マツダ MX-30 EV《写真撮影 中野英幸》

長く運転をしていると身に沁みついた走行感覚というものがある。エンジンで駆動するクルマが加速するときのあの骨太な感覚だ。だからEVの加速感には違和感がある。いいとか悪いとかではなく、こう、アクセルペダルを踏んだ瞬間から、なにかが上滑りしているみたいな、こそばゆい感覚だ。

ところが、『MX-30 EV』は違った。走り出しから違和感が全くないのである。スムーズで、なめらかなのだが、いたって「ふつう」。ガソリンエンジンのクルマを走らせているようなしっとりした安心感すらあるのだ。出力の出し方が絶妙なのである。

◆今、存在するクルマだからこそ


と同時に、音にも関係があるようだ。まず、電気自動車で聞こえてくるヒューンという高周波の音がない。いや、あるのだろうが耳に届かない。逆に加速を実感させるような音の味付けがしてある。これが、なんとも心地いい。

せっかく電気自動車なのに、そんな音の演出などありなのかと問われるところだが、ワタシ的にはあり。いや、これこそ必要!という気分だ。電気自動車は静かだと思われるけれど、実際は、ひゅーん音やら、風切り音やら、ロードノイズ(タイヤが地面をたたく音)がする。エンジン音がないので、よけい耳につくのである。でも、音の演出のおかげでそうした音も中和している感じがする。

たぶん10年後なら、電気自動車はもっと作り方も受け入れ方も違ってくるだろう。でも、エンジンを搭載しているMX-30と同じデザイン&内装で、今、存在するクルマなのだ。ユーザーが期待しているものも、テスラのようなぶっとんだ感覚ではないはずだ。

◆乗り心地はすごくいいけれど


走行中に減速するときは、ハンドル脇にあるパドルシフトを使うと、まるでシフトダウンしてエンジンブレーキがかかったかのように減速してくれる。他社の電気自動車ではアクセルペダルを活用したワンペダル方式で、ペダルから足を離すときゅーっと減速するものもあり、これはこれで使いやすいけれど、パドルシフトはガソリンエンジン車でも使い慣れた機能なのでこちらも扱いやすい。

ただ、赤信号手前でパドルシフトを使って回生ブレーキを強くして減速すると、停止したあとも解除されない。ゆえに、青信号になって発進するとアクセルペダルが重い。一時停止したら自動的に解除してくれたほうが、使い勝手がいいと感じるのだが、どうなんだろう。

バッテリーなどが床下にあるので低重心。ハイブリッドと乗り比べると、明らかにコーナリングが安定して、乗り心地はすこぶるスムーズだ。だけど、残念ながらまだ一回の充電で走れる距離が短く、国交省審査値のJC08モードで281kmとのこと。寒いときにエアコンをかけたり渋滞にはまったりしたら、実際に走れる距離は3分の2〜半分くらいを覚悟したほうがいいかもしれない。

ということで、乗り心地はすごくいいけれど、お勧め度は★ふたつということで。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

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