ヤマハ TMAX 560《写真撮影 真弓悟史》

この7月にモデルチェンジしたばかりのヤマハのビッグスクーター『TMAX560」。骨格やエンジンといった基本部分こそ先代から継承しているものの、歴代の原点である「走りのTMAX」に立ち戻ったかのようなアグレッシブなデザイン、よりスポーツ性を高めた足まわり、そしてスマホ連携機能まで備えた電子制御の大幅進化と、大きく生まれ変わっている。

「走りのTMAX」の意気込みは今回も凄い!
このモデルの特徴となるのは、やっぱりエンジンだろうか。正式な総排気量は560ccよりちょっと多い561cc。360度クランクとなる並列2気筒は、スクーターならではのオートマチックと組み合わされたことにより、鼓動感とも呼べるようなバイブレーションとともにどこまでも盛り上がっていくような加速感が魅力だ。最高出力は48psということで、街中・峠・高速道路とあらゆるところで、250スクーターでは味わえない力強さと楽しさを存分に見せてくれる。

そして「走りのTMAX」だけに足まわりにかける意気込みは今回も凄かった。スクーターなのに一般的なスポーツバイクと言ってもいいような倒立フォークやラジアルマウントブレーキキャリパーに加え、今回は『MT-09』にも採用されている最新のスピンフォージドホイールを装着。このホイールは鋳造ながら鍛造に匹敵する強度と軽さを実現した新製法によるもので、慣性モーメントはフロントで約10%、リヤで約6%減少。

リセッティングされたサスとブリヂストンの新タイヤ「バトラックススクーターSC2」も相まってグリップ感についても向上しており、これまでもスポーティだったハンドリングにより磨きがかかって、ワインディングをビックリするような勢いで走ってくれた。それに前後15インチと小径ホイールなのにフルブレーキや高速道路での安定性や剛性感も驚くほど高い。要はヨーロッパの高い速度レンジに対応した走りの性能がそのまま体感できるといった感じで、ワインディングを駆け抜けていくには最高のマシンに仕上がっていた。

ヨーロッパ人もそんなに身長の高い人ばかりじゃないと思うけど…
やや前傾を強める方向に改めたというポジションについてはステップボードが15mm下がり面積も広がったが、相変わらずかなり深いフルバンクでも、なかなか車体下を摺る気配がないのはさすが。シートのバックレストは前後30mm調整が可能だが、一番手前にしても腰がようやく当たるかどうかといった感じで、かなり広々としたポジションとなっていた。足着きに関してはほとんどの人が結構きつく感じると思う。

そもそもこのマシンのメインターゲットは足がスラリと長い身長180cmくらいのヨーロッパ人。身長168cmの私では片足がようやく着くかどうかというほどで、前後フラットなシートはどんなに前方に座っても足の届きは変わらない。ちなみにシート高は前モデルと同じ800mm。サイドを絞ってくれたというが、前モデルとはそんなに変わっていない感じがする。個人的にはヨーロッパ人もそんなに身長の高い人ばかりじゃないと思うのだけど…。

走りはもちろん、電子制御もグッと充実
もっとも、TMAXの走りの魅力は足着きの辛さを差し引いても余りある。今回はさらに電子制御の部分もグッと充実。ついにカラーTFT液晶化となったメーターはナビも使えるスマホ連携機能や操作用のジョグダイヤルまで付いて使い勝手が大きく進化。T(ツーリング)モードとS(スポーツ)モードの2つが選択できる走行モードについては電子制御スロットルも新型となっており、思い切りスロットルを開ければどちらもあまり変わらない力強さを見せていた。

メインスイッチやトランク開閉スイッチなどが1か所に集約されたスマートキーも熟成。今回は燃料タンクキャップの電磁ロックもここに加わった。他に電子制御ではないがパーキングブレーキも片手でかけられるように軽くなった点も嬉しい。上級版のTECHMAXにはグリップヒーターやシートヒーター、クルーズコントロール、電動スクリーンが追加され、さらに便利になっている。

初代登場から20年以上たった今でも妥協のない進化を続けているTMAX。スクーターの格好をしているのに走りはスポーツバイクそのものというキャラクターは、ユーロ5相当の環境規制に対応したこの2022モデルでも変わらないどころか、さらなる利便性もプラスされて磨きがかかっていた。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★
オススメ度:★★★★

丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー
1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。身長は168cm。

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