三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》

◆背高でもSUVのコンセプトに沿っている


三菱『eKクロススペース』と『eKスペース』は、日産『ルークス』の姉妹車だ。全高が1700mmを超える軽スーパーハイトワゴンで、販売の主力となるeKクロススペースのフロントマスクは、今の三菱車に共通するダイナミックシールドのデザインになる。

2020年に入って、SUV感覚の軽自動車とされるスズキ『ハスラー』がフルモデルチェンジを行い、ライバル車のダイハツ『タフト』も発売された。この2車種は、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)が180〜190mmだから、SUVらしく悪路のデコボコも乗り越えやすい。その点でeKクロススペースは4WDが150mmだから、ルークスと同じ高さだ。

それでも内装の質を高めるプレミアムインテリアパッケージ(5万5000円)、後席の快適性を向上させる後席パッケージ(4万4000円)を装着すると、荷室のボードが樹脂製になって汚れを落としやすい。屋外での使い勝手を向上させ、SUVのコンセプトに沿っている。




◆標準ボディでもターボが選べるのは三菱だけ


ノーマルエンジンの動力性能は、幅広い回転域で物足りない。全高が1700mm以下の『eKクロス』なら、ノイズを抑えた滑らかな走りを味わえるが、eKクロススペースは背が高くスライドドアも装着したから車両重量が110kgほど上まわる。そのためにノーマルエンジンでは真価を発揮しにくく、ターボエンジンと相性が良い。

そこで注目されるのは、三菱の場合、標準ボディのeKスペースにもターボの「T」を用意したことだ。日産のルークスでターボを選べるのは「ハイウェイスター Gターボ プロパイロットエディション」(193万2700円)のみだが、三菱は標準ボディのeKスペースにもT(163万5700円)があるため、約30万円安い価格でターボを装着できる。これはeKスペースを選ぶ大きなメリットだ。

なお日産の開発者は「スタンダード(標準ボディ)の購入層は価格を意識して、ボリュームが出ていないためにターボの設定は行っていない」と説明している。



◆ファミリーカーとして使いやすい操舵感

eKクロススペースとeKスペースは背の高い軽自動車だから、操舵感は反応の仕方を鈍めに抑えた。峠道などでは曲がりにくく感じることもあるが、車線変更時にボディが唐突に傾く違和感は抑えた。乗り心地も粗さを感じさせず、ファミリーカーとして使いやすい。



■5つ星の評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 標準ボディの三菱 eKスペース(写真は非ターボ車)《写真撮影 雪岡直樹》 三菱 eKスペース《写真撮影 雪岡直樹》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》 三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》