開発者が熱く語る“ユーザーの望みを詰め込んだ” GR86/BRZ開発コンセプト…FUJI 86 STYLE with BRZ 2021《写真撮影 土屋勇人》

デビューを直前に控えたトヨタ『GR 86』/スバル『BRZ』新型、6月6日に富士スピードウェイにおいてGR 86/BRZのファンイベントである「FUJI 86 STYLE with BRZ 2021」が開催され、各メーカーのGR 86のコンセプトモデルが披露された。

イベントにはGR 86/BRZの開発陣も参加していたので、気になるニューモデルの設計思想を聞いてきた。

◆初代モデルでやり残したことを
エンジンの2.4L化に込めて開発スタート

GR 86/BRZのファンイベントである「FUJI 86 STYLE with BRZ 2021」にトヨタ、スバルの開発者が参加したのでこの機会にGR86/BRZの開発にまつわるインタビューを実施した。初代の86からの進化のポイントはどのような部分だったのか。完成度の高い車両だった初代86に対してどのような進化を込めることが開発テーマとなったのだろう?

「初代モデルでやり残したことは何か? それを問うたときに3000回転から5000回転にあったトルクの谷間がありました。ここをフラットにすることでパワー不足を感じていたドライバーの多くは満足するはずだと考えたのです。ただし軽量、低重心、高剛性のクルマ作りはブレることなく開発が進みました」

この設計意図通りエンジンは現行モデルのFA20(2L/200ps)からFA24型(2.4L/235ps)へとスープアップされることになる。

「従来型に対してもう少しパワーが欲しいという声が多かったのは事実です。しかし大パワー化するのでは無く86の持っている“手の内感”をキープすることも必須の項目でした。そのため2.4L化していますが、エンジン重量はほぼ同等に押さえ車重も現行モデルと同等に設定しています。これがクルマを“操る楽しさ”を存分に感じてもらえる方向性だったんです」

FA20型からFA24型はボアアップを施して排気量をアップしている。さらにハイパワー化としてターボチャージャーの装備などは想定には無かったのだろうか?

「車両のサイズを大きく変えないことから水平対向のレイアウトを考えればボアアップが妥当な排気量アップの手法でした。またターボ化は重量や車両価格という面からも考えませんでした。あくまでも意のままに扱えるクルマであること、手ごろな価格で手に入れることができるクルマであることを重視したのです」

◆フレームの高剛性化で操る楽しさをアップ
静粛性までを手に入れた新シャシーにも注目

エンジンのスープアップに加えてモデルチェンジの置けるレベルアップにはどのようなポイントがあるのだろう?

「アクセルのコントロール性、ハンドリングの向上、そのためにはパワーを受け止めるシャシーの改善があります。自在にクルマを操る感覚を更にレベルアップするのが開発時の大きなテーマでした。パワーだけでは無くドライバーの意図通りに走ることができるのがGR 86/BRZの開発の方向性です。しかも限界値でもコントロールしやすさを兼ね備えることも重視しています。安心と楽しさを備えていることもこのクルマの基本性能と言えるのです」

新プラットフォームの採用によって剛性がアップしたのもGR 86/BRZのもうひとつの進化ポイントとなった。

「衝突基準が厳しくなりそれに合わせてフレームの高剛性化が進んでいます。今回のGR 86/BRZにもそれが言えます。レヴォーグに採用されるフルインナーフレームの設計思想を取り入れたフレームを備え、剛性感は大きく向上しています。フレームの高剛性化はクルマを操る上でも良い結果を生み出しました。足がしっかり動いてキビキビ走るフィーリングをアップさせ、ハンドルを切った分だけ動くという感覚にさらに磨きが掛かったのです。加えてもう副産物的なひとつの進化となったのが“静粛性のアップ”です。シャシーと足回りがきっちりとつながっているためクルマが静かになっているんです。これも新型の魅力です」

◆造形に機能を持たせた意味あるデザイン
凝縮感を感じさせるフォルムも新型のテーマ

外装のデザインは現行モデルの大きな流れを変えることなく、各部を進化させる手法を採ってきた。外装デザインの開発スタンスとはどんなものだったのだろう?

「外装デザインは意のままに操るための空力をコントロールするというテーマを持たせました。例えばサイドのエアアウトレットによる整流効果、サイドシルのスポイラーによるスタビ効果、リアトランクにあるダックテール、さらにはリアバンパーにあるアーチフィンも後方気流を制御するためのものです。いずれも機能をデザインで表現することにしました。ありがちなダミーのエアスクープなどは採用せず、すべてが意味のある造形なんです」

ボディフォルムでは新たに取り組んだデザインがあるという。見どころとなったのはどこだろう?

「凝縮感を高めたのが新モデルの特徴のひとつです。キャビン後半を10mm〜40 mm程度削ってぐっと絞り込んだデザインとしました。その結果クルマ全体の凝縮感を感じさせるデザインとなっているのです。ファンも多いクルマですからどこまでデザインを変更するかはかなり悩みました。換えるところと原点回帰するところをバランスさせていると思っています」

エンジンのスープアップ、シャシーの高剛性化によって、扱えるスポーティモデルとして86はさらに進化を果たした。しかも手ごろな価格で買えるというコンセプトもそのまま踏襲したのもこだわり。機能美を備えた外装デザインなどを備え走りのトータルバランスもアップさせた。ドライバーが意のままに操ると言う、スポーティモデルが持つ本来の魅力を存分に味わわせてくれるGR 86/BRZ。ますますデビューが待ち遠しくなった。

開発者が熱く語る“ユーザーの望みを詰め込んだ” GR86/BRZ開発コンセプト…FUJI 86 STYLE with BRZ 2021《写真撮影 土屋勇人》 開発者が熱く語る“ユーザーの望みを詰め込んだ” GR86/BRZ開発コンセプト…FUJI 86 STYLE with BRZ 2021《写真撮影 土屋勇人》 開発者が熱く語る“ユーザーの望みを詰め込んだ” GR86/BRZ開発コンセプト…FUJI 86 STYLE with BRZ 2021《写真撮影 土屋勇人》 株式会社SUBARU 新型SUBARU BRZ開発責任者 商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャー 井上正彦氏《写真撮影 土屋勇人》 株式会社SUBARU 技術本部 車両運行開発部 車両研究実験第二課 課長 伊藤和広氏《写真撮影 土屋勇人》 株式会社SUBARU 技術本部 車両研究実験総括部 主査 塩川貴彦氏《写真撮影 土屋勇人》 TOYOTA GAZOO Racing GRプロジェクト推進部 チーフエンジニア 末沢泰謙氏《写真撮影 土屋勇人》 TOYOTA GAZOO Racing 凄腕技能養成部 平田泰男氏《写真撮影 土屋勇人》 TOYOTA GAZOO Racing GRプロジェクト推進部GRZ 主幹 藤原裕也氏《写真撮影 土屋勇人》 TOYOTA GAZOO Racing Rデザイン グループ長 松本宏一氏《写真撮影 土屋勇人》