プジョー 308 Allure Blue HDi《写真撮影 中村孝仁》

ディーゼルのベーシックモデル「アリュール」に試乗
プジョー『308』が新しくなり、手始めにガソリン1.2リットル3気筒搭載車とディーゼル1.5リットル4気筒搭載車が日本市場でデビューした。

真打ちはPHEVモデルで1.6リットルの直4ユニットと電気モーターの組み合わせで、この仕様は年内にはデビューする予定だ。で、この中から今回試乗したのはディーゼルのベーシック仕様である「アリュール」の方だ。

一応「GT」の方にも試乗してみたが、アリュールの327万7000円に対し、GTは396万9000円とかなりの差がある。メカ的な違いはなく、どちらも8速ATとの組み合わせだが、タイヤがアリュールの17インチに対してGTは18インチとなり、攻め込んでいけばそれなりの差が出るが、むしろ大きな違いとしてはパワーシートの有る無しだとか、インフォテイメント系とエアコンなどの操作がタッチ操作か物理スイッチの操作かなどの違い。まあ、エクステリアでもフロント及びサイドスカートの有る無しなどもあるが、実を取るならアリュールで十分である。

プラットフォーム自体は一新されてはおらず、EMP2と呼ばれる先代も使っていたモノが踏襲される。ただし、世代的には進化していて先代の308がジェネレーション2だったのに対し、今回はジェネレーション3とされている。と言ってもサスペンションはフロントにマクファーソンストラット、リアにはトーションビームが採用されて変わっていない。しかしまあ、そのトーションビームのサスペンションの躾の良さと言ったら日本の某M社とは大違い。そのしなやかさと快適さはM社もぜひ見習ってもらいたいものである。

ゴルフと308の決定的な違いは
Cセグメントハッチバックの代表格と言えば文句なしにVW『ゴルフ』である。ということで比較するためにこのゴールデンウィーク中ずっとゴルフで合計800kmほど走ってみた。プジョーとの決定的な差というか違いが少しわかった気がした。

その違いの部分から説明しようと思う。それはクルマに乗ることの面白さという点で、プジョーの方がVWを上回っているということだ。ゴルフの出来は正直文句のつけようがないほど素晴らしい。どこをどう切り取ってみても全く破綻のない完璧さを誇ると言っても過言ではないだろう。絶対的な安心感では文句なしにゴルフの勝ちである。ところがだ。ではドライブしていて面白いと思うにはどちらかと言われると、これがプジョーに軍配が上がるのである。

そこに何があるかというと、ドライバーの腕の見せ所が発揮されやすいと言ってしまえばそれまでかもしれないが、ゴルフの場合例えばサーキットに持ち出してラップタイムを取ったとしよう。ドライバーの技量が同じなら誰が乗ってもゴルフは同じようなタイムで走るだろう。ところがプジョーの方はたぶん違う。まあ、慣れてくれば同じになるのかもしれないが、走りのスタイルによってプジョーのタイムは変わってくるように思える。

先日とある友人とクルマの静的バランスと動的バランスについて話し合ったのだが、ゴルフは素晴らしく静的バランスに優れたクルマで破綻をきたしにくい。一方のプジョーは積極的にドライバーが介入することで動的バランスを保つように作っているのではないか?という話になったのだ。ここにドライバーのコントロールする能力を発揮する余地が生まれる。

だからと言ってプジョーが動的に不安定なのかと言えばそうはなくて、コントロールする余地を残してくれているという意味である。表現は難しいのだが、クルマに対して絶対的な安定感を求めるならゴルフがお勧めであるが、日本の某M社の提唱する人馬一体的なコントロールを楽しみたいようなドライバーにはプジョーがお勧めだということである。

これは民族的な話になってしまうかもしれないが、ドイツ人にもどちらかと言えば日本人と似たような同調圧力的な傾向があるのに対し、フランス人やイタリア人は個を優先する傾向が強いのだ。これはかつて私が2年半という短い間だったがドイツに住んで体験したことである。そんなわけだから、日本人はドイツ車を好み、他と一緒を満喫する。しかし最近少しづつ、フランスやイタリア車の個を優先した味付けも好まれるようになったのかもしれない。

プジョーの面白さの一端を垣間見た
少なくともデザインのセンスは、申し訳ないがプジョーの圧倒的な勝ちだと個人的には思う。内装のセンスもプジョーが上。少し大型化したことでプレゼンスも増している。

まあ、ディーゼルの出来はエボに進化したゴルフに負けているが、2台乗り比べて性能面での優劣はそれほど大きいとは思わなかった。だが、単純に車を運転して面白いか面白くないかという点になると、私にはプジョーの方が格段に面白く感じた。

それは、もしかすると開発陣の設計思想や、さらに言うと経営トップがレースもこなすクルマ好きか否かというところまで反映されているかもしれない。「乗って楽しい」のDNA醸成はそんなところから生まれる。プジョーの面白さの一端を垣間見た気がした。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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