ボルボ C40 RECHARGE PLUS SINGLE MOTOR《写真撮影 島崎七生人》

日本市場ではボルボ初のピュアEVとして登場した『C40リチャージ』。試乗車はシングルモーター(前輪駆動)仕様の「C40 Recharge Plus Single Motor」で、ツインモーターに対し100万円価格が抑えられた659万円(税込み)というモデルだ。

◆『XC40』との違いと共通点は
実車はひと目見て『XC40』とは外観の印象がずいぶん違う。というのも、XC40に対して55mm車高が低いだけでなく、ザックリと言うとAピラーの付け根から後ろが専用デザインだからだ。アーチ状のルーフラインの形状違いは一目瞭然だが、よく見るとフロントスクリーン、サイドガラスなども専用。ルーフピラー(アーチ部分)とルーフスポイラーがボディ色化された試乗車は、フォルムをよりスッキリと見せている。

室内に乗り込むと、運転席まわりなどはXC40で見慣れた光景。ICE車では備わる、左手を伸ばして押すメッキのリングで縁取られた始動ボタンがないのも同じだ。ドライバーが着座すればクルマがそれを感知し、ブレーキペダルを踏みながらDポジション(またはRポジション)をセレクトすることで発進の準備が整う仕組み。後席はシート自体がやや小振りで背もたれが起きているが、実用の範囲でスペースは確保されている。

同様にラゲッジルームも数値上はC40はやや小さめというが、実用上、十分なスペースが確保されている。ちなみにC40では、ボンネットを開けると、そこにも“フランク”(フロントのトランクだからそう呼ぶのだそう)と呼ぶ収納スペースがある。専用のリッドはシッカリした樹脂製で、開口部周囲のラバーシールや底敷きなど造りも丁寧なので、充電ケーブルなどの格納のほか、家には内緒の“コンビニ受け取り”にしたam●zonからのお届け物の箱の一時保管場所(!?)にも活用できそうだ。

◆高出力化したシングルモーターの動力性能
試乗車は、モデル名どおりフロントに1基のモーターを載せている。諸元表で当たるとモーターの型式はツイン・モーターのそれと同じだが、1モーターあたりの出力はツインモーターは150kW/330Nmが2基なのに対して、シングルモーターは1基で170kW/330Nmと高出力化が図られている。

とはいえ今回、数日間の試乗で実感したのは、動力性能は十二分ということだった。確認のためにやや深くアクセルを踏み込むと、モーターならではの力強く鋭い加速も体感可能だ。ワンペダルドライブの選択はオン/オフ選択式で、オンの場合の加減速のメリハリは強めだから、他のEV車のそれと同様、まずアクセルペダルの特性を会得した上で走らせれば、減速後の最後の停止までスムースに行なえるので街中や渋滞時に便利。

一方でオフ(非ワンペダルドライブ)の場合はクルマの挙動をグッと穏やかにさせられ、高速道路の走行時などにいい。ちなみに我が家の場合は愛犬を乗せる機会も多く、試乗中は街中でも(アクセル操作次第だが)犬の頭が前後に揺さぶられにくく加減速Gが穏やかな非ワンペダルドライブも活用した。

◆ツインモーター以上の航続距離502km
サスペンションのセッティング自体は、ボディサイズに比していかにも車重に対処したクルマを安定させることに重きを置いたドッシリとした味わいに感じた。乗り心地は基本的にスムースで、タイヤ(ピレリP ZERO・前:235/50R19 103V、後:255/45 R19 104V)の指定空気圧(前後280kPa)をほんの少し落とすなどすると、よりしなやかな乗り味が味わえそうだ。

なお一充電走行距離は502kmとツイン・モーターの484kmの上を行く数字になっている。今回は日常的な市街地走行や高速道路を使った遠出などをし、試乗車借り受け中に30分の急速充電を何度か経験しながら試したが、ピュアEVとしてストレスのない実用性を備えていることは実感できた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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