BMW 1シリーズ 新型(120)《写真撮影 中村孝仁》

キドニーグリルを大きくしてみたり、グリル全体をボンネット側に回り込ませたり(先代)、このグリルの扱いに近年のBMWは頭を悩ましているように見えた。

最新の『1シリーズ』でそれがどうなったかと言うと、従来縦格子一辺倒だったグリル内のデザインを、縦格子と斜め格子を織り交ぜたデザインに変えてきた。同じようなことは最近ボルボもやっている。ヨーロッパはこれが今トレンドなのだろうか。

グリルだけでなく、外観のデザインも先代と比べるとだいぶ印象が違う。BMWが連綿と使うサイドウィンドーグラフィックのホフマイスターキンクが明確になり、グリルを含めて全体的にシャープなライン構成になった印象であるが、ボディサイドのキャラクターラインの入れ方は先代と同じであるから、それ以外の部分を変えたことで、ずいぶんと見た目が変わるものだと思った。因みにボディは長さ方向で若干伸びている。

◆BMWのインテリアが大きく変化した
近年のクルマはセンターのディスプレイが巨大化して、ダッシュボード全体のデザインにそれが大きな影響を与えているように感じる。ディスプレイが巨大化すると、割を食らうのがベンチレーター、即ちエアコンの吹き出し口である。ディスプレイは上方向にな拡大できない。何故なら前方視界の妨げになるからで、いきおい横方向と下方向に延びている。

新しい1シリーズのエアコン吹き出し口は、それ自体を意識させないレベルにまで小さくなり、特に新しい1シリーズでは左右の吹き出し口まで、これまでに見たこともないようなデザインに様変わりした。結果、インパネのデザインは極めてシンプルで、およそ物理的なスイッチが存在しなくなった。カーブドデザインのメーターパネルが採用されたのも、他のBMW同様の変化である。

一方でその物理的なスイッチはセンターコンソールに集約されて、これまでそこで幅を利かせていたiDriveのロータリースイッチは姿を消し、シフトレバーもコンパクトなノブスイッチに改められているから、この辺りのデザインはかなり大きく変化している。勿論カーブドディスプレイはタッチパネルとなっているから、そこからの操作と、最小限のセンターコンソールにまとめられた物理スイッチの両方で操作できるものもあって、機能的に面倒だと思えるような部分はなかった。(ブレーキホールドだけは別だが)

◆ハイスピードでその真価を発揮する
3気筒エンジンに変わりはない。1.5リットルであるが、今回は48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載することで、システム出力は170psと、先代と比べて飛躍的にパフォーマンスが向上した。もっとも、クルマを何の予備知識もなく借り出して街の中を走ってみると、先代と大きくは変わらない印象である。

日本のタウンスピードは平均車速にするとほぼ20km/h程度。もちろん止まっている時間を計算するからそのようになるのだが、実際に走っても、50km/h程度が精いっぱい。従って、パフォーマンスを発揮する場所がないということからか、前述のような印象となった。

ところがいざ高速道路に乗り出してみると、街中での印象が嘘のように劇的に変わる。まず街中でははじめのうち比較的ひょこひょこと跳ねるなぁと思っていたものが、ピシッとフラットな乗り心地に変わり、パーシャルからの加速感などにも俄然力強さを感じさせるようになる。

過去に経験したドイツアウトバーンのスピードは、今でこそかなり抑えられていると聞くが、当時は追い越し車線に限って言えば、150〜160km/hは当たり前。常にバックミラーに目を光らせていないと、とんでもないスピードで近づいてくるクルマもある。だから、常に追い越し車線を我が物顔で走れるクルマは限られているわけで、日本のように「ずーっとどかない」はあり得ないのだ。

そんな環境で作られているクルマは、やはり高速に力点を置いて作っているから、ハイスピードになるとその真価を発揮するのだろう。断っておくが、ドイツは郊外の一般道でも普通に100km/h以上で飛ばすクルマがいる。とにかくそんな環境なのである。

◆高度に成熟したクルマになった
以前、少し7速のDCTについて気になる点もあったが、今回はそれもなし。先代は先々代のFR駆動からFWD駆動への転換もあって、少しバイアスのかかった見方をしていたかもしれないが、今回はそれも無しで、いい意味でも悪い意味でも普通のクルマであることに拍車がかかってはいるものの、そのまとまりの次元は極めて高度。一言で言ってまさに高度に成熟したクルマになった。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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