VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》

今回で歴代8代目となる新型『ゴルフ』には「eTSI」というマイルドハイブリッドのエンジンパワートレインが搭載された。今回は1.5リットルエンジンを搭載する『ゴルフ eTSI R-Line』というスポーティグレードに試乗し、その特徴を探った。

◆1リットルの「Active」との違いは

新型ゴルフは全長が15mm伸びたが、車幅は4mmほど小さくなっていて、世の中の車が様々な規制の関係で大きくなっている中、逆に小型化されているところはむしろ日本の道路使用環境に適していて望ましい。

R-Lineのパワートレインは1.5リットルの4気筒でマイルドハイブリッドとなっている。ジェネレータースターターモーターが搭載される48V仕様で、運転席の下にはリチウムイオンバッテリーを備えていて、エンジンをアシストするという機能だ。


「マイルドハイブリッド」なのでEV走行はできない。エンジンの始動時にはジェネレータースターターモーターを稼働し、加速時にはジェネレーターを駆動モーターとしてベルトドライブだがエンジンをアシストする。16psほどの弱い力ではあるが、燃費を稼ぐという意味では十分な力だと言える。

ジェネレーターモーターなので駆動用の大きなモーターやジェネレーターを使うよりもコンパクト。従来のエンジンにポン付けするような形でマイルドハイブリッド化できるので、コストや生産性、燃費効果にもとても優れている。

トランスミッションは7速のDSGを搭載。新型ゴルフのバリエーションにある、パワートレインが1リットル仕様のグレード(Active Basic/Active)も同じ7速を搭載しているのだが、エンジンは1リットル仕様が3気筒マイルドハイブリッドだから、かなりパワー的にも走りにも差別化が図られている。


その表れとして、1.5リットル仕様のリアサスペンションには4リンクの「マルチリンク式」が採用されている。1リットル仕様は「トーションビーム式」なのである。

R-lineは、フロントサスペンションのマウントサブフレームがアルミダイキャスト(1リットル仕様のグレードは鉄)でできており、非常に精細に作り上げていて車のバリエーションにあったキャラクター作りをしている。


デザインは大きく変化したように見えないが、実は細かいところで大きく変わっている。特に空力特性が向上して、今までのCd値0.3から新型は0.275まで小さくなり非常に空力性能が優れている。

コクピットを見渡すと正面のメーターに10.15インチ、センタークラスターには10インチの大型ディスプレイを搭載し、二段構えでメーターとインフォテイメンツを表示している。

「ドライビングアシスト」という運転支援機能に関する操作系も集約されている。今回の新型ゴルフのドライビングアシストは『ティグアン』に採用されたものとほぼ同じで、ストップ&ゴー機能付きで210km/hまで運転支援してくれる。新世代の新しいシステムで、レーンキープアシスタントやエマージェンシーブレーキも備えているタイプとなった。

◆車としての質感をうまく引き出すサス


過去に『ゴルフ5』で一気に質感が高く、走りの良い車になったのだが、それがあまりにも良すぎて、そこからなかなか大きく進化する印象が今までなかった。ところが今回の新型ゴルフは、パワートレインが電動化されバッテリーを搭載したりなどで重量が増加する要素を持っている。それに対してサスペンションをしっかり作り込み、車としての質感をうまく引き出すようにしているのだ。

少し路面の悪いところで走行してみると、タイヤのゴツゴツ感がドライバーに結構伝わってきた。無理やり打ち消してどんな場所を走っているのかわからない、絹の上に乗っているかのようなスムーズな乗り心地というわけでは決してない。R-Lineというスポーティーなグレードなので若干硬めの設定にしているのかもしれない。

一方でステアリングが非常にクイックでバリアブル仕様になっているためロックツーロックは僅か2回転だ。センター付近も14.1という非常にクイックなステアリングレシオを持っているので、ワインディング走行でもハンドルの操舵量が少なく、90度ほどハンドル角を切ればヘアピンコーナーもクリアしてしまうような感覚だ。Uターンも楽で、最小回転半径5.1mという小さな回転半径を達成できていて取り回しも非常に良い。

DSG関係の制御は、シフトスイッチが全て電気式になったので誤作動を防ぐ仕様となった。


シフトレバーも通常のレバーではなく、スイッチ状の突起物の小さなレバー方式になった。間違って走行中にリバースギア方向に動かしてしまっても電気式のためリバースに入れて良い速度域にならないと入らないようになっている。よってシフトミスを抑制することができている。

デジタル系の制御が走行モードだけではなく操作系やドライビングアシスト、インフォテイメンツ等全てにおいてデジタル化が進んでいる。

センターディスプレイの下にタッチ操作のスイッチがあり、エアコンやシートヒーター、ナビの画面のズームアップ等を指で行えるよう操作性が高められている。毎回視線を向けなくても、その方向に手を持っていき操作すると切り替わるので、常に前方を見ながら操作することができる。ただ初めて乗ってすぐわかることではないので使い方を覚えてから走るとすぐにその効果が体感できるはずだ。

『ゴルフR』や『シビックタイプR』のような過激なスポーツモデルではないが、ハッチバックでコンパクトなスポーツモデルとしてはキビキビとした走行性能を楽しめるというところは非常に良い。環境に配慮しながら安全性も十分な完成度を持たせており、「新世代のゴルフ」としての役割を与えていると言える。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》 VVW ゴルフ eTSI R-Line《写真撮影 中野英幸》