ボルボ C40リチャージ アルティメイト《写真撮影 中村孝仁》

ボルボ『C40リチャージ』、ずいぶんと大きく変わったものである。見た目には何の変化もない。しかし中身は相当に変わっている。まず、シングルモーターの搭載位置がフロントからリアになった。そのモーターも出力が上がり、バッテリーの容量も少し増えて航続距離を伸ばしている。

走りで大きな変化と言えば、回生ブレーキがこれまではオンもしくはオフだけだったところに、オートというモードが加わった。単に回生をするかしないかではなく、自動的にやってくれる。どういうことかというと、前車に追走している場合前がブレーキを踏めばそれに呼応して車間を保ちつつブレーキングしてくれる。前車が停止している場合はこれも減速から停車までを自動的に行う。つまり、簡単にいうとACCをオンにして走っている感覚だ。

違いと言えば、設定したスピードがないから、自分でアクセルコントロールをする点。ある意味ブレーキフリーで走れるといっても過言ではないが、まあ全面的に信用するのはいかがなものか?というシーンもあった。

◆自社開発モーターと、SiCに進化したインバーター
驚いたことにモーターは自社開発だという。それに付随したインバーターも従来のシリコン(Si)からシリコンカーバイド(SiC)に変えたそうだ。これに代えるメリットについて調べてみると色々と難解な言葉が並んでいたので端折って話をすると、SiCを使うことで 高効率化を可能にし電力密度が向上、さらにシステムコストの低減ができるという。

なんでも EV車のバッテリーの価格は車体の最低35%を占めるそうで、如何にバッテリーセルにかかるシステムコストを抑えるかが肝になるのだという。ボルボは長期的に見て、現状は価格が高いが費用対効果を発揮すると考えてSiCを使用しているのだと思う。今後EVが高電圧化し、急速充電によるバッテリーへの負荷を考えれば当然の帰結なのだろう。

リアモーターになった2024年モデルの自社開発モーターは、従来のモーターと比較してパワートルク共に向上した。それにバッテリーの容量も69kWhから73kWhに増えている。今回お借りしたモデルは「アルティメイト」と呼ばれる上級グレード。おおよそ500kmほど走ってみたが、ついに自分の中でのブレークスルーというか、電気自動車買ってもいいかな?と思えるモデルにぶつかった気がした。

◆初めて電気自動車の重心の低さを体験できた
590kmの可能航続距離は、あくまでも机上の話であって現実は400kmとみるのが妥当のようだ。ほぼ2週間近くお借りしてあれこれ試してみたものの、我が家の充電施設では410kmという表示が最大であった。往復200kmを超える移動をしてみたが、帰宅時にはまだ50%以上の電池残量と240kmの可能走行距離があった。問題はこの辺りをどう捉えるかである。

要はそれを多いとみるか少ないとみるかという話であるが、以前だと電気自動車を借りると必ず毎日ブースターコードを繋いでいたが、今はやはり5割ほどになると繋ぐ。だいぶアレルギー症状が取れてきたということだが、たぶん読者の中にも私と同じように、電気の減りに対して不安を持つ方はいらっしゃるのではないかと感じるわけである。

その200km以上の旅は、横浜の自宅から下道を通って河口湖までの往復である。敢えて下道を選んだのはワインディングを楽しみたかったからで、結論から言うとこれが最高に楽しかった。ある意味では初めて電気自動車の重心の低さを体験できたというか、その素晴らしいコーナリング性能が楽しめた。

それでも気になるのはそんな使い方をしたらタイヤが持たないだろうなぁという点。一般的に電気自動車はICE車と比較して20%ほどタイヤの減りが早いそうである。ボルボはタイヤも電気自動車専用に開発しているようで、タイヤにボルボを示すVOLとその横に電気用を示すELECTという文字が表示されている。

タイヤの縦バネが硬い印象は拭えないが、それでも乗り心地は決して悪くないし、何より走っていて楽しかった。アクセルに対する反応の良さは確実にICEを上回り、その効率の良さはまあICEの比ではないのだろう。

◆ピクセルLEDヘッドライトが効果を発揮
帰りは夜間ドライブとなったが、暗いワインディングで抜群の効果を発揮したのがピクセルLEDヘッドライトである。前車がいてもその両サイドをライトが照らしてくれるので、道路全体がかなり明るく見えることと、擁壁などがあるとそこで細かなライトが付いたり消えたりしているさまがよくわかって実に面白かった。これは夜間運転に相当な効果を発揮することが分かった。

ルーフがなだらかなため、多少のスペースは犠牲になっているだろうが、何よりもスタイリッシュな『C40リチャージ』のデザインが素晴らしい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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