日産 サクラ《写真撮影 丸山誠》

軽の枠を超えた質感とデザイン
日産『サクラ』は軽EVというだけではなく、日産EVのエントリーモデルという位置づけでもある。

『アリア』のテイストを巧みに取り入れたエクステリアデザインは存在感があり、一見してEVということがわかる。サクラ専用デザインというだけあってホイールまでこだわってデザイン。ここにもアリアと同様の和テイストデザインを織り込んで「水引」の模様が描かれている。

ちなみに充電口を開けると急速充電口にも水引がデザインされている。このアイデアは執行役副社長の星野氏によるもので、発売の約1年前にエクステリアデザインの最終段階で急遽入れることになったという。

運転席に乗り込むと7インチのアドバンスドドライブアシストディスプレイメーターと、9インチセンターディスプレイ連続させたパネルが存在感を放っている。このしつらえは今までの軽自動車という枠ではなく、上級車に迫る質感を備えている。もちろんインパネもサクラのオリジナルでファブリック張りがドアまで続くという質感の高さだ。

高速の合流でも余裕の加速
サクラが採用する駆動モーターは、最大トルク195Nmと軽自動車として異例の大トルク。最高出力には64馬力という自主規制があるが、トルクには規定がなかったため実現した。ガソリン車のコンパクトカーと同様の1tちょっとの車両車重で2リットルクラス並みのトルクを発揮するため加速はなかなか力強く、スムーズだ。

走行モードはエコ、スタンダード、スポーツがありスポーツモードで発進加速を行うとフロントタイヤが少し滑りながら絶妙な加速を見せる。トラクションコントロールを切らなくても最適なトラクションによって鋭い加速が楽しめる。これは前後の重量配分が最適値に近いためで、重いバッテリーをフロアに積んだ効果でもある。

高速道路の合流で加速が物足りないというNAの軽自動車にありがちな心配は一切なく、流れをリードするほどの余裕を見せる。一人乗車でのインプレだが、定員の4人乗車でも加速性能に余裕があるはずだ。気になるのは走行モードの操作スイッチの位置。運転席右側の膝あたりの低い位置あるため、運転中にブラインドタッチで操作するのが難しいのだ。

補助金なしでも航続距離に納得できれば…
兄弟車である三菱『eKクロスEV』と動力性能などは同じだが、異なるのは室内の静粛性能。サクラはよりフロアからのロードノイズの侵入が少なく感じ、静粛性が高まっているように感じる。じつは遮音材や制振材などはまったく同じなのだが、サクラはインパネやドアトリムに貼られたファブリックがノイズをうまく吸収しているため静粛性が高まっているようなのだ。トリムなどにファブリックを使ったことで質感を高めると同時に静かさにも効果が表れている。

好調な売れ行きで納車に時間がかかっているようだが、心配なのが補助金の問題だ。ナンバーを登録した後に申請となるため、納車時期によっては今年度分がなくなってしまう可能性もある。購入するときにはディーラーとよく相談をすることが必要だ。航続距離(180km)に納得できれば、補助金なしでも魅力的なクルマといえる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。

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