トヨタ クラウン 新型(ハイブリッド Gエグゼクティブ)《撮影 丸山誠》

生まれ変わった15代目クラウン
トヨタ『クラウン』は1955年に誕生。日本の高級車をけん引してきたモデルといって過言ではない。だが国内でレスサスブランドを展開してから、その立ち位置は微妙に変化。15代目の新型クラウンは、初代コネクティッドカーとして登場した。

最初に新型を目にしたのは、2017年の東京モーターショーだった。フロントグリルを見ると、まるで大きな口を開け、顎(あご)を突き出しているかのように見えるインパクトあるデザイン。ショーモデル用にデフォルメしたと思っていたが、関係者に聞くとほぼ市販車のデザインだというからとても驚いた。先代も登場時は奇抜なデザインと感じだが、実際街を走ると不思議と街並みに溶け込んだ。

このデザインもそうなればいいが、初期受注は好調なようだ。従来はスポーティ系がアスリート、コンフォート系がロイヤルというわかりやすいグレード名と外観デザインだったが、新型は基本的にデザインを統一。6ライトウインドウを採用し、クーペ風のデザインに仕上げた。アスリート系のユーザーは受け入れやすいデザインだが、ロイヤル系を乗り継いだユーザーの目にはどう映るのだろうか。太いCピラーを懐かしむユーザーもいるはずだ。

ちなみに従来ピラーに付けられていたクラウンのエンブレムは、新型でもオプション(ピラーエンブレム3700円)で用意されている。

リアデザインにも高級さを
リヤデザインで残念なのがコンビネーションランプ。当然LEDタイプでRS仕様は、流れるように点灯するLEDシーケンシャルターンランプを採用しているが、デザインに高級さがない。レッドのレンズ部の色味がよくなく、作り込みも感じられない。

リヤのエキゾーストパイプは「RS」が4本出しで、それ以外も左右2本出しというスポーティなデザインだが、そうした雰囲気にコンビランプのデザインが似合っていない。輸入プレミアムブランドの多くのモデルは、ナイトドライブでリヤコンビランプを見ただけで車種を判別できるが、新型クラウンにはそういった特徴的な演出がないのが残念だ。

BMWとのコラボ効果がここにも?
テレビCMでドイツのサーキット、ニュルブルクリンクでの走行テストのシーンが流れる。これを見るとより期待値が高まる。結果を言うと新型クラウンのハンドリングは確実に進化した。低速域から高速域までスムーズなハンドリングでとても扱いやすい。サスペンションもよく動く印象で、荒れた路面での突き上げ感が少ないのはボディ剛性がしっかりしているためだ。

3.5リットル V6マルチステージハイブリッドシステムを搭載する「RSアドバンス」は、モーターならではのレスポンスでいい加速感を見せる。このユニットは先代レクサス『LS』から譲り受けたもので、低速時のEV走行からエンジン始動する瞬間はモニターを見ないと気づかないほどスムーズ。

ハンドリングやサスペンション性能が向上したのは、TNGAプラットフォームの採用が効果をもたらしている。最新のレクサスもそうだが、フロントサスペンションの取り付け部にアルミダイキャスト製のサスタワーを取り付けて補強している。この部分を見るとBMWのそれとそっくりだ。フロントサスまわりの剛性アップが走りの洗練さにつながっているわけだ。

トヨタはBMWとのコラボで『Z4』をベースに次期『スープラ』を開発しているが、車種は違うがBMWとのコラボの効果はこのように徐々に表れている。

スポーティさならターボのRS系
最上級グレードとしての高級感は満足できるが、RSアドバンスを名乗るからにはスポーティさもチェックしたい。トランスミッションは10段変速のシーケンシャルシフトマチックでパドルシフト付きだ。アクセルを大きく踏み込むとモーターアシストを伴った豪快な加速感。だが変速時にシフトが一瞬抜けたような加速をしてしまうのだ。電気式無段変速を制御で10段にしているのだが、キレのある変速でないためスポーティ感がいま一歩。

スポーティさを重視するなら2リットル直噴ターボのRS系がいい。加速感は3.5リットルに負けるが、2リットルはトルコン式の8速ATを組み合わせているため変速にキレがあり、カーブをテンポよく走り抜けられる。

残念なのは走行モードを切り替えるドライブモードセレクトの操作方法。RS系はスポーツS+/スポーツS/ノーマル/コンフォート/エコ/カスタム/スノーの7モードを設定。これ以外のグレードではスポーツ/ノーマル/エコ/スノーの4モード。どのモードを選ぶのにもモニター下のハードキーを押して、モニターの画面でモードを選ぶ必要があるため瞬時に変更することができない。

モードセレクターはコンソール部分に独立スイッチとして設定してほしい。幸いクラウンのセンターコーンソールには、大きなカップホルダーの周りにスイッチを付けられるスペースが余っている。最近のクルマはスイッチスペースの取り合いになっているが、クラウンには十分に余裕があるのだから…。

「コスト削減」が感じられてしまう作り
この日は、半日でクラウン3グレード、カローラスポーツ3グレード、合計6台を試乗するというタイトなスケジュール。カローラとクラウンはトヨタを代表する車種。歴代のクラウンの試乗会ではじっくり味わう時間が設定されていたが、今回は発表会も試乗会もカローラと一緒だった。

これらはコスト節減のためだろう。そのコスト削減がクラウンにも表れてしまった。何と高速走行時に運転席側ドアミラーとルームミラーが振動するのだ。速度100km/hで横風がやや強い走行条件とはいえ、こうした高級車ではありえないこと。今では軽自動車でさえこうした状況はほとんどない。

ニュルブルクリンクサーキットでシャシーとサスペンションを鍛え上げたのは評価できるが、ミラーが振動することをなぜ気づかなかったのか不思議でならない。

コネクティッドカー代表としてのクラウン
新型クラウンは、初代コネクティッドカーというのも特徴。車載通信機DCMを全グレードに標準搭載し、Tコネクトサービスを3年間無料で提供する。この中には車両情報を活用して、トヨタ側がクルマの状態を知ることもできる。膨大なデータを蓄積して故障を事前に予測することも可能になるわけで、リコールなどの不具合を早い段階で知ることができるわけだ。

メーカーはクルマの開発に膨大なコストがかかるが、そのコストの中に含まれるのがリコール対策費用。メーカーは車両データを集めることで、故障や不具合の対策費用を大幅に削減できる可能性がある。こうして考えると3年間無料ではなく、期間を設けずに無料とするべきだろう。

大胆に変身した15代クラウンのベストバイは、やはり2.5リットルのハイブリッド。スポーティさを重視するならRS系、コンフォート重視ならGがオススメ。ミラーの件は残念だが、これが個体差であることを願いたい。

日本の道を走る高級車として、輸入プレミアムブランドにも負けない乗り心地を実現したことは高く評価できる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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