ヤマハ XSR900《写真撮影 真弓悟志》

2015年に登場した『XSR900』は、『MT-09』をベースにレトロなスタイリングをまとったネイキッドモデル。ベースモデルの刷新にともない、こちらも2022年モデルよりフルモデルチェンジされた。

レーシングにありがちな「とっつきにくさ」は皆無
スタイリングは従来モデルから大きく変更され、デザインチームも意欲的に臨んだと感じさせる。イメージは80年代のレースシーンからのものだそうで、我々の世代には懐かしさも感じさせる。しかし「レーシング」から想像されるとっつきにくさは皆無でもある。シート高を始めとして重心が低く抑えられており、またがった際にも、165センチの身長でも不安はない。これは、当時のレーシングマシンのシート高が今ほど高くなかったところからのフィードバックでもあるそうだ。

ホッと一安心しつつ走り出したXSRは、全体的に硬質なフィーリングを与えてくる。個人的にはよりソフトな足回りを奢ったほうが快適性や安心感が高まるのでは?と想像するが、反面、これはカスタムマシン的フィーリングともいえ、このスペシャル感を好むライダーも少なくないかもしれない。

メインフレームはMT-09と共通。スイングアームには『トレーサー9』が採用する長めのものを装着。それにより、MT-09に対して穏やかなハンドリングを得ている。軽量なホイール等、運動性に直結するバネ下重量の軽減により、マシンのハンドリング自体には軽さを感じ、ひらりひらりとコーナーをクリアしていく軽快さがあるものの、ドキッとするような挙動は影を潜め、ベースとなるMT-09に対してもマイルドな旋回性をしめす。コーナーリング中に身体をマシンに預け、安心して長くバンクしている状況を楽しめるようなセッティングともいえるかもしれない。

その気になれば、しっかり速い!ことで満たされる自尊心
エンジンは従来モデルよりも排気量アップを含め、こちらも完全刷新されている。従来モデルはややピーキーさも感じさせるものでもあったが、よりフラットかつトルクフルとなり、常用回転域での扱いやすさが向上している。

ライディングモードは3種類から4種類にバリエーションも増加。最もパワフルな1をセレクトすると、アクセルレスポンスがクイックになり、トラクションコントロールやウィリーコントロール、ABS等も最適化される。レスポンスを優先させるためか、ややアクセルコントロールにシビアさが必要となる。これは従来モデルでも感じられたパートではあるが、高度化された制御によってスムーズさは向上しているといえる。モード2、3と徐々にアグレッシブさが抑えられ、さらにモード4ではレスポンスやパワフルさと引き換えに、穏やかな表情すら見せてくれる。

最高出力は119馬力と公道であれば…いや、クローズドコースであっても、十分以上に速く刺激的なポテンシャルを持っている。低中速トルクが充実していることもあり、その領域を使うことはほとんどなかったものの、その気になればしっかり速い!というのがライダーの自尊心を満たすことにつながっている。

あらゆるシチュエーションで「そこそこ」使えるベースポテンシャル
また、ライディングモードのほか、6軸IMUを搭載した細かい電子制御、クルーズコントロール、アップ&ダウンに対応したクイックシフター、コーナーリングABS等、最新の機能を盛り込んでいる点も見逃せない。それでいて車両価格を約120万円に抑えた点は大きく評価出来る点である。気軽に走り出せるポイントとして、そのマシンの持っているキャラクターと同時に、この価格設定も実は大きな役割を果たしており、自分好みにさらにカスタムを施す余地があるとも言えるのだ。

あらゆるシチュエーションでそこそこに使えるベースポテンシャルを持っているのがXSRの魅力だ。かたちだけでなく、その汎用性も当時のマシンを思い起こさせるマシンとなっていたのだ。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★
扱いやすさ:★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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