ヤマハ アクシスZ《写真撮影 雪岡直樹》

なんて、すばしっこいのだ! 混雑する都心を走りまわっていると、つくづく感じる。

なんといってもコンパクトな車体が、ヤマハ原付2種スクーター『アクシスZ』の持ち味。足まわりは原付1種も採用する前後10インチで、見るからにこじんまりとして乗りやすそう。シート高は770mmと低く、足つき性に不安はないが、そもそも車体重量が100kgしかないため、小柄な人でも片足立ちで地面に足を下ろせば車体を支えるのは容易く、取り回しに苦労することはないはず。

そんな軽快な車体に、余裕ある125ccエンジンを積むのだからスイスイ走るに決まっている。空冷4ストロークSOHC2バルブ、最大出力8.2PS/6500rpmと、スペック的には特筆すべきポイントはなさそうだが、実際の走行フィーリングは発進加速から充分すぎるほどに力強い。アクセルをしっかり開けてやれば、市街地のクルマの流れなど簡単にリードできる。


よく走る信頼性の高いエンジンと満足しつつ、ヤマハの公式ウェブサイトを確かめてみると、「走り」と「環境性能」の融合“BLUE CORE”エンジンとある。驚くなかれ、アルミ鍛造ピストンとオールアルミ製ダイキャストシリンダーが採用され、ローラーロッカーアームやオフセットシリンダーなども取り入れているのだ。

WMTCモード値54.6km/Lは、ヤマハ125cc スクータートップの低燃費。これだけ良好な加速フィーリングで走りながら、抜群にエコでもあるのだから頭が下がる。ヤマハ原2スクーターの進化はめざましい。

◆ゆったり座面と足もとで快適

日常の足として使うなら、片道1時間以上走ることはなかなかないだろう。しかし楽しくて、気がつけば半日乗り続けている。軽量ボディながらフレームの剛性がしっかりとあり、意外なほど乗り心地がいい。

大きな段差を乗り越えてもふらつくことはないし、フロントのディスクブレーキもタッチが良くしっかりと効く。機械式ドラムのリヤもきちんと調整がされていて、コントロールしやすく制動力に不満はない。

快適だなと感じるのは、シートのおかげ。座面が666mmと長く、座り方の自由度が高い。また表皮が滑りにくく、加速時もしっかりお尻をホールドしてくれる。パッセンジャー側がわずかに上がって、その段差が尾てい骨での踏ん張りを支えてくれている。先端にかけて絞り込まれて、足を出しやすいのもいい。また、足を置くフロアボードがまっ平らなのも姿勢をラクにしてくれる。


シート下トランクは容量約37.5リットルと広く、積載力も頼もしい。小物類の収納に便利なフロントポケットもあり、コンビニフックも折りたたんでコンパクトに収納されている。

また、メーターはシンプルで見やすい指針式。速度計の文字が大きく、140km/h超まで目盛りがふってある。燃料計の右上にはアクセルを穏やかに開け、燃費に優しい走り方をしているときにつくECOランプも埋め込まれる。

◆遠出も近所の商店街も、いつも一緒に

小径ホイールのスクーターらしく、コーナーもくるっと小さく回れ、Uターンも容易い。行き止まりになるのではないかという狭い道にも気兼ねなく入っていける。交通量の多い幹線道路も難なく走行できる動力性能を持ちながら、歩行者や自転車でしか入れないような路地裏もストレスなく走れる。


遠出もできそうだが、普段は商店街への買い物にもフル稼働してくれるだろう。静粛性に優れるマフラーや街に馴染むスタイルで周囲を威圧しない。車体色はマットグリーンのNEW COLORを含め全5色。車体価格は税込みで24万7500円と、リーズナブルな設定としているのが嬉しい。

LEDヘッドライトや液晶のマルチファンクションメーターパネルが良ければ、上級仕様車である『シグナスX』や『NMAX』というチョイスとなっていくだろう。しかし、乗って触って感じるのは「アクシスZ」は、決してただの廉価版ではないということ。ガソリン給油口が高い位置にあるフロントのインナーパネルも樹脂カバーはキレイだし、折りたたみ式タンデムステップも質感がいい。スタイルも飽きが来ないものだろう。

価格も含み総合的に見ると、1990年の初代アクシス90から30年以上のロングセラーが頷ける。運転に必要なAT小型限定免許は、最短2日間で教習終了できる。乗り換えや買い足しはもちろん、最初の原2スクーターに選んでも決して後悔はしないだろう。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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