ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》

今年の初めに新型となった『マジェスティS』は、昨年デビューした『NMAX155』と並び原二(125cc)以上、ビグスク(250cc)未満のクラスにおいてヤマハの双璧を成すモデルだ。最近とみに注目を集める150ccクラスだが、元々はグローバル基準で作られたモデルである。原付並みの軽量コンパクトな車体を生かしたフットワークの良さと、2人乗りができて高速道路も乗れる機動力の高さという両方のメリットを併せ持っているのが特徴だ。

その最新型であるマジェSの2018モデルだが、改良点としてはヘッドライトまわりをフルLED化しフェイスを一新。12V DC電源をフロントポケットに採用するなど、主に外観をブラッシュアップしている。機能面でも2016モデルで欧州仕様のフロントフォークを採用するなど足まわりが強化されたばかりなので、走りの実力という点でも未だ一線級と言っていいだろう。

シート高は795mmとスクーターとしてはやや高めで、逆にハンドルは低めというスポーティなライポジ。特筆したいのはフラットフロアを採用していることで、乗り降りが抜群にしやすく、街を走り回りながら次々に用事をこなしたい場合などは便利。コンビニフックに加え、シート下スペースも32リットルとクラス最大レベルのキャパを備えているので買い物などにも重宝しそうだ。

気になるのは同じ150ccクラスのNMAXとの比較だろう。最高出力15psや前後ディスクブレーキに前後13インチホイールになどスペック的に共通する部分も多いが、一方で車重は145kgとNMAXより17kg重く、ホイールベースも55mm長い大柄な作りになっている。簡単に言うと、NMAXは軽量・コンパクトかつ高剛性な車体を生かした機敏な走りがメリットであるのに対し、マジェSの強みは前述のとおり、乗り降りし易さや収納力といった日常での使い勝手の良さと言っていいだろう。加えてNMAXの先進的なデザインに対して、マジェSはオーソドックスなスクーターらしいスタイルが与えられている。そこに親しみというか安心感を持つユーザーも多いことだろう。

エンジンは低中速トルクに厚く、鼓動感もあってワイルド。瞬発力はNMAXに軍配が上がるが、マジェSも高速になるほどジワジワと速度を乗せてくる感じだ。ハンドリングも独特で、先代モデルからの伝統でもあるフロントにやや粘りのあるタイプ。NMAXのようなヒラヒラ感はないが、それが逆にどっしりとした安定感にもつながっていて高速道路でもよく走る。

また、新型マジェSには電源ソケットが装備されたのに加え、昔ながらのバーハンドルタイプなので、スマホなどのITガジェットをマウントするにも都合がいいはずだ。十分な厚みと広さが与えられた本格的なタンデムシートなども含め、マジェSはショートツーリングもこなせるスクーターと言えそうだ。

燃費的には新型ブルーコアエンジンを搭載するNMAXにやや劣るが、いずれにしてもリッター40km近い低燃費なのでさほど問題にはならないはず。一点、残念なのはABSが設定されていないことだ。

マジェSは、スクーター本来のマルチに使える便利さに、プラスアルファの走りの楽しさを加味した懐の広いスクーターだ。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★★
快適性:★★★★★
オススメ度:★★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》 ヤマハ マジェスティS《撮影 山家健一》