日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》

900kmを走破してわかったエクストレイルの価値
過去3代、日産『エクストレイル』にはタフギアというある種、別名のようなワードが常に踊っていた。TVCMにも「濡れてたっていい」とか「汚れてたっていい」と言った文言が躍り、とことん遊びに使い倒すクルマのイメージがこのエクストレイルには染みついていたように思う。

ところが最新型の4代目はそうした使い方が憚るような豪華で美しい内装の仕上がりを見せ、過去3代とはだいぶ異質な雰囲気を醸し出している。ただ、そうは言っても特別仕様車として「エクストリーマー」と呼ばれるタフギア的モデルも一応用意されて、使い倒したい向きには濡れても平気なシートが用意されている。

因みに今回試乗した「エクストレイル G e-4ORCE」にはナッパレザーの美しいシートが付いていた。その内装はいわゆるタンと呼ばれる茶色と黄色の混ざった内装で、これはメーカーオプションで8万8000円で用意されるもの。車両本体価格449万9000円に加えて、このナッパレザーを含むメーカーオプションが46万7500円。ドラレコなどのディーラーオプションが14万9335円上乗せされ、試乗車の価格は511万5835円。

というわけで乗り出し価格は500万円台半ばを超える。過去のエクストレイルと比べるとやはり高くなった印象は否めないが、正直僅か2日間でおよそ900kmを走破してみてその価値は十分にあるという結論に達した。正直に言うと、新しいエクストレイルは日産史上最高の出来のSUVではないかと思う。

「e-4ORCE」が疲労感の低減に貢献している
具体的にどこがどう良いかというと、まずは乗り心地が素晴らしく良くなっている。加えて高速域でのハンドリングと4輪の接地感の高さが印象的であった。シートの作りは体形は体重などに左右されるかもしれないが、個人的にはこれも過去最高。試乗していて感じたことは、ついにルノーの運動性能を手に入れたという印象である。

とにかく1日で700km走破してもどこにも痛みや疲労感がなく、走り終えてクルマから降りる時も最初に乗り込んだ時と変わらぬ感覚で降りることができた。このくらいの距離を走ると大体疲れ切って降りる時は腰や体を伸ばしたくなるものだが、そんな必要はまるでなかった。これは驚くべきことである。

ではこの疲労の少なさがどこから来るものなのか、あれこれと考えてみたが一つはe-4ORCEがその理由だと思う。加速減速に際して4輪をうまくトルク制御しているとかで、加速の際に頭をヘッドレストに押し付けられる感覚と、減速の際に体と頭が前方向に持っていかれるいわゆる加減速Gが感じにくい、うまい制御をしている。おかげで加速にしても減速にしても頭がぶれる感覚が非常に少ない。これが疲労軽減に大いに役立っている気がした。

2日目は雨の中を200kmほど走った。この日は結構なヘビーレインで道は田舎のワインディング。そこそこのペースで飛ばしても素晴らしく高い接地感を感じさせてくれて、ステアリングの無用な修正をまるで必要としない。あとはシートの出来の良さ。こうしたことが積み重なって疲労軽減を実現しているのではないかと思った。

素直にその実力の高さを認めようと思う
黒子に徹しているはずのe-POWERのエンジンにも新しい技術が搭載された。それがVCターボ。いわゆる可変圧縮比のターボエンジンである。1998年から開発を始めたという年季の入った技術だが、圧縮比を8.0〜14.0までバリアブルに変えられる。その良さというか効果を直に実感することはできないが、およそ3気筒エンジンを搭載しているとは思えない静粛性の高さも疲労軽減につながる。フル加速しても3気筒独特なビートは聞こえてこない。これには恐れ入った。

とにかくその内外装の高い質感に、かなりパワフルに感じられるVCターボとモーターを組み合わせた駆動系。e-4ORCEによる実にスムーズな運動性能及び加減速の際のトルク変動の少なさ等々、このクルマには驚きがいっぱいあって、素直にその実力の高さを認めようと思う。素晴らしいクルマであった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》 日産 エクストレイル G e-4ORCE《写真撮影 中村孝仁》