DS 4 新型《写真撮影 中野英幸》

こんな表現方法があったとは
これまでCセグ車のなかったDSオートモビルズから、ついに送り出された『DS 4』もまた、すべてが独特な、非常に興味深い1台だ。

まずスタイリングに驚く。2022年1月にパリで開催された「国際自動車フェスティバル」において、「Most Beautiful Car of the Year(=“世界で最も美しいクルマ”)」を受賞したというだけあって、目にした瞬間から引き込まれる何かを感じる。とくに真横や斜め後ろから眺めた姿は、一般的なCセグ車とは一線を画する。個人的にハッチバックだとがんばっても限度があると思っているのだが、こうした表現方法があったとは恐れ入る思いだ。

驚いたのは外見だけではなく、非常にユニークなインテリアも、これまた見れば見るほど引き込まれてしまう。直線的なものと3D形状の曲面を織り交ぜた幾何学的なデザインは、シンプルさと複雑さが巧みに同居していて、独特の雰囲気を醸成している。

内外装デザインは一見の価値アリ
10インチタッチスクリーンは、最近よくあるフローティングマウントではなく、エレガントな雰囲気を崩さないようなめらかな面でビルトインとされていて、一般的なエアコン吹き出し口を廃して、継ぎ目のないダッシュの中央部に“DS エア”と呼ぶベンチレーションシステムを設けたような斬新な試みも興味深い。運転席のドアトリム上端に4席分のパワーウインドウのスイッチが配されているのも、見やすくて押し間違えの心配もなく、見栄えもよくナイスアイデアだと思う。

とにかくこの内外装デザインは一見の価値アリだ。しかも、デザインが本質のクルマであることには違いなさそうだが、先進装備も充実しており、収納スペースや各部の使い勝手にもかなり配慮されていることもうかがえた。

まさしく「路面に吸いつくような」走り
パワートレインは、1.2リットル直3のガソリン、1.5リットル直4のディーゼル、1.6リットルのPHEVという3タイプが用意されている中から、今回はガソリンをドライブした。

いざ走ってみて、ドライブフィールの仕上がりにも感心した。このプラットフォームのポテンシャルの高さは、すでに同門の別の車種でも確認しているが、それともまたひと味違う新感覚の走りを味わわせてくれた。

よく「路面に吸いつくような」と表現する、まさしくそれ。ストローク感たっぷりのしなやかでなめらかに動く足まわりが印象的だ。それでいて姿勢変化は抑えられていてフラット感もあり、ゆるやかな中にも動きは正確で一体感があったりと、相反する要素を巧みに両立させていることにも感心する。

ワインディングロードを軽く流すと、一体感のある走りが気持ちよい。動きがつかみやすくて姿勢をコントロールしやすく、わざと挙動が乱れそうな操作をしても乱れが小さい。中立から微舵の領域の味付けが絶妙によくできている。レーンチェンジを試みると、なんだが気づいたらもう終わっているかのような印象で、横Gのピークが立ち上がらないあたりの感覚も独特だ。

直進性のよさも印象的で、ACCの車線維持機能をONにしなくても、自然な感覚で車線に沿って走っていける。これなら長距離を走っても全然疲れずに済みそうだ。

見た目も中身も触れたすべての人にとって印象に残るように
1.2リットルのガソリンは、性能的には十分であることは同門の他車種でも確認済みとして、3気筒である点が気がかりだったのだが、4000rpmあたりまで回転を上げないかぎり、ごく普通に流している分にはエンジンの音を耳障りに感じることはない。もはやエンジンか何気筒かなど気にならないほど音や振動についての手当てが行き届いている。モード選択によりサウンドの演出もある。

このところ旧ステランティスの送り出すクルマには感心させられてばかりだが、DS 4には際立つものを感じた。同門の各ブランドがそれぞれの特色を引き出している中でも、DS 4は非常に巧く差別化が図られている。

フレンチプレミアムブランドとして、後発だからこそなおのこと、見た目も中身も触れたすべての人にとって印象に残るようにと、これでもかというほど努力したことが伝わってくる仕上がりだ。世のCセグ車の中でも、ひときわ異彩を放つ1台に違いない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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