VW ゴルフ GTI《写真撮影 島崎七生人》

受け取った試乗車は白(正確には“オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト/ブラックルーフ”)の個体。だからという訳でもないが、重なって見えたのは、1976年に本国で登場した初代GTIの姿だった。ほぼ半世紀前のクルマである。

赤いグリルストライプに黒のVWマーク、樹脂のホイールアーチカバー、黒塗りのリヤウインドゥまわりetc……。新車当時に正規輸入はされなかったが、取材で並行輸入車に乗り、恐ろしく高回転型にチューンされた1.6リットル・110psエンジンの加速は痛快なものだった。安易に助手席の上に置いた当時の取材の愛機だったキヤノンNewF-1モータードライブ付きのボディが転げ落ちないよう、慌てて手で押さえたりしたものだ。

そんなGTIの最新型(現代版というべきか?)が今回のクルマだが、連綿と8.5世代続いてきたGTI……とくにここ最近のクルマのうちでは、なぜか初代のイメージを色濃く思い出させてくれるような気がした。もちろん時代もスペックもまったくかけ離れているし、こと快適性にかけては較べるべくもない。が、“胸アツ”の度合いにかけて、ここ最近のGTIではトップクラスに思える。

シンプルに気持ちのよい走りを堪能させてくれる点が、遠くに初代を思わせる要因か。2リットルの直列4気筒DOHC・4バルブのインタークーラー付きターボのスペックは直前のモデルに対し+20psの265ps(195kW)/37.7kgm(370Nm)。これに7速DSGの組み合わせで、あくまでスムースに自在に胸のすく加速が味わえる。

同時にそのパワーを受け止める足も安定感を感じさせつつもしなやかで、確かなロードホールディングでワインディング路を面白いように駆け抜けられる。見かけはやや大袈裟だが、骨盤を中心にドライバーの身体をしっかりと保持してくれるシートもいい。

一方でタウンスピードでは今のクルマらしく洗練された乗り味を示し、トレードマークのチェック柄のシートの上に(自前のマットを介して)座るシュン(乗り心地・NVH評価担当の我が家の柴犬)も終始リラックスした表情で乗っていた。

車外は排気系のバルブの開閉度合いにより、車内はインパクトサウンドアクチュエーター組み込みのスピーカーから、それぞれ排気音およびエンジン音を溌剌と効かせて楽しめるのは今どきの仕掛け。とはいえ今も昔も良識あるスマートな高性能車の立ち位置は変わらない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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