スズキ ソリオ 新型《写真提供 中村孝仁》

スズキのクルマと言うと、やはりどうしても軽自動車が日本の市場をけん引していることは紛れもない事実なのだが、乗用車の隠れた人気モデルがある。それが『ソリオ』だ。

某webによれば、新車人気ランキングでスズキ車中トップに位置するのがソリオなのである。現行ソリオは、今年1月にマイナーチェンジしてデビューしたモデル。まあ、新しいから人気があるという側面もあるのだが、いわゆるトールワゴンという市場に置けるポジショニングとしては、市場をけん引していると言って過言ではない。

この市場は実質的にスズキとダイハツのクルマに大別され、それ以外は全てスズキもしくはダイハツのOEM車両である。そんなわけだから、いわゆる軽自動車ではない登録車両のトールワゴンとしてはどうしても注目が集まることになるというわけである。

簡単にマイナーチェンジで変更された点で注目すべきところは、まずエンジンが変わったこと。新たに電動パーキングブレーキが装備されてACCが停止までをカバーできること。それにブレーキホールド機能も付いた。こうした細かい配慮はスズキのお得意技。先代でも十分に良いクルマだと思ったけれど、今回はさらにその良さを増した印象である。

肝心のエンジンであるが、『スイフト』と同じZ12E型と呼ばれる1.2リットル3気筒エンジンとモーターの組み合わせになった。ただし、性能的にはかなりマイルドになり、先代のK12Cユニットと比較した時、排気量は同じながら最高出力と最大トルクは、先代の91psから82psに。トルクは118Nmから109Nmに減っている。またモーターの方も出力は13.6psからこちらは2.3psと大幅ダウン。一方でモータートルクの方は30Nmから60Nmへと倍増している。

◆乗り心地と、静粛性は相変わらずクラストップ
先代に試乗したのはもう2年前のことだから、正確に加速感がどうだったかは覚えていないが、それなりの加速を試みても、どうもイマイチぴんと来ない。単に交通の流れに乗って発進し、その流れに乗っていくような走りの場合は問題はないのだが、次の信号までに車線を変えて進行方向を変えたいというような状況で加速を試みると、何とも心許ないのである。そのためにSモードが付いていて、シフトレバーのレバー下のプッシュボタンがあり、これを押せばSモードとなる。

いわゆるスポーツモードと解釈した場合、他の銘柄のクルマだとアクセルの踏み代そのままで、スポーツモードに入れれば一気にグンと加速する。例を挙げるとフィアット『500』などはその典型で、一気に加速感が増す。ところがソリオの場合は、CVTのプーリーが移動してエンジン回転が上がるだけで、加速感そのものは変わりないのである。

もちろんそこから踏み込めば加速はしてくれるし、ノーマルモード(そう呼ぶかはわからないが)よりは多少加速が良くなるものの、まあ、50歩100歩程度。これがエンジン性能を落としたことによる弊害だとしたら、少し残念である。それにSモードに入れて踏んでいけば車載コンピューターによる燃費は一気に下がっていくから、経済運転をしたいユーザーには不向き。方向的にニューモデルは燃費志向とスムーズ志向に性能を振った印象が強い。

乗り心地と、静粛性は相変わらずクラストップと言って間違いないだろう。とにかくこのサイズのクルマとしては極めて静粛性が高く、NVHの遮断性が高い。それに乗り心地もちょっとしたサイズの大きな車に乗っている印象すら受ける。

今回のマイナーチェンジは安全性を高め、使い勝手を良くし(とりわけホールドモードはありがたかった)、経済性を高めた一方で、快活な走りに対しては少しスポイルされた印象を受けた。

◆明確に軽自動車との差別化をした方が良い
スズキのクルマは例えば、『ジムニー』と『ジムニーシエラ』、『ハスラー』と『クロスビー』を見るまでもなく、軽自動車とその登録車輌となる軽の枠を超えたクルマで、似たようなボディを使うケースが多い。特にジムニーとシエラはオーバーフェンダー以外に違いは見いだせない。ハスラーとクロスビーは極めて似ているが、子細に眺めれば明確に異なるけれど、パッと見では区別がつかない。この2台はキャラの立ったデザインをしているので、軽自動車と見間違われたところで、ユーザーと言うかオーナーは凹むことはないと思う。

一方でソリオだが、これも実際には明確に異なるのだが、『スペーシア』との近似性が強いスタイルを持つ。あまりクルマを良く知らない人からは、明確に軽自動車だと思われているようだ(私の女房など顕著)。これは他に近似性の強いライバルがいるだけに、いわゆるトールワゴン市場では完全に埋没してしまう。それにキャラの立っていないスタイルだけにクルマの良さとは別に、オーナーが、言い方は悪いかもしれないが所有する誇りを持てないという点で、ずいぶんと損をしている印象がある。

この点はクルマの良さとは裏腹。もっとキャラの立ったデザインで、軽自動車との差別化をした方が良いのではないかと思った。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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