ホンダ CT125・ハンターカブ《画像:本田技研工業》

◆前年比1.5倍!売れまくりの原付2種

コロナ禍において、密を避ける移動手段としてバイクの人気が高まっている。なかでも売れているのが、51cc〜125ccの「第二種原動機付自転車」、いわゆる原付2種だ。

自動車工業会によると、今年1〜6月の出荷台数は以下の通り。いずれの排気量帯も前年比増だが、原付2種は6万7772台で前年比147.78%と著しく出荷が増えている。

■出荷統計(二輪)排気量別 2021年1月-2021年6月
原付第一種(〜50cc):6万0717台(100.43%)
原付第二種(51〜125cc):6万7772台(147.78%)
軽二輪車(126〜250cc):3万0800台(100.52%)
小型二輪車(251cc〜):2万6018台(135.09%)
合計:18万5307台(118.62%)
※( )は前年同期比、日本自動車工業会調べ

◆手軽でメリットの多いクラス


クルマの免許に付帯するのは原付第一種、つまり50ccバイクの免許だ。原付2種に乗るには、改めて運転免許を取得しなければならない。それなのに、この人気の高さはどうしたことか。比較すると、法定最高速度はクルマや大型バイクらと同じ60km/h、二人乗りOK、二段階右折不要など優位点が浮き彫りになる。

●法定最高速度
原付1種=30km/h
原付2種=60km/h

●二人乗り
原付1種=不可
原付2種=可

●二段階右折
原付1種=原則二段階右折
原付2種=不要

●クルマの任意保険に加入の場合
原付1種=ファミリーバイク特約に加入OK
原付2種=ファミリーバイク特約に加入OK

●自賠責保険/12か月
原付1種=7070円
原付2種=7070円
※2021年10月1日現在

2018年7月に道路交通法施行規則の一部が改正され、免許も取得しやすくなった。AT小型限定普通二輪免許に係る1日の技能教習時間の上限等が見直され、普通自動車免許を保有している場合、オートマチックの125ccスクーター免許の教習終了まで最短2日間での終了が可能となっている。

◆アウトドアブームやアニメも追い風


昨年6月に登場したホンダ『CT125 ハンターカブ』(税込み44万円)は、販売計画8000台が発売前の予約段階で達するほどの人気で、いまなお品薄が続く。

同車は、北米や豪州で狩猟、釣りなどのアウトドアレジャー用、あるいは農園管理業務として支持され、1980年から2012年の長きにわたって生産された『CT110』をモチーフによみがえった。

スーパーカブからレッグシールドを取り外し、マフラーをアップタイプ、タイヤをブロックパターンにするなどオフロード走行も想定している。遊びゴゴロのあるタフなルックスで、街乗りからアウトドアまで用途を選ばない。

折からのキャンプブームに加えて、ソーシャルディスタンスを保てるアウトドア遊びに注目が集まり、『CT125 ハンターカブ』は時代にドンピシャだったというわけだ。


そして人気は『CT125 ハンターカブ』だけじゃない。山梨県北杜市の高校に通う女子高生・小熊が主役のアニメ「スーパーカブ」などの影響もあって、『スーパーカブC125/110』や『クロスカブ110』らカブ系すべてに人気が及んでいる。

蕎麦屋の出前に最適と、ホンダ創業者の本田宗一郎氏のもと「誰でも扱えるバイク」を目指し開発された配達向けのスーパーカブだったが、今やかわいくてオシャレな乗り物に。もともと根強いファンを多く持つが、ここにきて女性ユーザーも目立ってきた。

◆ヤマハは充実のラインナップ


ヤマハは『アクシスZ』と『シグナスX』に加え、『NMAX』そしてスリーホイーラーの『トリシティ125』まで、125ccスクーターのラインナップを充実させている。

車両重量100kgの扱いやすい軽量ボディ『アクシスZ』は、走りの楽しさと燃費・環境性能の両立を高次元で具現化する“BLUE CORE(ブルーコア)”エンジンを採用し、同社125ccスクータートップの低燃費54.6km/リットルを実現。フットワークが軽快で、より経済的。車体価格も税込み24万7500円と抑え、手を出しやすい。


2眼6灯LEDヘッドランプのフロントマスクが精悍な『NMAX』は、ワンランク上の上質感がある。滑りやすい路面でも後輪のスリップを抑止し、安定した走りを実現するトラクションコントロールシステムも搭載するほか、アイドリングストップシステムやスマートフォンアプリ「Y-Connect」との連携など先進性に富んでいる。

二輪は不安と感じる人に最適なのが『トリシティ125』。安定した3輪車でありながら、車体をバイクのように傾けて曲がるLMW(リーニング・マルチ・ホイール)技術を採用し、操る楽しさも詰め込んだ。ヤマハは強力な布陣で、市場を活性化させている。



◆原2でも「HY戦争」ふたたび?

かつてホンダとヤマハは、2輪車市場の主導権を激しく争い「HY戦争」と呼ばれたが、ココでも再び対立している。スズキにも『アドレス110』があり、原2人気はしばらく続きそうだ。

また、一過性のバイク人気に終わらせないため、二輪メーカー各社はこれからが正念場となる。手軽に入門しやすい原2クラスで、せっかく二輪車に興味を持ってくれたユーザーたちをいかに定着させるか、バイクライフの素晴らしさをもっともっと伝えなければならない。

将来、「あの原2人気があったから良かった」と言われるように。

ホンダ CT125 ハンターカブの125ccエンジン《写真撮影 中野英幸》 ホンダ CT125・ハンターカブ《写真撮影 中野英幸》 ホンダ スーパーカブ C125(パールニルタバブルー)《写真提供 本田技研工業》 スズキ アドレス125《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ トリシティ125《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ トリシティ125《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ NMAX ABS《写真提供 ヤマハ発動機》 ヤマハ シグナスX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ アクシスZ(左)とシグナスX《写真撮影 雪岡直樹》 ヤマハ シグナスX《写真撮影 雪岡直樹》