロングになればより一層健在化する可能性がある。

◆サイドスライドドアの開閉が楽になった
標準バーションからロングになって少しびっくりしたのは、サイドスライドドアの開閉が楽になったこと。この問題は以前から懸案事項で、少なくともフィールやシャインに試乗した2021年までは開いたドアを閉めるのに相当に力を込めないとならなかったものが、大幅に改善されている。これは『カングー』でも同じような問題があったそうで、新しいカングーはその点がやはり大きく改善されている。

3列目のシートはそれを使用する状態にした場合、ラゲッジスペースはほぼなくなるから、どうしても荷物を積む場合はこれを折り畳んでリフトアップする必要がある。取り外しもできるが一脚15kg以上あるそうで、そう簡単ではないし、そもそも外したシートをどこに置くかは日本の住環境では常に問題になるからあまり現実的ではない。ただ、このロングを使って二人乗車でコストコで盛大に買い物をしてみたが、2列目のシートを使えば何の問題もなく収納できてしまうから、まあさほど問題にはならないのかもしれない。

◆60kgの増量を感じさせない機敏な走り
基本的なメカニカルコンポーネンツは同じ。すなわち1.5リットルのターボディーゼルに8速EATの組み合わせだ。車重は60kgほど重い。だからサスペンションのセッティングは変えているそうだ。

まず60kg増量による加速その他の落ち込みは全く感じられない。相変わらず結構機敏に走る。変わったと感じたのは室内騒音が減じられていること。特に3年経ったデビューエディションと比較するとそれは顕著で、3年経つと案外建付けの悪さが顔を出すのかもしれない。もう一つは同じように音に関してであるが、オーディオの音質が向上している。これももしかすると建付けが良くなった結果なのかもしれない。

とにかく細かい仕様変更などは大抵の場合ほとんど日本には伝えられないから、どこをどう変えているかは直接メーカーに聞かないとわからないが、とにかく室内騒音が減じられて、遮音効果が高まっている。

◆大は小を兼ねる、のか?
ホイールベースが190mm延長されていることもあって、内輪差には少し気を遣うが、本質的な運動性能は変わっていないと思う。悩ましいのは、では一体どちらのチョイスが良いかということ。まず、潜在的に3世代家族はロングがお勧めなのは間違いない。3列目のシートは少々膝を抱え込んで座ることを強いられるから、本来は子供用である。1列目と2列目は従来と全く変わらない。

荷物を積みたい、あるいは取り立てて3列目が要らないとなると勿論標準バーションが良いのだが、前席まで畳んで3m以上の室内長が確保できる3列シートは案外有難い存在かもしれない。このクルマ用のガレージがあって外したシートを置いておける環境にあるユーザーは大は小を兼ねるじゃないが、3列がお勧めかもしれない。まあ、選択は悩ましい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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