レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》

レイズの鍛造モデルを代表するブランドであるボルクレーシング。モータースポーツで活躍する本物志向の同ブランドに新たに加わった「CE28N-PLUS」。富士スピードウェイでレーシングドライバーによる同乗走行が実施され、新時代のボルクレーシングを体感することとなった。

◆「CE28N-PLUS」のデザイン継承と性能進化
初代の「CE28N」は1999年にデビューし、ボルクレーシングの大スタンダードとなっていたTE37に加え、新時代のボルクレーシングを標榜して登場したのがCE28Nだった。コンセプトの中心にあったのは“軽さ”。モデルネームが表しているとおり2.8kg(14インチ×5.0J想定)を目指す=CE28というブランドの中でもライトウェイトに重心を置いたモデルとなった。

そんなCE28Nは瞬く間に次世代のボルクレーシングの旗手となり派生モデルのデビューなども相次いだのはご存じの通り。TE37が大パワーのスポーツモデルへの投入が多く見られたのに対して、CE28NはシビックやS2000などに代表される“コーナーリングマシン”への装着が目立つようになっていくのも、そのコンセプト/性能のためだった。

デビュー後24年ものロングランを続けてきた同モデルだったが、ベースとなるクルマの進化に合わせて根本的な設計を見直すことになった。それが今回デビューした「CE28N-PLUS」だ。モデルチェンジしたCE28N-PLUSを見ていくと、最初にホイールの第一印象として既存モデルとデザイン的な差異はあまり感じられない点だろう。

しかし、それこそが同社の狙いのひとつだった。すでに定番化しているCE28のイメージは変えない、細身のスポーク形状などのデザインディティールは極力踏襲する。それでいて性能は大幅進化させることを目指したのだ。

性能面の進化は装着車両の進化に対応するところが大きい。1999年当時と比べると想定される装着車両の大パワー化、重量増が著しい。例えばシビックで言えば車両重量は30%アップ、さらにCセグメントの車両は400馬力に達しようとする時代を迎えている。

そんな環境に対応するべくCE28N-PLUSはシリーズの生命線である軽量であることをキープしつつ、剛性を高めたのが注目点となった。スポーツ走行時に必要になる前後/左右/上下(X/Y/Z軸)のすべてにおいて想定外の変異を感じさせない高い剛性を誇るモデルへと進化させている。

◆剛性による乗り味の向上と軽量化に対する開発の追求
スポーク、リム、リムフランジ、センターピースなど、すべての部分が新しくなった「CE28N-PLUS」だが、特に走りに影響する剛性アップのポイントに絞ってまずは変更点を注目してみた。10本スポークを採用するCE28シリーズで、この細身のスポーク形状は軽量化に大きく寄与するところ(同時にデザイン性にも)だが、一方では細身のデザイン故にスポーク部の剛性を出すのは難しい。特に回転方向/進行方向の高い剛性を引き出すのは難しいとされていた。

そこで新作に投入されたのがスポークの“縦断面”の変更だった。具体的には正面から見えるスポークトップの幅は変えることなく、奥行き方向(縦方向)に厚みを増すことでスポークに加わる応力を受け止める設計としたのだ。その結果、強烈なブレーキング時にも安定した挙動を示す結果を得ているのだ。

もうひとつのポイントはリム内側のウェル部に施されたウェーブ形状だ。一見すると肉抜きによる軽量化と判断できる処理だが、実は軽量化に加えてもうひとつの効用として“強度アップ”があった。それを説明するために薄い紙を想像して欲しい、1枚の紙はそのままではペラペラで端を持って持ち上げてもただ曲がるだけだ。

しかしいくつかの折り目を付けるとピンと強度が出てくる。折り紙で鶴や船などの形状を作ることを想像すればわかりやすいだろう。同じ紙でも折り目によって剛性は大きく変化する。その理屈を投入したのがCE28N-PLUSのウェル部だ。本来はツルリとした形状のウェル部に凹み/折り目を付けることで理想の剛性を手に入れたのだ。

これらの、いくつもの工夫を込めてデビューしたCE28N-PLUS。剛性をアップさせることが乗り味をアップさせることはリアルレーシングの世界ではすでに知られるところだったが、CE28Nの進化がどの程度走りに影響するのか、それを開発時点から徹底して追求してきたのも同モデルの大きな特徴となった。そこで発表会では商品説明に加えて富士スピードウェイのショートサーキットで同乗走行が実施された。

ドライバーには山野哲也さん、井入宏之さんの両名が担当。同社の「CE28SL」や「TE37 SAGA S-PLUS」でテスト走行を実施した上で、全く同じタイヤを使ってホイールをだけを「CE28N-PLUS」に変更して比較試乗。その上で我々プレスが同乗してCE28N-PLUSを装着した車両で走行を実施するというスタイルで行われた。

◆現役レーサーも認める進化、実走行でも確かに体感
筆者が同乗したのは山野哲也さんがドライビングするスバル『WRX S4』。富士のショートサーキットを走行開始するとすぐにわかるのがコーナリング時のステアリングの効きの良さだ。

山野さんに聞くと「ハンドルを切ると切った分だけコーナーの奥で“舵が効く”感覚。コーナリング中に切り増ししてもグイグイ曲がるのが印象的です。溝付きタイヤからスリックタイヤに履き替えたような印象を受けます。従来のホイ−ルと比べてオーバーステア方向に振った感じが体感できます」とコーナーリング時のマシンコントロール性の良さを強調した。この性能はスポーツ走行をする上でそこそこの技量でもクルマの性能を引き出しやすいことを意味し、走りの楽しさを誰もが感じやすくなるグレードアップだと感じた。

さらに山野さんのインプレッションではいくつもの興味深い話が聞けた、「このホイールを履くだけでまったく同じタイヤを使っているのにタイヤハイトは変えないでトレッドだけが広くなった印象を受けます。そのため4輪のグリップがアップし走行中のオン・ザ・レール感覚がより強くなっています」

「ドライバーがステアリングなどを操作するとリニアにクルマが反応する、意のままに操る感覚が楽しめるホイールだと感じました」

また、同乗走行では下りのホームストレートからの左コーナー進入時のブレーキングでも安定感たっぷりのフィーリングを同乗者でさえ味わうことができた。開発の初期段階から試乗を繰り返してきたという井入宏之さんにもそのフィーリングを伺った。

「強くブレーキングする際に車体がブルッと動くことがあるが、このホイールに変えるとそれが収束する時間が短くなる」と言う。この収束の早さをレーシングドライバーは敏感に感じ取り、高い剛性感を感じ安心してコーナーに進入できるのだという。「乗り味としてはクルマがシャキッとして来る傾向ですね」とのこと。

サーキットでレーシングドライバーのマシンに同乗する体験をした今回の新商品発表会。ボルクレーシングの中でも軽量設計がウリのCE28Nがモデルチェンジを果たして、さらに剛性が加わったことをリアルなサーキットランを通じて体感することができた。ボルクレーシングの各モデルで培った技術を総動員して設計された「CE28N-PLUS」は、現時点でのボルクレーシングの集大成といえるに違いないだろう。

株式会社レイズ 代表取締役社長 三根 茂留氏《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レーシングドライバー 井入宏之氏《写真撮影 山内潤也》 レーシングドライバー 山野哲也氏《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レーシングドライバー 山野哲也氏《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レーシングドライバー 山野哲也氏《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》 レイズ ボルクレーシングCE28N-PLUS《写真撮影 山内潤也》