ジャックラッセルテリアのララとラブラドールレトリーバーのマリア《写真撮影 青山尚暉》

5ナンバーサイズのボディでも、大容量ワゴンとしても使え、愛犬家にも支持されているのがコンパクトミニバンのホンダ『フリード』、トヨタ『シエンタ』の2台である。

フリードは2022年国産ミニバン販売台数No.1の実績を持つ人気モデルであり、また2022年8月に登場したばかりのシエンタも、2022年国産乗用車販売台数で8位につけ(シエンタは全体の6位)、2023年1月には国産乗用車販売台数で『ヤリス』『カローラ』に次ぐ3位の売れ行きである。

そしてこの2台がドッグフレンドリーカーとしてかなりの実用性を持つ大きなポイントが、基本の3列シート6〜7人乗りに加え、3列目席を取り払いラゲッジスペースを拡大した、2列シート仕様(フリードは『フリード+』)があることだ。つまり、ミニバンならではの大空間、背の高さを生かした大容量ワゴンとしての機能、使い勝手を備えているのである。

ここでは、愛犬家、愛犬により相応しいと思える、両車の2列シートモデルに特化し、ドッグフレンドリー度を比較してみたい。犬目線での評価は、もちろん、このわんダフルカーライフでおなじみの、わが家の3代目自称自動車評論犬!? のジャックラッセルのララである。

◆愛犬を乗せるのに理想的な後席の使い勝手
家族の一員である愛犬をクルマに乗せる場合、理想的なのは後席だ。シートに乗車することから乗り心地に優れ、前席や隣に座った飼い主との距離が近く、お互い安心してドライブを楽しめるメリットがある。そのほか犬用シートベルトの着用、わが家のようにハーネス&リードを装着させ、ヘッドレストなどにつないでおくような安全対策も可能になる。また、後席であればエアコンの風が届きやすく、暑い時期は熱中症対策となり、寒い時期はヒーターによって暖かい車内環境で、安全・快適にドライブを楽しむことができるというわけだ。

もちろん、大型犬、多頭、大型クレート(ユーティリティフックで固定可)を使用する場合、あるいは5名乗車で出かける際は、ラゲッジルームに乗せざるを得ないが、その際はマットレスを敷き、安全な方法で乗車させるのはもちろん、常に愛犬の様子をチェックすることが望まれる。わが家がやむなく愛犬をラゲッジルームに乗せる際は、ラゲッジルームに温度計のセンサーを配置し、常に運転席でラゲッジルーム部分の室内温度をセンシングしている。

さて、両車の実際のドッグフレンドリー度比較だが、最初に結論を言ってしまえば、どちらも文句なしのドッグフレンドリー度を備えていると言っていい。ただし、細かい部分、装備類では違いがある……、という感じである。

後席に乗車させる前提で気になるリヤスライドドア〜後席部分の寸法は、フリード+がステップ地上高390mm(フロアとの段差なし)、スライドドア幅665mm、スライドドア高1165mm。愛犬が乗り込んで、フロアから後席に飛び乗る際の容易度となるフロアからシート先端までの高さ=ヒール段差310mm。シートサイズは座面長500mm、座面幅530mm×2=1065mmとなる。

一方、シエンタの2列シートモデルはステップ地上高330mm(フロアとの段差なし)、スライドドア幅650mm、スライドドア高1200mm。愛犬が乗り込んで、フロアから後席に飛び乗る際の容易度となるフロアからシート先端までの高さ=ヒール段差325mm。シートサイズは座面長500mm、座面幅1300mm。

しかも、後席エアコン吹き出し口のない両車だが、シエンタには天井サーキュレーターがナノイーXとともにオプション設定され、これを装着すれば後席部分の空調環境が一気に快適になり、暑い季節、暑がりの犬も快適に車内で過ごせることになる。自称自動車評論犬!? のララによれば、愛犬家がシエンタを購入するなら、ぜひドッグフレンドリー装備として天井サーキュレーターを注文してほしいわん……、とのこと。

つまり、後席ステップ&フロアの低さ、後席シート幅のゆとりではシエンタがやや優位で、フロアから後席に飛び乗る際の容易度となるフロアからシート先端までの高さ=ヒール段差の低さではフリード+がほんの少し有利ということになる(人のかけ心地ではヒール段差は高いほうがよい)。なお、後席部分の頭上空間、膝周り空間に関してはフリード+とシエンタはほぼ同等だ。

◆ラゲッジルームの広さ・使い勝手は?
では、やむを得ず愛犬をラゲッジルームに乗せるとしたときの乗降性(犬自身での)、居住性はどうだろう。フリード+のラゲッジルームの開口部地上高は335mmとごく低く(ユーティリティボード未使用時)、奥行き1035mm、実質幅670mm、天井高1360mmという広さだ。ただし、ユーティリティボード未使用だとかなり低い位置に愛犬が乗車することになり、当然、前後席に乗っている飼い主は見えず、飼い主とのアイコンタクトは不可能になる。

で、フリード+のラゲッジルームに愛犬を乗せるのであれば、ユーティリティボードをセットした部分に乗せることを強く推奨する(室内の飼い主とのアイコンタクトが可能になる)。とすると、ユーティリティボード部分の地上高は一気に720mmまで高くなり、犬が自身で乗り降りすることは不可能。介助、抱きあげが必須となる。その際のフロア奥行きは890mm、フロア幅は1270mmまで拡大し、より広々としたスペースになる。なお、ユーティリティボード上段では、愛犬との車中泊も可能になるから楽しい(シエンタでも車中泊は可能)。

シエンタの2列シート仕様の場合は、ラゲッジルームの開口部地上高505mm、奥行き840mm、幅1265mm、天井高1055mm。こちらなら一般的なステーションワゴンのようなラゲッジルームとなり、犬の乗車性では上回ることになる。

走行性能では、発売が新しく、先進運転支援機能がより充実した最新のシエンタが優位であるとともに、シエンタにはフリード+にないドッグフレンドリーな装備がある。それがAC100V/1500Wコンセント(HVに44000円のオプション)だ。

車内外で1500Wまでの家電品、例えばコーヒーメーカーや湯沸かしポット、簡易電子レンジなどが使え、ドライブ先でペットが入れるカフェがなくても、安全にクルマが止められる景色のいい場所にシエンタを停めれば、そこが“どこでもドッグカフェ”になる。後席やラゲッジルーム後端に愛犬と座り、両側のスライドドアやバックドアを開け放てば、眺めのいいテラス席にいるようなカフェタイムが楽しめるのだ。残念ながら、フリード、フリード+(最新の『ステップワゴン』も)にAC100V/1500Wコンセントの用意は、ない。

しかし、フリード+にはホンダ車ならではのドッグフレンドリーポイントがある。それがホンダ純正ドッグアクセサリーのHonda Dogシリーズだ。助手席・後席用の「ペットシートプラスわん2」、後席用の「ペットシートサークル」「ペットシートマット」「ペットドアライニングカバー」「ペット車外飛び出し防止リード」などが揃っている。

こうした愛犬用アクセサリーの充実度もまた、愛犬家にホンダ車が愛されている理由の一つにもなっているのである。

※フリード、フリード+の写真はマイナーチェンジ以前の仕様です

トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード+《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード+《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード+《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード+(ユーティリティボード使用時)《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード+(ユーティリティボード使用時)《写真撮影 青山尚暉》 ユーティリティボードの使用例(ホンダ フリード+)《写真撮影 青山尚暉》 ホンダ フリード+《写真撮影 青山尚暉》 シエンタの天井サーキュレーター《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 トヨタ シエンタ《写真撮影 青山尚暉》 Honda Dogの「ペットシートプラスわん2」(写真はホンダ ヴェゼル装着例)《写真撮影 青山尚暉》 Honda Dogの「ペットシートサークル」(写真はホンダ ヴェゼル装着例)《写真撮影 青山尚暉》 Honda Dogの「ペットシートマット」(写真はホンダ フィット装着例)《写真撮影 青山尚暉》 Honda Dogの「ペット車外飛び出し防止リード」《写真撮影 青山尚暉》 左が2代目自称自動車評論犬!?のマリア、右がララ《写真撮影 青山尚暉》 家族の一員である愛犬は、なるべく後席に乗せてあげたい《写真撮影 青山尚暉》 ジャックラッセルのララ《写真撮影 青山尚暉》