日産 キックス《写真撮影 小林岳夫》

『キックス』は日本国内では実質的に『ジューク』の後継となるコンパクトSUVで、タイ製の輸入車だ。エンジンは直列3気筒1.2リットルをベースにしたハイブリッドのe-POWERのみを搭載して、ノーマルエンジンは用意されない。

2021年1/2月の登録台数は、1か月当たり4700〜5000台で『プリウス』などに近い。『ヤリスクロス』や『ライズ』に比べると少ないが、e-POWERのみの設定で、Xの価格が275万9900円に達することも考えると堅調に売られている。

◆燃費を節約するには「S/エコモード」を


運転感覚は、モーター駆動が中心のe-POWERとあって、加速は滑らかでノイズは小さい。モーター駆動だからアクセル操作に対する反応が機敏で、動力性能も十分に高い。巡航中にアクセルペダルを踏み増した時の駆動力の高まり方は、ノーマルエンジンであれば、2.5リットル並みと受け取られる。

Sモードとエコモードでは、アクセルペダルを戻すと同時に回生による充電が積極的に行われ、速度を大きく下げる。アクセル操作だけで速度を自由に調節することも可能だ。

この点がe-POWERの特徴だが、独特の減速感を嫌ってDレンジでフットブレーキを作動させながら走ると、燃費効率が下がってしまう。ほかのハイブリッドと違って、e-POWERではブレーキペダルとの協調制御が行われないからだ。燃費を節約するには、S/エコモードを使う必要があるので注意したい。購入時には必ず試乗してS/エコモードで走り、違和感が生じないか確認したい。

◆コンパクトカー感覚で運転できる


全高は1610mmとSUVでは少し低いから、カーブを曲がる時の腰高感も抑えられ、コンパクトカーに近い感覚で運転できる。特に走行安定性が優れているわけではないが、不安なく軽快に運転できて馴染みやすい。

乗り心地は50km/h以下では少し硬く感じる。キックスは海外では2016年にデビューしており、2020年に登場したe-POWER搭載車は大幅に造り替えたものの、ベースの部分は現行『マーチ』から採用を開始したVプラットフォームだ。設計が新しいとはいえない。

居住性については、後席の足元空間が少し狭いが、荷室の奥行寸法には十分な余裕を持たせた。このスペース配分は、海外のクルマに多いパターンだ。日本で販売されるのはe-POWERのみだが、車両自体は実用性を重視して開発されている。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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