ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》

11代目となる新型『シビック』が登場した。まだプロトタイプモデルだが、ホンダの栃木研究所テストコースにて試走する機会を得たのでレポートしよう。

◆今やグローバルスタンダードに

シビックは1972年に初代モデルが登場し、その後「スーパーシビック」、「ワンダーシビック」、「ミラクルシビック」等とニックネームで呼ばれるようになり、10代目までに全世界で2700万台という販売台数を誇るまでに成長した。今やグローバルスタンダードとしてホンダを代表するモデルといっても過言ではない。

日本国内では、2001年に『フィット』が登場するとその人気の高さに押され販売規模が縮小。その一方、世界市場では人気が高まり各国の要望に応えるような形でボディーサイズが拡大していった経緯があった。8代目、9代目からは、英国のスウィンドン工場で欧州仕様の生産が始まり、日本国内では逆輸入しなければ手に入れられない「タイプR」といった貴重なモデルもあった。今回の11代目モデルは、10代目と同じく埼玉県の寄居工場で主に生産され、国内や欧米にも供給されることになる。


今回試乗したモデルは「EX」と「LX」の2グレードで、5ドアハッチバックのボディースタイルが与えられている。搭載するエンジンは1.5リットル直噴ガソリンターボエンジンで、シリンダーブロックやクランクシャフトまわりを強化されたものだ。トランスミッションは、「6速マニュアルトランスミッション」と「無段変速のCVT」が用意されていて、前輪のみを駆動する「FFモデル」としてパッケージングされている。

◆CVTの特性が見直された11代目


まずは、CVTモデルに乗り、高速周回路で試した。

走り始めからエンジンのトルクが大きく引き出され、軽快な加速フィールが与えられていた。実はエンジン始動直後から感じていたのだが、エンジンの振動が非常に少なく、またエンジン音も極めて小さく抑えられている。その傾向は車速を80km/h、100km/h、130km/hと上げていっても変わらず、室内では極めて静かで上質な空間が維持されている。

今回、アクティブクルーズコントロールが0〜135km/hまでをカバーする全車速追従式となったこともアピールされている。

ステアリングを通して感じられるのは、非常にしっかりとした手応えと優れた直進安定性で、その辺りはボディー剛性や拡大されたリアトレッド等も影響も好作用しているようだ。


CVTの特性も見直された。シフトポジションは、「PRND」の4ポジションで構成され、従来モデルのようなSポジションは省略された。それに代わり、ドライブモードセレクトスイッチが追加され、デフォルトでは「ノーマルモード」の他、「エコモード」と「スポーツモード」を選択できるようになっている。スポーツモードを選択すると、従来のシフトレバーでSポジションを選択するのと同様なCVT制御となり、より積極的にエンジンパワーを引き出しながら走ることができる。

100km/hの巡行では、エンジン回転が1900回転ほどに抑えられ、10代目と比較して3%ほど向上した空力特性と相成り、優れた燃費を達成している。

◆正確性が増したライントレース性、MTの操作性は


次に、ハンドリング路へ移動しMTモデルを試す。

トランスミッション自体は、10代目のものをキャリーオーバーしているが、ミッションマウントの剛性を高めシフトストロークを小さくして操作性を向上させている。

ハンドリング路を走り始めると、まず旋回性能が圧倒的に高まっているところに驚かされる。サスペンションの動きがしなやかで4輪が路面を正確に捉えている。ステアリングのライントレース性が高まり、正確性が増した。シャシー性能の高さから、よりハイパワーなエンジンの搭載も可能であると思わせられ、2022年に登場するとアナウンスされている「タイプR」への期待も高まるのだ。

マニュアルトランスミッションの操作性は、確かにショートストロークで小気味いい。ただし、シフトレバーの位置がコンソール中央よりやや左寄りで右ハンドルのドライバーの位置からは少し遠く感じてしまうのが特に左コーナーで感じられるのだった。恐らく欧米仕様をメインに設計された結果なのだろう。



◆完成度の高さに「タイプR」への期待も高まる

コクピットは液晶のメーターや大型のセンターディスプレイ(タッチモニター式)が採用されるなど先進的な仕様となり、操作性、視認性ともに高められている。

10代目が派手な造形のボディー外観とドライバーオリエンテッドなインパネデザインでスポーツ性の高さを表していたのに対し、新型はエクステリアもインテリアも全体的に洗礼されたデザインが採用されている。


ホイールベースが拡大し後席の足元スペースも広く、セダンとしての実用性も高い。また、ハッチバックのリアゲートは樹脂製で軽量化とデザインの自由度を高めており、またフロントエンジンフードは、軽量なアルミニウム製で前後バランスを向上させている。

ホンダは、2022年にe:HEVのハイブリッドモデルとハイパワーなタイプRの登場を予告しており、今回試乗した11代目モデルの完成度の高さ、走りの良さから今後に続くモデルへの期待も大きく高められたのだった。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 先代(手前)と新型(奥)《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型《写真提供 ホンダ》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(LX・6MT)《写真撮影 中野英幸》 ホンダ シビック 新型(EX・CVT)《写真撮影 中野英幸》