ランボルギーニ・レヴエルト《photo by Lamborghini》

ついにそのステアリングを握ることができた。クルマはランボルギーニの新たなフラッグシップモデル『レヴエルト(Revuelto)』。『ウラカン』の上位に位置するモデルで、本格的なプラグインハイブリッドシステムを搭載する。しかも試乗のステージはサーキット。ウェットコンディションではあったが、富士スピードウェイでその実力を試すことができた。

◆「前輪だけでも走るランボルギーニ」
ご存知の方は多いと思うが、このクルマは昨年ランボルギーニ60周年を記念して発表された。電動化されたパワーソースは新たな時代の幕上げとして十分なキャラクターだ。なんたってシステム最高出力は1015hp。レーシングカーでもなかなか見かけない4桁の数字を誇るロードゴーイングカーである。

パワーソースついでに主軸となる内燃機関の説明をすると、型式はL545型。排気量6.5リッターV12の自然吸気ユニットで、単体の最高出力は825hp、それを9250rpmという高回転で発揮するのだ。基本となるブロックはこれまでを継承するが、ヘッド周りはもちろん、インテークシステムや燃焼システムを再設計している。これにより圧縮比アップを行なっているほどの手の入れようだ。

レヴエルトはこのユニットをミッドシップマウントしてリアタイヤを駆動させるのだが、それとは別にモーターは全部で3基搭載する。左右のフロントタイヤに駆動用モーターが一つずつと、リアのトラクションをアシストする用だ。これはドライビングモードの選択と走行状況でアシスト量を変える仕組みとなる。

よって、簡単な話がAWD。前が電気、後がガソリンで動かされる。つまり、EVモードの時はFWD。「前輪だけで走るランボルギーニ」と考えるとちょっとおもしろい。

◆プライスタグが高いのは理由がある
リチウムイオンバッテリーの搭載場所はセンタートンネルにある。長さ1550mm、高さ301mm、幅240mmのパックがそこに収まる。この手のクルマは床下にバッテリーを敷き詰めるとドライバーのポジションが高くなってしまうので、これは適切なレイアウトだろう。

ただ、それを具現化するために新たにフレームをつくらなければならなかったのは事実。彼らはカーボンファイバーのモノコックボディとフォージドコンポジットのフロントサブフレームで新しく仕上げた。フォージドコンポジットは簡単にいうと繊維であるカーボンを細かく裁断しそこに樹脂を流し込んで固めたモノ。ランボルギーニは2008年という早い時期からこれを構造部材として採用している。かなりコストをかけているのはここでおわかりだろう。プライスタグが高いのはそんな背景がある。

◆サーキットを楽しむなら購入前にドラポジは要チェックだ
といったプロファイルのレヴエルトをサーキットのピットロードで拝んだわけだが、印象はかなりいい。ひと時“クセ強(つよ)”だったデザインはオーセンティックな方向へ舵を切り、誰もが受け入れやすくなった。個人的には蘇った『クンタッチ(=カウンタック)』以降そんな流れを感じる。

では走らせるとどうかだが、実はドラポジが少々厳しかった。身長180cmの筆者がヘルメットをかぶって着座すると、頭が当たって首を傾げなくてはならない。そこで、座面を前方にスライドし、バックレスト寝かしてどうにか正常範囲のポジションをとった。なので、もしタッパがあってサーキット走行を楽しみたい目的で購入を考えるなら、ドラポジを試しておく必要がある。

それはともかく、走り出す。ドライブモードは大きく分けて4つあり、その全てを試した。“CITTA”は文字通り街乗り用でEV走行を行う。“STRADA”はいわゆるハイブリッドの一般走行、“SPORT”と“CORSA”はスポーツ走行で、制御系デバイスのオンとオフ、パドルシフトの有効と無効を意味する。CORSAはイタリア語の“レース”なのでそれを理解するとわかりやすい。

◆さらに上の領域にはもう一つ別の顔がある
で、コースインをEVモードで行い、1コーナーから1周目をSTRADA、2周目以降をCORSAで走った。前述したようにウェットではあったが、安定した走りである。ステアリングは正確で無駄な動きがなく、それに追従するシャシーの反応がいい。不安がないというか扱いやすいのだ。これなら想定する範囲内で攻めの走りができるだろう。

また、ウェットな分制御系デバイスが早めに起動することもわかり、安心感が高まる。ブレーキを含めこの辺のサジ加減は秀逸にセッティングされている。ハイパワーな分制御系をしっかり煮詰めているようだ。

また、採用されるタイヤ“ブリヂストンPOTENZA SPORT”もよかった。高く上がる水飛沫は水はけの良さを物語る。なかなか試せないウェットでのサーキット走行でそのパフォーマンスを発揮した。

というのがこのウルトラハイパフォーマンスマシンのファーストインプレッションだが、走り終わってみるととても扱いやすい印象が強く残った。ただ、そのパフォーマンスの限界は不明。ウェット状態でも懐の深いモデルなのは感じたが、さらに上の領域にはもう一つ別のマシンとしての顔が待っている気がする。ランボルギーニのトップレンジは一朝一夕には把握できない。

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

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