レクサス LS 新型の先進安全機能。写真は歩行者を認識する「アクティブ操舵回避支援」

6月に発表になったレクサス『LS』に搭載された、先進の予防安全支援システム。速度調整からハンドル支援まで積極的に採用され、おそらくN社なら“ぶっちぎった”広告宣伝をするところだろうが、トヨタはあくまでも「自動運転につながる技術」という表現にとどめる。

運転支援が新車購入を左右するこのご時勢に購入意欲喚起には今ひとつな表現ではあるものの、トヨタの理性と誠実さが前面に押し出された格好である。それに、実際に試乗してみるとこれら機能は、やはりアシスト(支援)であり、人が運転の主導権を握り積極的にこの機能を使うことでより安全につながると認識させられる。

さまざまなものが搭載されたけれど、今回は、(1)レーントレーシング・アシスト(2)レーンチェンジ・アシスト(3)プリクラッシュのアクティブ操舵回避支援(4)ドライバー以上時停車支援システムの4つについての印象をお伝えしたい。

(1)レーントレーシング・アシスト

クルーズコントロールでの速度調整に加え、カメラによる白線認識でハンドル操作をアシスト(レーンキープ・アシスト)するほか、白線が見えなくとも前車の走行軌跡を利用して「ここが車線であろう」と判断し制御する。さらに、ナビゲーションの地図情報を活かし、コーナーの進入速度が速いときは速度を落とすなどして速度調整する。

車線を維持するレーンキープ・アシストは、他メーカーのクルマのほとんどが、ハンドルを軽く操作したときにかかるトルクで運転者の状態を検知するのに対し、LSは触れていれば認識するシステムを採用。これがすごく使いやすい。ハンドルに対する緊張感が3分の1くらいに激減する感じ。さらに、ナビゲーションの地図情報をもとに速度調整するシステムが秀逸である。この手のシステムは、速度設定が自分の運転リズムと異なるため怖い&使いにくいという先入観を持って臨んだものの、とんでもなかった。これが実にうまい。

正直に言うと、私より圧倒的にうまい。コーナー出口に向けての加速開始が、私よりだんぜん早いのだ。コーナーの前半でしっかり速度を落とし出口に向けて車両の方向を整え、とっとと加速していく。まさに、スローイン・ファストアウト。この感覚は、ちょっとしたドライビング・レッスンを受けている気分である。自分の下手さ加減を痛感して気分が重くなるくらいだ。

(2)レーンチェンジ・アシスト

ウィンカーを3秒間、半押しすることで「ドライバーが確実な意思をもってレーンチェンジをしようとしている」と認識し(不用意に触っちゃった、などを排除するため)、周囲の車両の存在がないことをシステムが確認したら、ハンドルを自動で動かして車線変更を完了させるもの。

3秒間の半押しが面倒といえば面倒なのだが、道交法で決まっている秒数なのでこれは仕方がない。周囲のクルマの有無をシステムが確認し、死角にいるクルマもしっかり検知してくれるので、使えば使うほど便利さを実感できる。ただ、車線変更開始から完了までが遅い。かなり遅い。安全面を重視するあまりとてもゆっくり行うのだ。せっかちな私などはちょっとイライラする。というか、東京など大都市近郊の高速道路では、追い越し車線からどんどんクルマがくるので、こんなにゆっくり車線変更していたら、逆に迷惑なのではないかと思われる。

ただ、私はせっかちなのでそう感じるのだが、人によってはこのくらいのリズムでちょうどいいという人もいるはず。クルーズコントロールでは、前車との車間距離を個人で設定できるけれど、この車線変更速度も、個人でカスタマイズできるといいと思う。

(3)プリクラのアクティブ操舵回避支援

歩行者を検知したとき、減速だけではぶつかると判断した場合、今いる車線から出ない範囲でハンドル操作をして衝突回避しようというもの。

正直な話、ハンドルをきったほうに歩行者が動いてくることもあるし、路面状況やタイヤの状態、乗っている乗車人数(重くて止まりにくい)などいろいろな条件を合わせると、絶対に回避できるとはいえない。しかも、こうした支援システムは、運転者がオーバーライドすればキャンセルされるため、歩行者を発見した運転者が、「うわー!」と叫びながら(もちろん、叫ばなくても)がっつりハンドルを握りしめれば作動しない。ただ、救命救急の取材を通じて歩行者の被害実態を知る私としては、重症より軽傷。そして、少しでも後遺障害が少ないことがどれだけ被害者とその家族にとっていいかを痛感している。今回の機能は初めの一歩であり大きな一歩だと感じている。そして、今後のさらなる進化を望んでいる。

(4)ドライバー異常時停車支援システム

レーントレーシング・アシスト機能が働いているときに、手放し走行が一定時間以上続き、警告してもハンドル操作が再開されない場合、いまいる車線に減速〜停止。その後はドアを解除し、ヘルプネットで救命要請をするもの。

高速道路上で車両を停止させるのは、是非が問われるけれど、時速100km/hのクルマが糸の切れた凧のように走り続けるほうがよほど危険という判断で、停止することを選択。その際、いかに周囲のクルマに「このクルマは異常な状態であり、このあと停止しますよ〜停止しているんですよ!」を伝えるのは、二次事故予防として重要なポイントである。ゆえに、最初の段階でだいたい75km/hまで速度を落とし、そのまましばらく走り続け、そこからゆるゆるとさらに速度を落として停止。そして、完全停止前〜停止後は、ハザードとクラクションで周囲に警告するようになっている。75km/hで走り続けるというのが、かなりいい塩梅である。高速道路では80km/h以下で走っている人は少なく、それ以下で走っていると「なんだこいつ、とろとろ走っちゃって?」と運転者の顔を覗き込みたくなるレベルだからだ(私だけ?)。 

この、75km/hでしばらく走る、という行為は、国交省のASV検討委員会でも「まわりに違和感を伝えるだけでなく、運転者の異常状態を車両システムが認識するためにも必要な時間」と位置付けていているようだ。その後、ゆるゆると速度を落とし停止するのだが、その際、クラクションというのがまたいい。運転者が睡魔に襲われているとしても、クラクションが鳴ると目を覚ますし(私はね)、周囲にとってもクラクションはかなりのインパクトを持って受け止めてもらえる。

最後は、救助のためにドアロック解除と、救急連絡のためのヘルプネットへの接続も乗員保護を目的とするためのシナリオとしてソツがない。止めたら止めっぱなしではやはり中途半端だし。

高齢化社会を迎える日本。高速道路上では、一台のトラブルが二次事故、三次事故へとつながる危険性が高いだけに、早期の対応と救助活動への連携は、これからもっと求められる部分だと思う。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。

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