
「鈴鹿8耐2025」(2025 FIM世界耐久選手権コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会)に突然現れた『ミニGSX-R』の正体は、スズキが開発中の電動モペッド『e-PO(イーポ)』だ!
ただし、イーポなら折りたたみ式だし、人が足で漕ぐためのペダルも備わっているはず。『ミニGSX-R』にはどこにも見当たらない。
筆者の頭の中がクエスチョンでいっぱいになっていたところに、スズキの神谷洋三さん(二輪パワートレイン技術部技術企画課)がいらっしゃった。あまりにも熱心にジロジロ見ていたので、不安になって近づいてきたのかもしれない。
神谷さんはイーポの開発を担当した張本人で、筆者が2024年9月に開かれたジャーナリスト向け試乗会に参加した際は、パナソニックサイクルテックの折りたたみ式電動アシスト自転車『OFF TIME(オフタイム)』をベースに独自開発し、原付一種枠の電動モペッドとしたことを教えてもらった。
遊び心あふれるスズキは、近距離移動の選択肢を広げるべく電動の『e-チョイノリ』を2023年のジャパンモビリティショーに出展しているから、今度はこの『e-ミニGSX-R』、はたまた1986年に発売したミニレーサースタイルのプレジャーバイク『GAG(ギャグ)』の電動版『e-GAG』なのか?
◆8耐マシン開発の横でこっそり作られた『CNチャレンジ ミニ』怪しいほど熱心に展示車両を見るバイクファン(筆者)が、イーポの試乗経験もあるバイクジャーナリストであることを神谷さんはすぐに思い出してくださった模様。なので、すぐさま質問をぶつけてみた。
「これもCNチャレンジの一つでして、当社のサステナビリティに関わる技術開発の一環なんです」
神谷さんはこう言って展示パネルを指さした。そこには『CNチャレンジ ミニ』と車名が記されていた。そして『GSX-R1000』とのスペック比較表もあるから面白い。
実は鈴鹿8耐に参戦する「チームスズキCNチャレンジ」と神谷さんが所属するイーポ開発チームは、全く同じ部署だそうで、8耐マシンの開発を横目で見ながら、今回の『CNチャレンジ ミニ』を制作したと話してくれた。
『CNチャレンジ ミニ』のホイールサイズは前後10インチで、全長は半分程度、重量だと10分の1程度と軽い。専用設計されたワンオフのアルミフレームに、イーポのバッテリーとモーターが搭載されている。
◆小さいながらも本格的! 交換式バッテリーはイーポそのもの「前から2台を一緒に見てください。そっくりでしょ?」と神谷さんが言う通り、フロントマスクやカウルなど、ホンモノそっくりだ。
さらにイグニッションをONにすると、ヘッドライトを点灯。往年の耐久レーサーがイエローバルブを採用していたように、ホワイトだけでなく黄色にも光るよう切り替えできる。
そしてカウルを外して、バッテリーを脱着する作業も披露してくれた。ワンタッチ式のクイックリリースで、カウルを付けたり外したりするのも即座にできるから本格的だ。
リチウムイオンバッテリーはイーポと同じ容量16Ahで、持ち運びしやすいように取手がついていて、残量がわかるようにインジケーターも備わる。走行可能距離は30km以上。
「スペアを用意しておけば、こうしてすぐにバッテリー交換ができるんです」と神谷さんは胸を張る。もちろん、実際にライダーが乗って走ることも可能で、距離だけなら(急勾配をのぞけば)鈴鹿サーキットを3周はできるそうだ。
◆ファン必見!「1000台注文あれば販売できる」ウイングレットの作り込みなど、見惚れるばかり。ヨシムラ(!?)マフラーはステップ後方にサイレンサーの付け根部分がくるから、アンクルグリップするのにちょうど良さそうだ。
「きっとこれ、欲しい人は少なくないはず。市販化したら売れますよ」と筆者が問いかけると、神谷さんは
「そうですかね。まぁ、1000台受注がくれば、考えてもいいでしょう」
こう答えたから、なんとも嬉しいではないか! ファンの皆さんっ!! 1000人集まれば『CNチャレンジ ミニ』こと『e-ミニGSX-R』を購入することができます!!(断言)
◆イーポが大活躍した鈴鹿8耐スズキは社員で「チームスズキCNチャレンジ」を構成し、昨年から『GSX-R1000』で鈴鹿8耐に参戦している。
40%バイオ由来だった燃料を、2年目の今年は100%サステナブル燃料にした他、ユニホームも再生生地を活用するなど、より高いレベルで環境負荷低減の推進を図った。
エンジンや空力がアップデートされ、8位だった昨年以上の結果を目指したが、102周目に転倒。一時は4位につけていたものの、ピットインを余儀なくされ、33位で完走している。
誰一人諦めることなく、およそ1時間で修復を終えてレースに復帰させたのは見事としか言いようがない。
また、スズキ『GSX-R1000R』で世界耐久選手権に参戦しているYOSHIMURA SERT MOTULは2年連続の3位表彰台を獲得。そのヨシムラブース前には、イーポがずらっと並んでいた。チームスタッフの移動に使われていたのだろう。
イーポの活躍を鈴鹿8耐で、しっかりと見たのだった。





























