フィアット600e《写真撮影 島崎七生人》

フィアットの電動車・第2弾がこの『600e』。「Nuova500」をオマージュしたICEの『500』の姿を進化させた『500e』に対し、この600eは、ラインアップ的には、むしろ旧FCA時代のICEの『500X』の流れを汲むそのBEV版……と受け止めたほうが腑に落ちるのかも知れない。

車名は1955年の600からの引用。ただしクルマ全体を見渡すと、室内では円の下を落としたメーターフードの形状とサッパリとしたインパネ全体、2本スポークのステアリングホイールに見た目の名残がある程度。

外観では拡大解釈すればルーフからリヤウインドゥにかけての大らかな丸みに(知っていれば)600の面影を感じるかも……といったところだ。500eとの繋がりでは“チコちゃん顔”の愛嬌のあるマスクは、このクルマを見て眉間にシワを寄せる人はまずいないだろう……そんなキャラといえる。

◆“適度な”洒落具合がフィアットらしい
シートはFIATモノグラムエコレザーシートと呼ばれるロゴを柄の代わりにちりばめたシートなど、適度な洒落具合がフィアットらしい。ただ“適度な”と書いたように決して高級、上質を訴求するクルマではないので、インナートリム部分の樹脂素材などはアッサリとした仕上げだ。

実用性は十分だが、実は我が家のシュン(乗り心地・NVH評価担当、柴犬)を後席に乗せる際に使用する足元スペースを埋める“自作の台”があるのだが、これが自宅のICEの500の後席足元には収まるのだが、500eでは何と惜しいところで収まらなかった(天板のサイズは295×560mm)。

ベースとなったプラットフォームは旧PSA時代に開発されたeCMPで、ジープ『アベンジャー』、プジョー『e-2008』らと出自は共通。定格出力62.0kW、最高出力115kW、最大トルク270Nmの性能のモーターと総電力量54.06kWhという駆動用バッテリーで、一充電走行距離493kmというスペックをもつ。

◆カジュアルなドライバビリティが持ち味
そして実際の走りだが、フィアットらしいカジュアルなドライバビリティが持ち味といったところか。乗り味そのものはおっとりと大らかなもので、走行中、我が家のシュンも可もなく不可もなくといった感じで後席で大人しくしていた。

唯一ブレーキについて、そのタッチと、ペダルの踏み込み時に立つメカ音(?)は気になったところで、とくに音は試乗中の同乗者も気になっていたかもしれない。そうした点でいえば、正直なところクルマとしての仕上げレベルでは最初のBEVだった500eのほうがやや上に感じられた。

一方で充電口は左リヤフェンダー部に2口あり(ソケットが斜めに配置され、苦心して設置した跡が窺われる)、500eのようにあのバズーカ砲のようなアダプターを使用せずとも急速充電が可能になった点が非常にありがたい。ハンズフリーパワーリヤゲートはリヤバンパー下に足を入れると開く仕組みで、閉める際は操作を行なうと、ピッピッピッ、バタン!と閉まる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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