ダイハツ ミライース《撮影 宮崎壮人》

人間の欲というものはきりがなく、のどが渇いて死にそうなときは水をくれというくせに、ある程度、潤ってくると暖かいお茶が欲しいという。もっとも欲があるから成長する。『ミライース』も、そんな欲をつきつけられ、さらに成長したクチである。

2011年に登場したミライース。燃費はリッターあたり30.0kmと世間を驚かせた。そして6年ぶりのフルモデルチェンジ。ユーザーの欲に応えるべく、あれやこれやと手を加え、35.2kmと伸ばしてきた。すごい成長ぶりである。

その秘密は軽量化。2トン級の大きなクルマのマイナス80kgはわかるが、もともと800kgを切る軽自動車での80kgの減量は、試合前のボクシング選手並みの努力といえよう。減量の成功は、加速の部分でもつきつけられていた欲にも応える後押しになっている。

さて、小さなクルマの燃費合戦はいいが、私が納得できないでいるのが、こもり音である。CVTのシフトアップするタイミングを燃費よりにするものだから、振動がへんにボディに伝わって、運転席に座っていると耳への圧迫感がひどいのだ。しかもこもり音が出るのがちょうど40〜50km/hという、いちばん街乗りユーザーが使う速度域。

しかし。今回のミライースでは、ボディの共振を上手に抑え、40km/hを超えると気持ちよく走れるようになっている。40km/h以下ではまだ少し残るものの、その速度域で走るのは住宅街やスクールゾーンなど、短い距離なので、ここはきっちり合格点を差し上げたい(上から目線で申し訳ない)。

そしてもうひとつ、軽自動車をはじめとする小さなクルマで私がずーっと気になっていたのはドラポジだ。衝突試験の副作用で、運転者とハンドルの距離をとらねばならず、やたらハンドルが遠くてペダルが近く、まともなドラポジがとれなかったのだ。しかしここも、ハンドルを20.2mm近づけ、ペダルを12.7mmひっこめるというミリ単位の調整をしてくれたおかげで、ちゃんと座れるようになっている。この努力に、こちらも合格点を差し上げたい(上からばかりで申し訳ない)。

というか、ちゃんとしたドラポジがとれるおかげでハンドル操作がしやすくなり、ハンドルのリニアな手ごたえ感を重視するダイハツ流のコンセプトが、活きてきたと思う。

被害軽減ブレーキなどのスマートアシストは“III”がついたし、速度計のデジタル表示が大きくて、ヘッドアップディスプレイがなくても、ちゃんと見やすいし、扱いやすさへの配慮は申し分なし。コツコツまじめにユーザーのことを考えたクルマである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。

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